『なみのひとなみのいとなみ』2012/8/2
宮田 珠己 (著)
数々の爆笑旅行記で笑わせてくれる宮田さんの日常爆笑エッセイ集です。
この本ではあまり遠くへは旅しません。あちこちの新聞や雑誌に書いたエッセイをひとまとめにしたもので、『なみのひとなみのいとなみ』というタイトルは、自伝にするにはあまりにも人並みな人生であったことから、つけたのだそうです(笑)。……確かに、心の中をあまりにも率直にぶっちゃけた感じのこれらのエッセイは、同じように人並みの私にも(うーん、分かる分かる)と共感できることだらけでした。
後ろ向きだけど楽天的、なまけ者なのに心配性、根はマジメなのに(?)トホホ系な宮田さんの日常が垣間見えて笑ってしまいました。
多忙な毎日、一杯のコーヒーとともに、アホな短い文章でちょっぴりクスッと笑って癒されたい……そんな方に最適です☆ でも短時間休む予定の休憩室で、思わず爆笑しながら読みふけってしまう危険性があるので、職場の休憩室にはふさわしくないかもしれません(汗)。
笑えるネタばかりだったのですが、中でも爆笑してしまったのが、「ハイドンのかつら」。ちょっと長いのですが、その一部を紹介させていただきます。
「(前略) と思っていたら先日、テレビで、イギリスの裁判官だったか、ハイドンのかつらを被っていた。ハイドンじゃなくて、メンデルスゾーンでもバッハでもいいが、とにかく厳粛な司法の場で、日本では音楽室でしか見られないような、変なかつらを被って澄ましていたので、驚いてしまった。裁判については公平を期すが、頭については問答無用、そんな気迫が伝わってきたのである。あれは日本でいうなら、裁判のときだけちょんまげ着用みたいなことだろう。時代錯誤も甚だしいというか、甚だしすぎて面白くなってしまっているというか、面白いからわざとやってるんだと思うが、そうでなければちょっと説明がつかない事態である。われわれは知らないでいるが、本来フォーマルな服装というのは、パーティーの席などで、相手を面白がらせようとして着ていたものだったかもしれない。(後略)」
……いや、あれは裁判の歴史的な意味で……と思わず反論(弁護)したくなりましたけど、考えてみたら、やっぱり「ちょんまげ着用」と同じですよね(笑)。うーん、この考察の展開にどう反論すべきか悩みつつも爆笑してしまいました。まあ、アレはつまらなくなりがちな裁判を退屈させないようウケを狙ったものとして……いやいや、やっぱりそれは違うのかな?……うーん……。
まあ、それはともかく、このような「子供の視点」とも思えるほどの率直な意見&考察の展開が、すごく「目からウロコ」的に新鮮な感じがして楽しめます。そういう意味で参考にもなるかもしれません(笑)。
またすごく共感できたのが「決断と決断と決断」。電話回線をISDNからADSLに替えたというのに「光ファイバーにしませんか」というチラシが入っているのを見たときのエッセイ。
「規制緩和か技術の進歩か知らないが、次々と新しいサービスが登場し、決断の機会が増えて、いい迷惑である。」
……まったくだ! まったくだ! と強く頷きながら読んでしまいました。
ハズレのほとんどない面白エッセイ集だと思います。ぜひ読んでみてください☆