『地球科学者と巡る世界のジオパーク』2023/10/20
神沼 克伊 (著)

 世界の絶景スポットを「地球のジオパーク」と表し、地球科学の視点でわかりやすく解説してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 地球の表面
第2章 ユーラシア大陸
第3章 アフリカ大陸
第4章 南北アメリカ大陸
第5章 オーストラリア大陸
第6章 南極大陸
第7章 島嶼

『地球科学者と巡る世界のジオパーク』というタイトルだったので、具体的な「ジオパーク」地域を巡る本なのかと思ったのですが、全世界の地形がどのようにできたのかについての他、地理的背景が関係する文化などを概説してくれる本で、具体的な絶景地域についても、その成り立ちの概要や写真の紹介はありましたが、個別の絶景地域を詳しく紹介してくれるガイドブックのような本ではありませんでした。
 それでも「全世界の地形」全体について、ざっくり知ることが出来て、とても興味深く勉強にもなりました。
 最初の「第1章 地球の表面」は、なんとビッグ・バンから始まります。銀河系が生まれ地球が誕生します。そして現在のような「地形」は次のようにして生まれてきました。
「地球表面の海水が蒸発せず留まるようになったのは、大気中の二酸化炭素が激減し、温室効果がなくなり、地球内部の熱が宇宙空間に放出されるようになったからなのです。地球の表面の温度が低下し、地表の岩石が剛体となることで「プレート」が形成され、プレートテクトニクスが始まったと考えられています。地表面には亀裂が生じて現在の海嶺が形成され、海底は水平に移動し、海溝を形成しながら地球内部に沈み込むシステムが形成されたのです。」
 ……地球は45億年前頃に太陽系の中にその原型があらわれ、40億年前頃までには成層構造を有する地球が誕生したと考えられているそうです。
 そして、このプレートの運動が、ヒマラヤ山脈などを作ってきました。「第2章 ユーラシア大陸」には、次のような記述がありました。
「アジア大陸の特徴は世界の屋根ヒマラヤ山脈が位置していることです。北上してきたインド(亜大陸)プレートのユーラシアへ大陸への衝突が始まったのは7000万年前頃からと推定され、ヒマラヤ造山運動が始まりテチス海の海底が上昇し、結果的には9,000mの地盤上昇で8,000m級の大山脈群が形成されました。」
 このようにインド亜大陸が衝突してヒマラヤ造山運動が始まったことは知っていたのですが、ピレネー山脈も、次のようなプレートの運動で出来たそうです。
「1億4000万~6600万年前の白亜紀に南から北上してきたアフリカプレートがユーラシア大陸にぶつかり、主要山系のピレネー山脈、アルプス、アドリア海東岸に並ぶディナル・アルプス、ピンドス山脈、さらにその東のカルパティア山脈が形成されました。地中海やエーゲ海も現在の形の原形が出現しました。」
 ……アフリカプレートもユーラシア大陸に衝突してきたんですね……。
 また「第4章 南北アメリカ大陸」では、ギアナ高地について、次のようなことを知ることが出来ました。
「ギアナ高地やブラジル高原の地層は20億~14億年前頃の先カンブリア時代に堆積した砂岩や珪岩からなり、楯状地を形成しています。ゴンドワナが分裂を繰り返しましたが、ギアナ高地付近はその大陸の回転軸付近に位置していたと考えられ、ほとんど現在の位置から動いていないと推定されています。」
 ……へえー、そうだったんだ……。
 そして、ちょっと驚かされたことは、北極と南極の気温が大幅に違っているということ。「第6章 南極大陸」には、次のように書いてありました。
「北極と南極では、同じ極地でも大きな違いがあります。北極の中心は北極海で、その表面は厚さが数メートルの海氷に覆われ、その下には海水があります。海水の氷点は-1.9℃ですから、北極では気温が-10℃、-20℃でも、海の中は-1.9℃よりは暖かいのです。北極海は北極を寒くしない働きをしています。
 南極の中心は南極大陸、その上に平均の厚さが2,000mを超える氷床が存在し、常にその上の空気を冷やし続けています。最低気温は-90℃、平均気温は-50℃程度です。それに対して北極の最低気温は-70℃、平均気温は-30℃程度です。南極は北極より最低気温と平均気温が約20℃低いのです。その原因は陸と海にあります。南極には南極大陸という広大な陸地があり、その上に氷が存在しているために北極よりも寒いのです。」
 ……こんなに気温が違っていたとは知りませんでした。南極大陸というと可愛いペンギンがたくさんいるイメージがありましたが、北極よりもずっと過酷な環境だったんですね……。
『地球科学者と巡る世界のジオパーク』、世界の地形や地理の概要を学ぶことが出来る本でした。絶景写真も多数あって、それがどのように形成されたのかについても知ることが出来るので、とても参考になります。地学好きの方はもちろん、旅行好きの方もぜひ読んで(眺めて)みてください。
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