『桃色トワイライト』2010/2/26
三浦 しをん (著)

三浦さんのヘタレな日常に、爆笑と共感がこみ上げてくる超ステキなエッセイです☆
本当に外れのほとんどない面白さ。このエッセイシリーズは、今まで読んだ中で最高に面白いと感じた歴史的傑作『ボートの三人男』なみに面白い☆ 『ボートの三人男』は百年以上も読み続けられているという、まさに時空を超越したユーモア・エッセイなのですが、このエッセイ集も今後もずーっと読み続けられるといいな……。
さて、今回も最初のエッセイ「事件がいっぱい」で、たちまち心を鷲掴みにされました。
「前から薄々気づいていたのだが、どうも私は「一つのことでいっぱいいっぱいになっちゃう」性質らしい。」という文章から始まるエッセイでは、好きな文楽を観に行って、自分が傘をどうしたかを忘れてしまったエピソードが語られるのですが……そういうこと、私もよくある! 私もよく反省する! のですが、逆に考えれば、それだけ「集中力が凄い」とも言えるのです(ドヤ顔)。なにしろ私、漫画を読み始めると、周囲の音がホントにまったく聞こえなくなるほど集中できるのです。だから誰かが呼びかけてきても、全然なんの反応もしないのでした(汗)。もっとも、なぜか「漫画」限定の集中力ではあるのですが(汗、汗)。
しかしこのエッセイ、これでいいのか? と心配になるほど本音が丸出しです。増殖を続ける漫画のために(!)引っ越しを決意した三浦さんが、イケメン不動産兄ちゃんを観察して抱く妄想とか、自分の洋服をゴミ袋に詰めてサンタクロースみたいに担いで実家と新居の間を往復するとか、バレエを観に行って「腐女子」的感想を抱くとか……面白すぎで泣けてきます。劇場でレニングラード国立バレエ(!)の『白鳥の湖』を観て、「息子が鳥と蛾(?)にだまされたぐらいで失神しているような女が王妃では、この国の先行きは暗い。王子もどこが魅力だかわからないぼんくらだし」という評価を下して寝てしまう若い女性がいるなんて……。『白鳥の湖』では音楽と踊りの美しさにばかり心を奪われていたけど、そういうストーリーだったんだ……凡人だなあ、私って(反省)。
また「あたたかく見守りたい」というタイトルのエッセイでは、メイド服や猫耳姿の女性の店員さんがコーヒーを運んでくれる「コスプレ喫茶」の話から、それの男性版の「物陰カフェ」の妄想に発展するのですが、この「物陰カフェ」は、「中央で働くイケメンの男性店員をちらちら観察しながらコーヒーが飲める」というもの(笑)。コーヒーとかはセルフサービスでもいいそうですが……その場合、男性店員は何をすればいいのやら(苦笑)。
この妄想から、私はその発展形を思いつきました。「物陰カフェ」は、スポーツジムに作ればいいのです。スポーツジムやプールには、運動している人を眺めながらコーヒーが飲める場所があることがありますが、そこを利用するのです。具体的には、ジムが空いている時間帯に近くの大学の運動部に無料開放します。ただし「男性限定」「女性限定」時間を設定して。イケメンや美女大学生が都合よく来てくれるかどうかは分かりませんが、少なくとも数人はいるでしょう。若いってだけでも美しいですし。「箱根駅伝参加者限定」時間があってもいいかも、若い男性ばかりだし……あれ? 三浦さんが『風が強く吹いている』を書いたのって、もしかして腐女子的な興味から……いやいや、まさか、そんなことは……。
それにしても……三浦さんみたいな友人がいたら本当に楽しいでしょうね☆ 三浦さんの友人もすごく個性的で魅力的です。例えば友人の腹ちゃん(仮名)は、こんなことを言うのです。
「しをんちゃん用のおみやげに、ドイツワインを買ったんだけど、重いから持ってこなかった。私が飲んどくね」
……実際に友人にこんなことを言われたら……ちょっと複雑な思いがしそうだけど、こういう人、嫌いになれないだろうなー。気楽につきあえそうだし(笑)。
とにかく面白い爆笑エッセイ集です。肩の力が抜けること間違いなし。ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
すごく、続編を読みたくなるエッセイ集ですが……安心してください、続編もあります(笑)。このエッセイ集は、『夢のような幸福』、『乙女なげやり』、『桃色トワイライト』、『悶絶スパイラル』の四冊がシリーズになっていて、文庫本の表紙の絵の人数で何冊目かが分かるという粋な仕掛けになっています。
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