『世界のトップ企業50はAIをどのように活用しているか?』2020/10/23
バーナード・マー (著), マット・ワード (著)

 グーグル、マイクロソフト、アマゾンをはじめとする革新的企業から、小売、食品、エンタメ、金融、医療、製造業など、幅広い業界のAI活用成功事例を紹介してくれる本です。
 世界のトップ企業50のAI活用は、ここまで進んでいるんだということを痛感させられました。例えばアリババの場合は、次のような感じです。
「アリババのオンライン・ショッピング・ポータルでは、顧客は人工知能(AI)ツールを使ってほしいものを見つける。世界最大のクラウドサービスプロバイダーとして、アリババはプラットフォームやツール、クラウドサービスをほかの企業にライセンス提供し、AIの利用に力を貸している。
 それだけではない。都市をまるごと「スマートシティ」に変える数々のプロジェクトを通じて、アリババは社会全体で広範囲にAI事業を展開している。さらに、増え続ける人口への食料提供の問題を低減するため、中国(および世界)の農業・畜産業に革命を起こそうと計画中だ。」
 またグーグルの場合は、次のような感じ。
「世界でもっとも多くの人が利用しているグーグルの検索エンジンには、そこかしこにAIが採用されている。テキスト、音声、画像、いずれの検索機能を使う場合も、すべてのクエリは、いまや自己学習するスマート・システムによって処理されている。」
「機械学習システムは、ディレクトリ内のすべてのコンテンツを分類、ランク付け、フィルタリングするようトレーニングされている。コンテンツについては、引用(リンク)される頻度、含まれる情報の正確性、情報がスパムや広告である可能性、違法だったり著作権侵害だったりするおそれはないか、などが吟味される。」
 この他にも、AIがニュース記事を書くとか、医療診断をするとか、自動車の自動走行とか、画像への自動タグ付けとか、さまざまな活用例を多数読むことが出来ました。
 とは言っても50社分もの活用例が一冊に詰め込まれているので、一つ一つは概要レベルの紹介ですが……それでもすごく壮観でした。
 なかでも興味を引かれたのは、ユニリーバの人材採用での活用例。AIによる人事採用は、次のような流れで行われているそうです。
1)世界中の志願者がオンライン履歴書、またはリンクトインのプロフィールを提出
2)志願者は12種類のオンライン・ゲームに参加する(ゲームは応募しているポストに関連のあるさまざまな分野の適性をテストするためにつくられている。理想とされるゲームの結果は、応募するポストによって異なる(狙いは勝ち負けではなく、適性をみること)
3)志願者はビデオ・インタビューを提出(言葉や顔の表情、ボディランゲージをAIが分析)
 AIは「目的意識」「レジリエンス」「ビジネスセンス」「システム思考」などを自動でラベルづけするそうです。しかもこのシステムは、志願者へのフィードバックを自動で生成するので、採用にいたらない人にとってもメリットがあるのだとか。……こんなAIの活用の仕方もあるんですね……。
 この他にも、次のような記事が目をひきました。
「(アップル)アップルは、ユーザデータの保護にフォーカスすることにした。慎重な扱いが求められる個人情報を端末だけで(AIが自律的に)処理し、転送の必要がないようにすることで、データの安全性に対する顧客の信頼を高められると期待しているのだ。」
「(マイクロソフト)クライドベースのAIには大量のネットワーク帯域幅が必要で、そうしたAIをコモディティ化するには、すべての人が帯域幅を使えるようにならなければいけない。この課題を克服するため、マイクロソフトは、データセンターを沿岸部の都市に近い海底に設置する「プロジェクト・ナティック」という新たな試みを行っている。」
 ……世界のトップ企業50は、AIの実用化を本気で進めていることがよく分かり、とても参考になる本でした(残念ながら日本企業は含まれていないようでしたが……)。
 今後、AIが世界をがらりと変えていくことは間違いないでしょう。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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