『こどもが探せる身近な場所のきれいな石材図鑑』2022/7/13
柴山 元彦 (著), 井上 ミノル (著)

 水辺でなくても、きれいな石はごく身近に、身の回りのいたるところに存在する……建築物や日用品など、気がつかないほど身近なあらゆる場所に使われている「石材」のことを、マンガと図版(フルカラー)で分かりやすく解説してくれる本で、『こどもが探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑』の姉妹編です。内容は次のような感じ。
1)身近な石材を探してみよう
ショッピングビルの壁にアンモナイトの化石を見つけられることがある!
2)岩石と石材
岩石のでき方と種類、石材として用いられるのはどのような石なのかを見ていきましょう。
3)石材はどこからやってくる?
現在、多くの石材は外国から輸入されています。どの国からどのような石材が届くのか、そして石材が豊富にとれる地域には、どのような特徴があるのか?
4)石材加工場に行ってみよう!
石材の原石が、石材加工場でふさわしい大きさにカットされ、必要な加工がほどこされていく工程を、マンガで紹介してくれます。
5)石材を楽しむスポット
日本国内の採石場や、かつての石切り場、石材を観察できる建築物など、石材と親しめるスポットを40か所以上紹介してくれます。
6)石材ギャラリー
自然が生み出す芸術というべき、美しい石材を見てみましょう。

 姉妹編の『こどもが探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑』で紹介される場所は、大自然を楽しめる場所が多くてアクセスが大変な場合もありましたが、本書で紹介される場所は、街なかや石の観光地になっている場所が多いので、アクセスも比較的容易だし、いつも通りの服装で、装備はカメラやメモ帳だけ(またはスマホだけ)でもOK(楽しむだけなら、もちろん装備は不要)。だから、すごく気楽に石探しを楽しめる上に、夏休みの自由研究のネタにできるかもしれない美味しい情報が満載なのです。
 冒頭は大阪駅の地下街で、子供たちが壁でアンモナイトや植物の化石っぽいものを見つけるマンガ。なんと本物のアンモナイト化石が入っている石材が、ビルの建築材料として使われていたのです(植物の方は、残念ながら植物化石ではなく、岩のすきまに鉄分などが入ってできた模様だそうですが……写真で見る限り植物化石にしか見えない……きちんと識別するのは大変かも……。)
 ちなみに天然の岩石のすべてが石材として利用できるわけではなく、1)硬くて丈夫、2)大量に採石できる、3)表面の模様が美しい、などの条件がそろわないといけないそうです。
 そして石材としてよく利用される岩石には、1)火成岩(花崗岩、安山岩)、2)堆積岩(凝灰岩、砂岩、石灰岩)、3)変成岩(結晶片岩、粘板岩、大理石)があるのだとか。(なお、墓石の材料などとしてよく聞く「みかげ石」は花崗岩の別名ですが、花崗岩だけでなく、閃緑岩、斑れい岩、片麻岩などもまとめて「みかげ石」として扱われているそうです。)
 驚いたのは、大理石は石灰岩が熱や圧力で変性したもので、石灰岩は水に弱いので、石灰岩や大理石の石材は、主に建物の内部で使われているということ……そうだったんだ。外壁に使われているのは花崗岩が多いそうです。
 そして石材加工場見学マンガにも興味津々。岐阜県の関ケ原石材での話で、内容も面白いのですが、一番驚いたのは広い会社の敷地内を新幹線が走っているということ! この会社は1951年創業で、新幹線は後から通ったそうですが……気がつかないまま、会社の中を新幹線で何度も通っていたのかも(笑)。なお、この会社には「石材ギャラリー」があり、ユニークな石材を見学できるそうです。
 また本書の中で石切り場跡として紹介されている中には、「栃木県の大谷石採石場跡」、「兵庫県の玄武洞公園」などもあり、どちらも本当に凄く見ごたえのある場所なので、お勧めです☆
 そして石材と親しめる施設の中には、北海道(札幌)の「藻南公園札幌軟石ひろば」と「石山緑地」がありましたが、ここもとても素敵な場所です。石山緑地のそばには、石の名建築として紹介されている「ぽすとかん(旧石山郵便局)」もあるので、ここにもぜひ立ち寄ってみてください。
 さらに京都駅ビルには石の博物館(駅ビルの柱に石材標本プレートが貼りこまれている)があり、大阪駅ノースゲートビルディングは、壁全体がガーネットを含んでいるブラジル産の片麻岩でおおわれているそうで、これらは京都や大阪に遊びに行ったついでに本当に気軽に見学できそうなので、石好きの方は、観光やショッピングのついでに見に行ってください☆
 この他にも、城の石垣に使われている石材(花崗岩:大阪城、流紋岩:姫路城、安山岩:熊本城・江戸城、玄武岩:仙台城・江戸城、砂岩:和歌山城、石灰岩:中城城・八代城、チャート:高知城、結晶片岩:和歌山城)などの石情報が、写真付きで紹介されるなど、日本全国の参考になる情報が満載☆
 まさに『こどもが探せる身近な場所のきれいな石材図鑑』でした。子どもはもちろん、大人も気軽に楽しめる石スポット情報をたくさん教えてもらえる上に、石の勉強にもなる、とても美味しい本です。お勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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