『東南アジア四次元日記』2010/7
宮田 珠己 (著)

旅行をしまくりたくてサラリーマンを辞め、東南アジアへ旅に出た宮田さんの爆笑旅行記です。
表紙の不思議なおばさん(?)のオブジェは、ミャンマーのピピェタインタオと呼ばれる七転び八起き人形だそうですが、ひたすらこういう変なモノを追い求めた貧乏旅行記なので、すごく笑えました(個人の感想です)。
旅立ちの最初の場所、香港からして、まともではない写真が掲載されています。レパレスベイだというので、それなりに観光地のようではありますが、リゾート地の砂浜の一角にある仏教公園で撮影した写真は……なんですか? この妙な仏像やらヤギの像は?
というような変なものばかりを探して、ひたすら東南アジアを彷徨う旅。宮田さんの心の琴線に触れたらしい変なものの写真が満載で、東南アジアのディープさがありありと感じられます。日本の盆栽のわびさび感とは全く違う趣のベトナムの盆栽、仏像の迷路、四階建てビルを枕にした巨大仏、丘陵に進んでいく謎の僧列の像など、奇奇怪怪なものが続々写真とともに登場してきて、呆気にとられながらも、私の心の琴線も響いてきたりして……(笑)。
しかも遊園地にしか見えない教団施設では、宗教施設と遊園地は似ているという、かなり哲学的な考察(「宗教=遊園地説」)もしています。
「苦しい現実から逃れたい→どこかへ行きたい→でも遠くは大変だし面倒くさい→てっとり早く行けるところで、なおかつ現実から遠く離れた場所へ行きたい→遊園地でも行くか(宗教にでも入るか)→そうしよう、という発想だ。」
……真面目なんだか、ふざけているのか、よく分からなくなるところが素晴らしい(笑)。
しかも、どうやら「いい人」オーラを出しているようで、ボラれそうになったりもしていますが、ハノイの日本レストランでは社長から直々に「日本料理を教えて欲しい」と頼まれたりもしています。でも宮田さんは料理が苦手だそうで困ってしまったそうですが、それでも熱意におされて、次の日もレストランを訪れると約束させられてしまいました。そこで他の日本人を三人探して四人でレストランに行って、かなり泥縄式ながら日本食を教えることが出来たようです。その細かい経緯も描かれていて、笑わされると同時に、東南アジアの「生の」現地事情を垣間見ることが出来ました。
そうとう変な場所ばかり言っているので、一般の観光旅行用のガイドブックとして役に立つことはありませんが、一般的にはまだ知られていない東南アジアの場所の現地事情(の一部)を知るという意味では、役に立つかも知れません。面白い旅行記が好きな方に、お勧めです。