『必携ドローン活用ガイド―安全かつ効果的な活用を目指して』2018/9/14
内山 庄一郎(国立研究開発法人 防災科学技術研究所) (著)
ドローンの導入・運航を目指した体制づくりや、災害対応における活用のあり方を写真・図版を用いて詳しく解説してくれる本です。内容は次の通りです。
第1部 ドローン活用ガイド(無人航空機の活用、航空法における無人航空機の飛行ルール、無人航空機の導入における検討事項、無人航空機の飛行に必要なデバイス、無人航空機活用ガイド)
第2部 ドローン活用事例紹介(神戸市、さいたま市消防局、千葉市消防局、東京消防庁消防技術安全所、焼津市、大和市消防本部)
第3部 災害対応ドローンカタログ(株式会社エンルート、株式会社自律制御システム研究所、DJI JAPAN株式会社、株式会社ネクシス光洋)
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TVの情報番組の絶景撮影などだけでなく、災害現場撮影などでも大活躍のドローン。この本は、組織が災害対応のために活用する際に、導入から運用までを、実務的な視点で詳細に解説してくれる指南書です。
「第1部 ドローン活用ガイド」では、無人航空機(分かりやすいようにパーツがむき出しになった機体)の基本構造の写真や、航空法、無人航空機の導入における検討事項などの説明がありました。
なかでも参考になったのは、ドローンは飛ばすだけではダメということ。当たり前のことですが、取得した情報をどう整理して使うかを、あらかじめ考えて体制を作っておかなければ、緊急事態発生時に時間を浪費することになります。この本には次のような記述がありました。
「無人航空機による情報取得では、データ量が非常に大きくなりやすい。(中略)無人航空機では、分解能1~10センチという超高解像度の写真や映像を撮影することができる。(中略)広範囲を対象とした情報の取得では、情報量が膨れ上がる。さらに取得しただけの大量の生データの状態では、活用することが難しい。そこで、無人航空機で取得したデータを活用するために、次の分析プロセスによる情報の統合や可視化が必要になる。」
被災地を撮影した膨大な写真や動画から、それが地図上のどこを写したものか、被災前とどう違っているのかなどは、現状では人間がチェックするしかないようです。この本には、「今のところ、無人航空機が情報の取得から評価プロセスまでを自律的に実施することは期待できない。」と書いてありました。
……そうだったんですか。それでも現在(2019年)、大災害が発生した時には、「ドローンでの被災地の撮影を活用した災害救助活動」が行われるのが、すでに当たり前のような気がしてしまっているので、今後もそれを期待したいと思ってしまいます。
この本では、実はまだ「活用の端緒についたばかり」のドローンを、どのように運用するか、災害対応でどう活用するかについて、「第1部 ドローン活用ガイド」で写真や図版を活用して解説してくれるだけでなく、「第2部 ドローン活用事例紹介」では、神戸市などの先進事例を具体的に紹介してくれます。
神戸市は、「災害等における無人航空機の運用に関する協定書」や「業務報告書」などの見本を提示してくれていますし、さいたま市消防局は、ドローンのランニングコスト(維持管理費)や保険などの具体的金額まで紹介してくれています。さらに千葉市消防局も、「消防活動用無人偵察システム資器材」の一覧表や、「消防活動用無人偵察システム 整備・点検記録」の見本を提示してくれるなど、すごく実践的に使える情報が、驚くほど満載でした。
ドローンをこれから導入したいと考えている方にとって、本当に使える『必携ドローン活用ガイド―安全かつ効果的な活用を目指して』だと思います。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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