『60歳からの家』2020/7/12
湯山 重行 (著)

 リフォームにいくらかかる? 趣味の部屋に改装したい。建て替えたほうがトク? 一部を賃貸にするには? 老後の家で後悔しないために、限られた資金で豊かに暮らす住まいのアイデアを教えてくれる本です。
「60歳からの家」なので、子どもが独立して老後の人生を考え始めた方には特に参考になるアイデアがいっぱいです。また若い方にとっても、親との二世帯住宅を検討する、家を新築する時に老後のことも考えておくなど、参考になる話がたくさんあると思います。
 例えば、「第二章:暮らしを豊かにする一点豪華主義リフォーム」には、子どもが独立した後の子ども部屋のリフォーム案として、次のような魅力的なアイデアがたくさんありました(一部を抜粋紹介)。
・子ども部屋をまるごとクロゼットにリフォーム(70~150万円)
・鉄道模型のディスプレーを兼ねた趣味の部屋(70~150万円)
・子ども部屋をセミ吹き抜けにする(100~200万円)
・スタジオ(簡易防音室)に替える(300~500万円))
・インナーバルコニーにする(150~300万円)
 なお、この「インナーバルコニーにする」とは、「子ども部屋の屋根を残したまま外壁を取り壊して、隣接した内壁面には新たに外部掃き出し窓と外壁を貼る。床と天井を外部用に仕上げて、隣との境に適宜ルーバー上のフェンスを取り付ける」という、かなり大掛かりなものですが、洗濯やガーデニングなどに、メリットがたくさんありそうに感じました。
 さらに「階段を直す(80~250万円)」というリフォームも。実は、「真っ直ぐ2階に上がっていく直行階段は、転倒したとき1階まで一気に転がり落ちる可能性が高い」のだそうです。だから「もし、これから新築するのであれば、階段は勾配の緩い踊り場付きの回り階段を作っておき、足腰が弱くなったら住宅用階段昇降機を取り付けるのが一番合理的だろう。」と書いてありました。……なるほど。
 こんな感じで、すごく合理的で、費用も現実的なレベルに抑えられているアイデアが多かったと思います。
 また、家の中から空が(夜空も)眺められる「天窓」って素敵だなーと思っていたのですが、デメリットもかなりあることを教えてもらえました(汗)。
「天窓は屋根部分に窓を付けるから、外壁面に取り付ける一般の窓より3倍の光が入る。太陽光発電ユニットが屋根面に付いているのと一緒である。したがって、その下の部屋はとても明るいと同時に暑い。部屋は瞬く間に温室となる。天窓の内側には遮蔽するためのブラインドやカーテンが必要になる。(中略)実は、天窓を取り付けるのに適しているのは、光が入りにくい北側である。北側に取り付けると暑さの悩みは減る。ただし、室内と外気の温度差が大きくなることで結露が発生し、水滴が落ちてくることがある。窓の汚れも激しいので、定期的な掃除も必要となるだろう。」
 ……そうだったんだ……こういうデメリットもきちんと教えてくれる本なので、信頼できそうに感じます。
 また「第三章:今の家を直して「稼ぐ家」に変える」にも、参考にできそうなアイデアがいっぱい(一部抜粋紹介)。
・2階をレンタルオフィスに改装(300~400万円)
・観光地なら民泊事業者へ貸す(0~200万円))
 この「レンタルオフィスに改装」って、すごくいいと思いました。「デスクを並べ、簡単な仕切りを作るだけなので初期費用が抑えられる。事務所は過度な設備や補強が必要ないので、たとえ空き室になってもオーナーの経済的ダメージが最小限に抑えられる。」のだとか。これなら、誰かが借りていない時には、自分でも便利に使えますしね☆
 さらに「第四章:小さな家に住み替える」には、「リフォームに1500万円以上かけるなら、小さな家に建て替える」として、必要最小限のコンパクトな家「TOFUハウス」(1200万円~)の図面などが紹介されていました。この「TOFUハウス」は、すごく合理的に出来ていて感心させられました。
 特にいいなと思ったのが「本来は屋根になってしまうスペースは屋上にした」という例。広い屋上があれば、人目を気にせず家庭菜園やちょっとした運動が楽しめて最高です。日当たりのいい所にはソーラーパネルを設置して、その下は倉庫に。雨水も貯蔵できる施設もあると、防災にもいいかも……と、妄想が膨らみました(笑)。
 この他にも、既存住宅を快適にする方法など役に立ちそうな記事がたくさん(以下に一部抜粋紹介)。
・既存窓の内側にもう一枚の窓(樹脂製)を取り付ける(1か所5万円前後)
・エアコンを効率的に使うため天井にシーリングファンを取り付ける。(取付場所にもよるが、10万円前後)
 現実的に参考になる、いいアイデアが満載の本でした。住宅の新築やリフォームを考えている方は、ぜひ読んでみてください。
   *    *    *
 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
<Amazon商品リンク>