『森田療法で治す「不安症・強迫症」: 正しい理解と乗り越え方 (心のお医者さんに聞いてみよう)』2022/6/16
中村敬 (監修)

 あって当り前なのに、不安や恐怖をとり除こうとしていませんか。「そのまんまでいい」と自分を認め、活かすことで、自己治癒力が高まり、生きていく力がついてくる「不安症・強迫症」の治療法、森田療法を分かりやすく教えてくれる本です。
 本書の冒頭には、次のように書いてありました。
「多くの心の病気の根底には不安や恐怖があります。
 不安症や脅迫症の患者さんも、不安や恐怖を契機として悪循環を報じ、症状が悪化しています。なんらかの不安によって生活が損なわれている人に、森田療法は有効な治療法です。不安や恐怖を排除しようとするのではなく、自然な感情だと認めることで自己治癒力が高まるという考えがベースとなっています。」
 森田療法は、次のように少し神経質な人のための治療法です。
「神経質な人は、その性格傾向ゆえに不安や恐怖を増幅しがちです。多くの人は不安や恐怖を感じるとその感情を「あってはならない」ととらえ、自分でどうにかしようとします。すると注意がますます不安や恐怖に引きつけられて注意のとらわれが起こり、違和感が増して悪循環を生んでしまうのです。」
 そんな森田療法の治療の基本は、「自ら治す」ことにあるので、次のような人には向いていないそうです。
(森田療法が適応しない病気に共通する7つの特徴)
1)健康な自我機能がない(自分を他者と区別できない)
2)知的理解がない
3)自己内省できない
4)自己を客観視できない
5)生活を吟味できない
6)病前の適応レベルが著しく低い(病前から現実社会にまったく適応できていない)
7)治療への意欲がない
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 森田療法が効果的に働くのは「神経質性格ゆえに神経症に悩む人」で、その治療の基本ステップは次の通りです。
1)不安や症状をそのままにする(排除しようとする「はからい」をやめて、あるがままに置く)※はからい=不安を何とかしようとコントロールする(したがる)こと。
2)欲望を認め、行動し続ける(さまざまなことへ関心を広げていく)
3)自己を現実に活かしていく

 自己治癒を中心としているという意味では、森田療法は、「あるがまま」を目指すマインドフルネスと類似していますが、森田療法には「あるがまま」を目標化しないという特徴があります。「あるがまま」といいつつも、それを目指せば自ずとそこに焦点が絞られ、かえって「あるがまま」から遠ざかる可能性がある、と森田療法では考えているからです。……森田療法は、「あるがまま」を目指すのではなく、「そのまま受け入れる」という感じなのだと思います。
 そして「入院」による森田療法の流れ(概要)は次の通りだそうです。
1)臥褥期(約7日間)薄暗い部屋でひたすら横になって過ごし、心身の疲れをとる
2)軽作業期(5~7日間)退屈になってきたら軽作業を始める
3)作業期(1~2か月)他の患者と協力し掃除など屋内外の作業に取り組む
4)社会復帰期(1~4週間)外出や外泊して退院、社会復帰への準備を始める
 ……この他、「通院」による森田療法も解説されていました。
 さらにPart3には、「7つの問いで人生が動き始める森田療法のセルフレッスン」があり、その概要は次の通りです
1)いまなにに悩み、治ったら、どんな毎日を送りたい?(不安の自覚が森田療法の第一歩)
2)症状が出ていたとき、注意はどこに向き、なにを考えていた?(自分が行っている「はからい」を知る)
3)不安の裏で本当はなにを望んでいる?(自分の真の望み)
4)自分の願いはどんな行動に結びつく?(欲望を知る)
5)症状が現れた時の気持ちは? どうなっていった?(感情とその行方を観察する)
6)気分は気分として行動できている?(不安のまま、少しだけでいいからやり始めてみる)
7)こうあるべきという考えにふたたびおちいっていない?(他者のふるまいに苛立つときには、「こうあるべき」にとらわれているのかも)
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「森田療法の基本は、患者さんの不安に対する姿勢や行動を変化させることであり、原動力となるのはあくまで本人のとり組みです。」だそうです。
「不安症・強迫症」を治す「不安症・強迫症」を分かりやすく教えてくれる本でした。
 実は私自身もかつては不安症・強迫神経症気味だったときがあり、その頃、たまたま友人に教えられて森田療法を知ったことで、次第に「不安を抱くのは人間として普通のこと」、「不安な自分のまま、自分で出来ることを少しずつでもやっていこう」と思えるようになれて、心が軽くなりました(実際に治療を受けたわけではなく、本でその療法を知っただけでしたが、その考え方を知るだけで、心が軽くなっていきました)。
 現在、不安症・強迫症で悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。心が軽くなるためのヒントを得られるかもしれません。
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