『問題解決ができる! 武器としてのデータ活用術 高校生・大学生・ビジネスパーソンのためのサバイバルスキル』2019/10/15
柏木 吉基 (著)
「データ活用のプロセス」を見直すことで、問題解決につながるデータ活用の方法を教えてくれる本です。
「データ活用の方法」を教えてくれる本と言うと、標準偏差とか散布図とか回帰分析とか、統計学の手法を教えてくれる本を連想すると思いますが、この本は、データ分析を行う時の「心構え」が中心で、統計学の手法以前の、「データを活用して課題を解決するためにはデータとどう付き合うべきか」という「データリテラシー」を教えてくれる本なのです。
データを正しく活用するためには、「あなたは何を知りたいのか。それを知って何をしたいのか。そのためには、どんなデータ(指標)が必要なのか」を考えることが、とにもかくにもまず必要なのだそうです。
そして「よくある問題点」には、次のようなものがあるのだとか。
1)データを適切に分析すると、課題や目的、結論を提示してくれると思っている(これらは本来分析者自身が思考すべきものである。)
2)目の前のデータを適切に加工すると、何か有用なものが見えてくると思っている。何も見えてこないのは、分析方法の問題と思っている。
……確かに。手に入りやすいデータを使って、いろんな角度から統計分析をしていると、いつの間にか何かが見えてくる……そんな幻想を抱きがちかも(汗)。
この本で教えてもらえる「データ活用のプロセス」は、次の通りです。
A:(表面的な現象)
→B:目的・問題定義(目的・問題を定義する)
→C:目的・問題定義(指標を特定する)
→D:現状把握・評価(現状を把握する)
→E:現状把握・評価(評価をする)
→F:要因(要因を特定する)
→G:方策(方策を考える))
*
重要なのは、統計分析の手法を使った「作業」ではなく、まず、目的や問題解決のためには、どのようなデータを分析すべきかを「考える」こと、そして、分析された結果を評価し要因を特定して方策を「考える」ことなのです。
これらの「データ活用」では、「絶対的な正解を出す」ことが重要なのではありません。むしろ「絶対的な正解などない」のだとか。
「絶対的な正解など存在しない中で、いかに自分が考えることをロジカルに客観的に相手に伝え、理解・納得してもらうか。自ら結論に至るストーリーを構築できるスキルが、今とこれからに重要であることは、言うまでもありません。」
この本では、データ活用のプロセスに沿って、「人口問題を扱った例」、「顧客満足度を扱った例」、「労働時間・残業時間を扱った例」など、著者のワークショップでの事例が多数紹介されています。とても参考になったのですが、残念なことに「ダメ出し事例」が多いわりに、「良い事例」は少なかったように思います。「絶対的な正解はない」ので、「良い事例」は出しにくいのかもしれませんが、「ダメ出し事例」について、こんな風にやると、もっと「現実的に役に立つようになるよ」と改善案もつけてくれると良かったのに、と感じてしまいました。「ダメ出し」ばかりを読んでいると、だんだん気持ちが萎縮してきて、「データ活用」って本当に難しいんだなーと暗い気持ちにばかり陥ってしまうので……。
えーと(気を取り直して)、データ分析をするときに一番大事なことは、「どうすれば役に立つ方策につながるか」を常に考えて要因を特定していくなど、「自分の頭で考える」ことだということは確かだと思います。
「計算や分析をして出てくるアウトプットは「結果」であり、その結果が目的に対して何を意味しているのかを説明するのが「結論」です。」
……大事なのは、「結論」ですよね。
柏木さんの「データ活用リテラシーとは、「そこにあるデータから何かを読みだす力」ではなく、この「自分で正解を考え、データを武器に合理的に論じられる力」そのものだと思います。」という言葉、心に刻みたいと思います。みなさんもぜひ、読んでみてください。
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