『なぜ地球は人間が住める星になったのか? (ちくまプリマー新書)』2022/3/10
山賀 進 (著)
地球はどのようにして生まれたか……地球が生命に適した環境になって多くの生物が栄え、それらが地球環境を変えても来た共進化の歴史を、分かりやすく説明してくれる本です。
「地球型生物」がどうして地球に誕生したのか、そもそもなぜ地球が、「地球型生物」が存在できる環境、液体の水(海)と大気がある惑星になったのか……この本は、その歴史をじっくりたどっていきます。
このような生命の進化や地球の変遷については、すでに多数の本が出されていて、この本も、科学好きの方ならすでに知っている内容のことが総合的に書かれているだけとも言えますが、とても分かりやすく説明されているので、気持ちよく復習できました。うろ覚えで断片的に知っていたことも、ここで学び直すことが出来ました。
例えば、「地球の年齢」については、次のように説明されています。
「地球の年齢についてはこのように考えています。地球の核-マントルという層構造ができたとき、ウランは化学的な性質から鉄よりも岩石と一緒になりやすい親石元素なので、核には取り込まれずマントルに集まります。マントルではウランの娘元素である鉛は増え続けますが、核の中の鉛は、マントルが核と分離する以前、まだウランが地球全体に均一に分布していたときにできたものです。ですから、この鉛の量を初期値とします。
現在のマントルの娘元素の鉛の量は直接測定できませんが、地表で採取できる岩石から推定します。問題は核の鉛の量です。ここで地球の起源を思い出します。石質隕石=マントル、鉄隕石=核でした。実際、地表の岩石から推定した鉛の量と、石質隕石の鉛の量が同じになりました。これは、石質隕石=マントルが正しいこと、だから、鉄隕石=核としてもいいことがわかるので、核の鉛の量は鉄隕石のもので代用します。
こうして、現在のマントルの中の鉛の量を過去に遡って、それと核の鉛の量が一致したところが、地球のウランが核に取り込まれずにマントルと核でウランの有無に違いができた年代とわかります。つまり、地球の年齢45億~46億年前(45.5億年前)は、地球の層構造ができた、現在の地球らしい姿になったときからの年齢だということになります。」
……なるほど。鉛の量から推定されていたんですね!
また「生命発生のシナリオ」については、次のように書いてありました。
「(前略)現在考えられている生命発生のシナリオは次の通りです。1)反応活性物質といわれるシアン化水素、ホルムアルデヒドなどができる。2)反応活性物質からアミノ酸、核酸塩基、糖、脂肪酸、炭化水素などができる、3)これからタンパク質、核酸、多糖、脂質などの高分子ができる、4)これらが集合・作用しあって(自己組織化)、代謝、複製機能を持つ原始生物が誕生するというものです。」
そして「タンパク質のもととなるアミノ酸を指定するDNAの暗号(コドン)が、現在のどの生物でも同じということは、われわれ地球上の生物は、遠い昔に共通の祖先(単一の祖先)を持っていたということを強く示唆しています。」だそうです。
こういう感じで、生命や地球の歴史を、とても科学的に分かりやすく説明してくれるので、楽しく学び直すことが出来ました。
もちろんこの他にも、星の質量の求め方とか、地球はなぜ人が住める星になったかとか、地球は何度も天変地異に襲われたとか、興味深い記事がたくさん掲載されています。
全体としては、科学好きの人にとっては常識的な内容とも言えますが、山賀さんの「説明の明快さ」が素晴らしくて、とても分かりやすいので、ぜひ読んでみてください。お子さんのいる方にとっては、お子さんからの「なぜなぜ攻撃」に答えるためのヒントをたくさん拾えると思います。また学生の方にとっても、地球や生命科学の基礎知識を学ぶための素晴らしい入門書になると思います。だんぜん、お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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