『森へ (たくさんのふしぎ傑作集) 』1996/9/20
星野 道夫 (著, イラスト)
コケにおおわれた巨木、倒木、岩石……アラスカを愛した写真家・星野道夫さんが、私たちを原生林の世界に優しくいざなってくれる写真集です。
南アラスカからカナダにかけて広がる原生林の世界。巨木のたちならぶ森の中は夕暮れのように暗く、見わたすかぎりの木々、そして地面も岩も倒木も、びっしりと緑のコケにおおわれ、森全体がひとつの生きもののようです。誰かが通ったようなふみあとに気づき、森へ入っていくと、……大きな足跡を見つけました。
そして出会ったのはクロクマの親子。森を流れる川には、たくさんのサケが産卵しにのぼってきます。
ページを開くごとに、本当に深い『森へ』どんどん踏み進んでいくような気持ちにさせられます。
写真も素晴らしいのですが、添えられている文章も美しい。
「朝の海は、深い霧につつまれ、
静まりかえっていました。
聞こえるのは、
カヤックのオールが、水を切る音だけです。
すこし、風がでてきました。……(以下略)」
やわらかな霧にぼーっと浮かぶ森へと続く海に小さく漂うカヤックの写真に添えられた文章で、この静謐な童話のような写真集は始まります。ページを開くだけで、オールが切る微かな水の音、肌をなでる湿った空気までも感じさせてくれます。
そして森へ。
見わたすかぎりの木々、そして地面も岩も倒木も、びっしりと緑のコケにおおわれて、森全体がひとつの生きもののようです。人けのない深い森なのに、誰かが通ったように草のしげみが割れている……そのまま誘われるように薄暗い深い森の中へと歩みを進めていきます。
とても静かで美しく、そしてどこかに恐ろしさも秘めている深い森の物語。
写真だけでなく、詩のような文章で、森をからだ全体で感じさせてくれます。
児童向けの本なのですが、表紙の文字さえ少し変えれば、そのまま大人向けの本になりそうな感じ。サイズもA4と適度な大きさなので、イラストを描く時や、小説を書くときの森の写真資料としても活用できると思います。とても素敵な本で、お勧めです☆
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