『ロケットの科学 改訂版 創成期の仕組みから最新の民間技術まで、宇宙と人類の60年史』2019/2/16
谷合 稔 (著)

 ロケット開発の歴史と最前線(世界と日本のロケット50種超)を、写真やイラストで解説してくれる本です。目次は次の通りです。
序章 ロケットの飛ぶ仕組み
第1章 戦中や戦後のロケット
第2章 日本の草創期
第3章 成熟期のロケット
第4章 時代をつくったロケット
第5章 民間のロケット
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 ロケットの歴史はとても古く、歴史に初めて登場したのは、なんと10世紀頃! 中国で火薬が発明され、爆発的な燃焼をする火薬を筒に詰め、弓矢に取りつけて使用したのが始まりだそうです。
 ……ん? それって、ロケットなの? と思ってしまいましたが、今のロケットも、そもそもは武器として開発されたそうです。第二次世界大戦後、ミサイルの転用から、米ソのロケット開発競争が繰り広げられるようになったのだとか。
 しかも、なんと土星探査機カッシーニを土星に送るのに成功したアメリカのタイタンⅣも、退役間近のICBMミサイルを利用したロケットなのだとか! その他にも、ミサイル転用ロケットが多数あるようです。……考えてみれば、ICBMミサイルは、ロケットとほぼ同じですよね。もっともロケットは「酸素のない」宇宙空間でも飛ばなければいけないので、酸化剤が必要ですが。
「序章 ロケットの飛ぶ仕組み」には、次のような記述がありました。
「地球の引力はものすごく強いので、ロケットがそれを振り切って宇宙空間に飛び出すためには、時速約2万8400㎞もの速度をださなければなりません(第1宇宙速度)。(中略)人工衛星を地球の引力が及ばないところまで送るためには、時速約4万3000㎞と、さらに速い速度が必要です(第2宇宙速度)」
 このようなロケットの飛ぶ仕組みに関する簡単な説明の後、ロケット開発の歴史や、各国のロケット多数が、写真付で解説される「ロケットのポケット図鑑」のような本です。2013年の『ロケットの科学』を改訂し、大幅に加筆修正したものだそうで、民間ロケットなどの最新のロケット事情まで追加されていました。
 ペガサスやスペースシップ、ファルコンなどのアメリカの民間ロケットに混じって、日本の民間ロケットのCAMUI(NPO法人 北海道宇宙科学技術創成センター)と、MOMO(インターステラテクノロジーズ)も掲載されていました。なんと「CAMUIは火薬を用いていません。燃料であるプラスチックを、酸化剤である液体酸素で燃焼させ、その燃焼ガスを高速で噴出することによって推力を得ようとするものです。」なのだとか! 民間のロケットは、アメリカのものも、日本のものも、従来のロケット開発とは違う、柔軟な思考や方法で開発されているようです。これって、素晴らしいことですね☆
 ロケット開発について、総合的に概観するのに役に立つロケット図鑑でした。でも、欲を言えば、「序章 ロケットの飛ぶ仕組み」には、ロケットの打ち上げ時のドキュメント(手順など)とか、ロケットに人工衛星をどのように乗せるのか、どのように宇宙空間に置いてくるのかなどについても、イラストで具体的に解説してくれると、もっと嬉しかったのにな、と思ってしまいました(汗)。
 宇宙開発は、今後もどんどん進んでいくことでしょう。今後の展開を期待したいと思います。ロケットに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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