『ミスしない大百科 “気をつけてもなくならない”ミスをなくす科学的な方法』2021/3/6
飯野謙次 (著), 宇都出雅巳 (著)

 慌てているときほどミスが多くなる、大事な書類が見つからない、メールの返信を忘れていた……日常起こるミスメールや忘れ物といった身近なミスまで、脳科学・認知科学や失敗学的な知見を踏まえて、それらをなくす方法を具体的に教えてくれる本です。
『ミスしない大百科』のタイトル通りに、いろんな種類のミスと対処法が網羅されていて、新入社員などのビジネス初心者の方にはとても参考になるのではないかと思いますが、中堅社員以上の方にとっては、他の自己啓発書などで見たことのある内容ばかりで、あまり新鮮味はないかもしれません。私自身も、ほとんどすべて、すでに実行中のものでした。
 それでも中堅以上の方でも、新入社員を指導する時などに、活用できると思いますし、かなり多方面に渡って書いてあるので、何かヒントを得られるかもしれません。そういう意味で読む価値は十分あると思います。
 この本の「ミスをなくす科学的な方法」の原則は、「一度失敗したら、それをなくすための仕組みを作ること」にあり、これこそ正に「そもそもミスを起こさないための正しい対処法」だと思います。
 例えば、「第1章 仕事のミスをなくす」には、次のような対処法が書いてありました。
「仕事がなぜかたまる」
→・仕事時間を長めに見積もると、先延ばしもしにくくなる
・締め切りがないものにも、締め切りを設ける
・時間のかかる仕事は、分割してマイルストーンを置く
「仕事が予定通りに終わらない」
→・仕事を、「必要な結果(重要性)」、「作業時間」、「単純な仕事か、考える仕事か」で分けて考える
・締め切りがある仕事は、前日ではなく前々日に時間をとる
・単純な作業は、頭を使う仕事・大変な仕事の合間に行う
「優先順位がつけられない」
→・人は目の前の仕事を片づけることを優先してしまう
・仕事をすべて書き出し、緊急性と重要性の両方に注意を向け、優先順位をあらかじめ決めておく
・優先順位をつける前に、誰がその仕事をするのかを考える
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 こんな感じに、「問題状況」への対処法のポイントがまず簡単に列挙してあって、その詳しい説明が書いてあります。自分がミスしやすい問題状況を見つけて、そのポイントのアドバイスを実行するように心がけていくと、どんどんミスをなくしていけるのではないでしょうか。
 例えば「忘れ物が多い」へのアドバイスは、「置き場所を決める」、「毎日のルーティンに組み込む」、「1つにまとめて持ち歩く」などで、これは私自身も実行中ですが、とても効果的な方法だと思います(忘れそうなときは、玄関の内側に「メモ」を貼っておくのも効果的)。
 また「慣れていないとミスしやすい/慣れてきてもミスしやすい」では、
・「何やってるんだ!」という注意は逆効果
・その場で慌てないよう、必要なことは先に覚えておく
・慣れてくると「イレギュラー」なことも、「いつものパターン」と認識してしまう
 ……と書いてありましたが、初めてやる仕事の場合は、特に事前準備を念入りに行うことが大事だと思います。本書でも、「その場に出そうな基本知識や用語、状況によっては相手のプロフィールなどをあらかじめ覚えておき、その場ではこれらに注意をできるだけ使わないようにする」と書いてありました。
 また「ミスした時に「何やってるんだ!」という注意は逆効果」というのも真実で、これを言われると、誰でも緊張のあまり、ますますミスを重ねることになると思います。こんな時は、いま何をすべきかの具体的な行動を簡潔に教えてあげることの方が、ずっと有効なフォローになるはずです。
「もっと気をつける」ではミスはなくせない……ありがちなミスを減らす(起こさない)方法を教えてくれる本でした。人間にはミスを完全になくすことは出来ませんが、ミスを減らしたいと思っている方は、ぜひ一度、読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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