『地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』2018/10/17
横山 祐典 (著)

地球46億年の気候大変動に関する最先端の研究で分かってきた、気候変動を制御する地球の「からくり」を、総合的に分かりやすく解説してくれる本です。
隕石が絶え間なく降り注ぐマグマオーシャンの時代から、全球凍結したスノボールアース、恐竜が繁栄した超温暖化時代、そして氷期、間氷期を繰り返す、直近の260万年にいたるまで、地球の気候は激しく変動してきたそうです。
「第3章 暗い太陽のパラドックス」では、「誕生当時の太陽は、私たちが今見ている太陽よりも「暗かった」」ということが明かされます。シミュレーションによると、太陽の光度は25~30%ほど小さかったのだそうです。こんなにも太陽が暗かったにもかかわらず、全球凍結ではなく、地球表層は温暖で、海水をたたえ、多種多様な生物を育んでいったのはなぜなのか?
この疑問に対する答えはまだ出ていないようで、研究&論争が続いているようですが、このパラドックスを解消させる要因として注目されているのが、温室効果ガスの存在なのだとか。
また「第5章「恐竜大繁栄の時代」温室地球はなぜ生まれたのか」では、「恐竜が闊歩した中生代は、気候学的にも特異な時代であった。当時の地球の平均気温は22℃。現在の地球の平均気温は約15℃だから、今より7℃も高かったことになる。恐竜の全盛期といわれる白亜紀はさらに高温(平均気温24~29℃)で、南北両半球のどちらにも氷床が存在しない「グリーンハウス・アース」つまり、「温室地球」の時代であった。」ということを知りました。平均気温が今より7℃以上も高くても、恐竜などの生物が元気に活動していたんですね。地球が熱くなってしまっても、それに適応して生きていける巨大生物がかつていたという事実を知って、なんとなくホッとしました(笑)。
実は地球46億年の間には、気候は大変動をしていたようです。その一因として、「プレートテクトニクス」も大きく関わっていたことが、しだいに科学的に証明されてきているのだとか。次のような記述を読むと、地球の大変動がまるで本当にそうであったかのように思えるほどの凄い説得力を感じて、あまりのダイナミックさ、面白さに大興奮してしまいました(笑)。もちろん、これらも、まだ仮説の一つなのだとは思いますが……。
「海嶺は、単なる山の連なりではなく「火山」の連なりだ。海嶺からはつねに新たなプレートが作り出されているので、プレートテクトニクスが駆動する限り、二酸化炭素は排出され続ける。その量は、プレートテクトニクスの生成速度にほぼ比例する。白亜紀のプレートの生成速度が40~50%も速かったとすれば、二酸化炭素濃度もそれに見合うだけの量が排出されたとみるべきだ。」
このプレートテクトニクスは地球を温暖化させただけではなく、寒冷化もさせたようです。「第6章 大陸漂流が生み出した地球寒冷化」には次のような文章が。
「新生代の寒冷化にもプレートテクトニクスが深く関わっている可能性が高い。(中略)ゴンドワナ大陸は、南極大陸、南アメリカ大陸、マダガスカル、アフリカ大陸、インド亜大陸へと分離していく。この中で、新生代の寒冷化に深く関わっているとされるのが、インド亜大陸である。2億年前頃から分裂を開始したインド亜大陸は、年間5㎝のスピードで北上し、ユーラシア大陸へ近づいていった。そして約8000万年前に速度を3倍に増し、5000~4000万年前に、ユーラシア大陸へと衝突したのである。この衝突によって、地殻が隆起を始める。隆起は延々と続き、次第に山地が形成されて、ついには世界最高峰のエベレストなどを含む巨大なヒマラヤ-チベット山脈が形成されるに至る。」
この大陸漂流は、「風化」現象を通して、大気中の二酸化炭素濃度を減少させたようです(これにも諸説があるようですが……)。
さらに「第7章 気候変動のペースメーカー「ミランコビッチサイクル」を証明せよ」に入ると、今度は気象と天文学との関係の話に。太陽と地球との間の、1)地軸の傾き、2)離心率、3)歳差という3つの要素が、地球の高緯度の夏の日射量の変化を起こして、巨大な氷床を生み出し融解させる要因になるのだそうです。
「天文学的要素の変化による日射量変動という「ペースメーカー」は、地球の気候システムの中にある「大気-海洋圏」「雪氷圏」「陸域」などのサブシステムにさまざまな影響を及ぼす。こうした影響が、二酸化炭素濃度の変化や海洋循環の変動などのさらなる変化をもたらし、シグナルが増幅したり変調したりして、結果として、氷床量が変化しているという研究結果だった。」
地球の気象は、一見すると無秩序に激しく大変動しているように見えますが、その変化には一定のリズムや規則性があることが分かってきているそうです。
ところで最近は地球温暖化のせいなのか、「異常気象」が増えてきているような気がしますが、実は地球の気象は、「突然急激に変動」したことが過去に何度もあるのだとか!
「最終氷期の前後で都合25回も急激な気候変動が起き、さらにその移行期間は数年だったこともわかっている。」
……そんなことが本当に起こるなら、事前に何か準備しておくべきなのかもしれません。
まさに『地球46億年 気候大変動』を総合的に解説してくれる、本当に読み応えのある本でした。大きな気象変動に関する研究の経緯を知ることが出来ただけでなく、「ミランコビッチサイクル」、「熱塩循環」など、地球科学のキーワードを学ぶことも出来ます。
そして何よりも……科学好きには、すごく面白くて、ワクワクさせられる記事が満載☆
もちろん地球科学や気象はあまりにも巨大・複雑なので、この本に出てくる研究成果なども、「途中経過での紹介」というものが多く、「謎はすべて解けた」状態にはほど遠いことも分かりましたが……今後、私たち人類が地球上でたくましく生き残っていくためにも、AIやIoTなどの最新技術も活用して、この分野の研究をどんどん進めていくべきではないかと感じました。
この本の「エピローグ」にも次の記述がありました。
「地球温暖化がもはや避けられないものだとしたら、私たちはそれに対する備えをしなくてはならない。」
「人類が直面している喫緊の問題を解決するためにかつての地球気候の正確な復元と地球の気候システムについてのより一層の理解の深化が求められている。」
とても面白くて、ためになる本です。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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