『グレートブレイクスルー 科学技術大事典』2021/9/25
ロバート スネッデン (著), 塚原 東吾 (監修), & 2 その他

 火の発見から印刷機や蒸気機関の発明を経て、宇宙旅行や人工知能といった現代の驚異的技術革新に至るまで、さまざまなテクノロジーの大躍進(グレートブレイクスルー)を写真やイラストを使って幅広く解説してくれる本で、世界を変えた発見と発明の歴史が、次の14のテーマで紹介されます。
第1章 火と金属
第2章 定住のはじまり
第3章 移動する人々
第4章 正確な時を求めて
第5章 言葉を広める
第6章 産業革命
第7章 電化する世界
第8章 フィルターの向こう側
第9章 世界に向けて発信する
第10章 輸送のテクノロジー
第11章 アトムの時代
第12章 宇宙への旅立ち
第13章 二進数の世界
第14章 ロボットとAI
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 例えば「第1章 火と金属」では、最初の道具が、なんと330万年前には存在していたことが紹介されていました。それはホモ・サピエンスが登場する300万年以上前の道具で、ケニアのトゥルカナ湖岸にあるロメクウィ3遺跡で見つかったそうです。
 そして「第3章 移動する人々」では、自然からの発想ではない「人間の発明」である「車輪」が最初に使われたのは5000年以上前のメソポタミアで、陶工の仕事を補助する目的で用いられていたようだったことが紹介されています。そして車輪の発明は「舗装した道路」の需要を高め、これまでに見つかった最古の舗装道路は紀元前2600年頃のものだそうです。
 またボートは車輪よりも早い時代に登場し、それはなんとホモ・サピエンスが登場するより60数万年も前で、ホモ・エレクトスが航行用の筏を組み立てたのではないかと考えられているとのこと……人類はすごく昔から道具を発達させてきたんですね!
 この他にも「第4章 正確な時を求めて」では、「最古の日時計(エジプトの王家の墓で発見された3500年前の日時計)」、「第5章 言葉を広める」では、「現存する最古の印刷物(敦煌で発見された仏教の経典『金剛般若経』で、868年頃に製作)」などの情報を知ることが出来ました(もちろん古いものだけではなく、最新の「セシウム原子周波数時計」などの情報もあります)。
 すごくわくわくさせられたのが、「第6章 産業革命」。なんとなくジェームズ・ワットの蒸気機関の発明で始まったような気がしていましたが、産業革命期の蒸気機関は、次のように、それよりずっと前に発明されていたようです。
1606年 ヘロニモ・デ・アヤンツ・イ・ボーモントが初の蒸気動力機の特許を取得する
1705年 トマス・セイヴァリが蒸気ポンプをつくる
1708年 アブラハム・ダービーが鉄の精錬にコークスを用いる
1712年 トマス・ニューコメンが蒸気機関を開発する
1733年 ジョン・ケイが飛び杼を発明する
1764年 ジェームズ・ハーグリーブスがジェニー紡績機を発明する
1769年 ジェームズ・ワットが蒸気凝縮器を分離させてニューコメンの設計を改良する
(以下略)
 ……蒸気機関はすでにありましたが、ワットが改良したことで、本格的な実用化(産業革命)が始まったようです。蒸気機関や紡績機などの産業革命時代の機械は、工作の延長にある「メカ」って感じで、構造が分かりやすいのがいいですよねー。
 またすごく面白かったのが、「第7章 電化する世界」で紹介されている、ボルタが電流を生み出すことになった経緯。少し長いですが、紹介します。
「1780年頃、イタリアの物理学者ルイジ・ガルバーニは死んだカエルの脚を銅製の留め具で固定し、鉄製のメスを使って解剖した際に、カエルの筋肉が痙攣したことに気づきました。ガルバーニは、電気的な流体のようなものがカエルに流れたと考え、これを「動物電気」と名づけました。同じくイタリアの物理学者であったアレッサンドロ・ボルタは、ガリバーニの発見に興味をひかれましたが、その推論が正しいとは思わず、異なる金属同士の接触が電気を生じさせたのではないかと考えました。
 その仮説を試すのに適した検査装置がなかったため、ボルタは金属をさまざまに組み合わせては自分の口のなかに入れてみて、どうなるか確かめてみることにしました。亜鉛と銅の組み合わせた最も電気的刺激が強いと判断したボルタは、亜鉛盤と銅盤を互い違いに塩水に浸した円形の布で仕分け、垂直に積み上げました。さらに、その積載物の両端に針金をつなげて指で触ると、「ちくりとした感じ、もしくは軽い衝撃」を感じました。亜鉛盤と銅盤をさらに追加すると、衝撃が強くなりました。こうしてボルタは電流を生み出したのでした。」
「金属板を自分の口に入れること」で電流を生み出した……なんか凄いですね(笑)。
 この本を読み進めていくと、太古の昔から大勢の人々がいろんな発見・発明を重ねてくれたおかげで現在の世界が出来上がってきたことがよく分かって、今の便利な生活を享受できていることに感謝の気持ちがこみあげてきます。私自身も、これらの人々のように、少しでも何か貢献できるよう心掛けていきたいと思います。
 ところで私は科学博物館もとても好きなのですが、科学博物館は収蔵品が多すぎて、歩いているうちに前の部屋の展示内容すら忘れてしまうので(汗)、この本のように自分が読みたい時に何度でも読み直せる形で、科学の歴史を総合的網羅的に学べるのはありがたいと思います。まさに自分だけの科学博物館ですね☆ みなさんも、ぜひ眺めてみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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