『日経テクノロジー展望2020 世界を変える100の技術』2019/10/18
日経BP (編集)

 各分野を知り尽くした日経BPの専門誌編集長30人が、知っておくべきテクノロジーを100件厳選、分かりやすく解説してくれる本です。
 例えば、「1章 2020年東京五輪を支えるテクノロジー」では、次の10項目が紹介されていました。
1)自由視点映像配信
2)テレイグジスタンス/ハプティクス(遠方の試合に遠方から参加)
3)空飛ぶクルマ
4)IT警備
5)顔認証
6)セキュリティインテリジェンス(協力し合って攻撃に立ち向かう)
7)遮熱性舗装/保水性舗装
8)フラクタル日よけ(隙間がありながら日光を遮る)
9)遺伝子ドーピング対策(悪用にどう対処するか)
10)ゲノム編集
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 すごく興味深かったのが、「9)遺伝子ドーピング対策」。解説の中には次のような文章が。
「急速に進歩したゲノム編集技術などを使って、運動能力を高めたり、そうなるように細胞を改良したりすることを指す。悪用だが、従来の薬物ドーピングとは異なり、痕跡を残さないので厄介だという。
 最新の再生医療を悪用すれば「細胞ドーピング」もありえる。筋肉や持久力の強化に関連する物質を作る細胞を選手から採取し、体外で増殖させておき、試合前に体内に戻す。遺伝子を改変したわけではなく、選手個人の細胞を増やしているだけであり、検出は極めて困難だ。」
 ……うーん、かなり難しい問題のようです。
 こんな感じで、ネットやコンピュータ、金融や建築、医療などさまざまな分野の、全部で100の最新技術が短く解説されていきます。数がとても多いので、それぞれの解説は概説レベルに過ぎませんが、今後の社会を展望するのにはとても役立つのではないでしょうか。新技術の総合的入門書として使えると思います。
 個人的には、次のような技術に興味がわきました。
24)NMI(神経伝達信号検知で身体と融合)
(サイバーダインのアシストHALは皮膚に貼りつけたセンサー(電極)で神経伝達信号の電位を検知して動作する。腰を曲げようとし始めたときにほぼ遅延なくHALもアシスト動作を始める。(中略)アシストスーツによる人のデータ収集は「超人」をつくるうえでも役立ちそうだ。産業技術総合研究所は動きのデータを基に一般人を超人化する研究を進めている。例えば、トップアスリートのデータを集め、優れたパフォーマンスの理由を割り出し、アシストスーツなどを使って、一般人がアスリート同様の動きをとれるようにする。身体の重心制御や力を加えるタイミングをアシストすることで、一般人の身体機能を効率よく向上させられる。)
38)全樹脂電池
(三洋化成は全樹脂電池の特徴に注目した新たな事業モデルも検討している。利用期間に応じた料金を受け取る「サブスクリプション型」だ。コバルトやリチウムなどの希少金属を含む活物質をリサイクルしやすい特徴を生かす。全樹脂電池の活物質は希少金属を含む粉末に樹脂コーティングしている。回収した電池から活物質を取り出すと活物質表面の樹脂を有機溶媒で完全に分離できるという。これに対し、既存電池の場合、活物質が電極(集電体)に強く固着しているため、希少金属を取り出すために焼却するしかなく、コストがかさみ、電力も消費していた。)
56)都市油田(生ごみを微生物がエタノールに変える)
(積水化学工業は2017年12月、雑多な可燃ゴミをまるごと処理してエタノールを生産する技術を開発したと発表した。収集したごみは分別の必要がなく、ガス化改良炉で蒸し焼きにしてガスにしてから微生物でエタノールに変換する。都市部で大量発生するゴミを「都市油田」に変えられる可能性がある。)
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 この他にも「人間拡張」、「モビリティ」、「(建設材の)自己治癒材料」、「バイオニック医療」、「AI検査・診断」など興味深い技術が満載。近未来の展望を考える上で、とても役立つと思います。ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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