『専門医が教える最強のがん克服大全 エビデンスに基づく新しい対処法64』2023/10/2
佐藤 典宏 (著)
1000例以上のがん患者を治療し、YouTubeの「がん情報チャンネル」配信者でもある佐藤さんが教えてくれる最新・がん改善の本で、内容は以下の通りです。
1章 がんの最新情報
2章 がんのサインから告知、そして治療が始まる
3章 がんと食事に関する疑問にこたえる
4章 抗がん剤、サプリメントと薬に関する必須情報
5章 がんサバイバーになるために必要なモノ、コト、ココロ
6章 部位別がんの最新情報・知っておきたいこと
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「はじめに」には、がんという病気に対する佐藤さんなりの3つの気づきなどが、次のように書いてありました。
1)最終的には、患者さんの力で治す
2)治療だけでなく、生活習慣の改善が大事
3)患者さんが変わることが重要
「手術や抗がん剤治療などのメインとなる標準治療は、いうまでもなく大事ですが、治るために必要なのは医学的な治療手段だけではありません。
最新の医学的な治療が成果を生むための土台となるのが、患者さんご自身の持っている力(体力や免疫力、前向きなメンタル)です。」
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そして「2章 がんのサインから告知、そして治療が始まる」では、「がんの治療で後悔しないために絶対に主治医に確認すべき5つのポイント」が、次のように書いてありました。
1)がんの部位、および、進行度(ステージ)
2)主治医の勧める治療法と、それ以外の治療法
3)治療の目的・ゴール(根治、延命、緩和)
4)治療のリスク(合併症、副作用、後遺症)
5)治療がうまくいかなかった場合の対応策
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また「家族がガンになったとき、患者の家族がしてはいけない3つのこと」についても次のように書いてあったのですが、これは私が抱いていた「常識」とは違っていて、とても驚きました。
1)患者さんの仕事を奪ってしまう
(体を動かす機会を奪ってしまい体力や筋肉量が落ちてしまう)
2)勧められた健康法を安易に取り入れてしまう
(エビデンスのない健康法で患者さんの負担になりかねない)
3)自分のことをほったらかしにする
(家族がうつになったり健康状態を悪化させたりしたら患者さんを支えられなくなる)
……「患者さんの仕事を奪ってしまう」ことは、むしろ家族が「してあげなければいけない」ことかと思っていましたが……まったく逆だったようです。
しかも本書では、筋トレなどの運動や、タンパク質多めの食事が推奨されていて、本当に驚きました。
なんと、がんの手術前にはむしろ「運動」すべきだそうです。次のように書いてありました。
「できれば手術を受けるすべてのがん患者さんに実践していただきたいのが、「プレハビリテーションです。手術や、広い意味では、医学的な治療を始める前(プレ)に行うリハビリを指します。
プレハビリテーションを行う主な理由は、患者さんの生死を左右する「サルコペニア(注:筋肉量の低下に加えて、筋力または身体機能の低下のいずれかがある状態)」という状態を避けるためです。」
「(前略)がん患者さんにとって極めてリスクの多いサルコペニアを回避するために重要なのが、プレハビリテーションです。プレハビリテーションには、2つの柱があり、それが運動と食事です。運動は、有酸素運動と筋トレが基本。食事は、たんぱく質をメインとした栄養療法が中心となります。
プレハビリテーションを行うことによって、すべての術後合併症が、40~50%減少し、とくに呼吸器関連の合併症が70%以上減少するというデータが出されています。術後の回復が早まることにより、入院期間も2~3日短縮すると報告されています。」
……ええー! そうだったんだ。でも……運動っていっても、ごく軽い運動なんですよね? と思っていたら、ごく普通の「運動」そのもののようでした。というより、「健康な人が意欲的にする程度の運動」のようです。
「5章 がんサバイバーになるために必要なモノ、コト、ココロ」によると……
「2012年に、アメリカの「対がん協会(American Cancer Society)」が、「がん患者さんのための食事と運動」ということで、運動のガイドラインを作っています(2022年に改訂)。それによると、成人のがん患者さん(18~64歳)に対しては、次のような運動が望ましいとしています。
「中ぐらいの運動」を週に少なくとも150分間(2時間30分)、または、
「はげしい運動」を週に少なくとも75分間(1時間15分)。」
この「中ぐらいの運動」とは、「運動しながら話すことはできるが歌うことはできない程度の運動」で、「はげしい運動」とは、「運動をやめたとき、息がきれて、なかなかしゃべれないくらいの運動」だそうです……マジか……。
ここでは「自分でできる「がんのセルフケア」」として、次のようにも書いてありました。
「毎日の食事、運動、質の高い睡眠、瞑想や、ストレスを減らす生活、家族とのふれあいや、大好きな人との大切な時間を過ごすこと等々、そういった自然治癒力を高める日常生活での工夫が、まさに「がんの治療」になるのです。」
この本では、運動の他に、がんの予防や治療に効果的な食べ物についても具体的に解説されていましたが、それらもほぼすべて「健康な人が健康のために食べるバランスのとれた食べ物」と同じでした。
……要するに、がん患者さんであっても、健康な人が健康のために行う活動をやっている方が、治療のための体力づくりに役立つということのようでした。
かなり驚きな「がん克服のためのエビデンスに基づく新しい対処法」でしたが、考えてみれば、病気に打ち克つ体力は「どんな場合でも維持している」方がいいはずだよなーと、とても納得させられました。
私自身はまだ「がん」ではないと思っていますが、たとえすでに「がん」であっても、とにかく今まで通り健康のための運動・食事・睡眠を続けていけばいいんだ、ということを知って安心しました。寝たきり生活で長生きするよりも、死ぬ直前まで可能な限り元気で好きな活動をしていられる方が楽しい気がするので、「がん」以外の病気になっても、健康のための運動・食事・睡眠や、趣味や仕事を今まで通りに続けていこうと思います。
『専門医が教える最強のがん克服大全 エビデンスに基づく新しい対処法64』……今までの常識とかなり違う部分もあるので、すべての患者さんに推奨できるかどうかは分かりませんが、私にはとても参考になりました。みなさんも、ぜひ一度読んでみてください☆
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