『あおいにわ (とびだすぶたいしかけえほん)』2017/10/31
エレナ セレナ (著), Elena Selena (原著), みた かよこ (翻訳)

繊細な切り絵を重ねて、神秘的な夜の庭を箱型の舞台しかけで表現している絵本です。「飛び出す」絵本ですが、しかけが箱型の舞台に収まっているので、むしろ「奥行」が感じられるしかけになっています。
箱型の舞台には、何層かに重ねられた繊細な切り絵で夜の庭の情景が描かれています。紺から青の濃淡に小さなアクセントの赤と黄という少ない色数で描かれた夜の庭は、すごく静かで、しーんとした気配、かすかに鳴く虫の声、鳥の羽ばたき、そして静かに土を踏む足音さえ響いてきそうです……実際には音は鳴らないのですが、繊細な切り絵の情景に、「あしおとが きこえてきます。なんでしょう?」のような短い詩のような文章が添えてあるので、本の中の青い夜の庭に、微かな音が聞こえているような感じがするのです。
「飛び出す絵本」ですが、静かな美しい青い夜の庭を描いているので、大人向けの絵本だと思います。切り絵がページに落とす影絵も素敵で、美術作品のようです。
なかでも一番感心させられたのは、3~4ページ目の「くらやみに じっと めを こらすと、だんだん みえてきます。」という闇夜の向こうに微かに見える庭の表現。全体的に雨のような斜めの切り目が入った黒い影絵の向こうに、青い庭のイラストがちらちら見えるという切り絵で、この情景が巧みに表現されています。このページは切り絵としては一番地味なのですが、アイデアが素晴らしいと思いました。
静かな青い夜の庭……最後のページの庭木の向こうみえる家の明かりに、なんだかほのぼの癒される「静かな詩」のような絵本でした。

・表紙&裏表紙:BLUE GARDENという文字と模様がくり抜かれて、裏表紙の青い庭のイラストが見えています。
・1~2ページ目:夜の風景(箱型舞台しかけ)
・3~4ページ目:暗闇にちらちら見える夜の庭(箱型舞台しかけ)
・5~6ページ目:月明かりの下の草むらに小さな虫(箱型舞台しかけ)
・7~8ページ目:夜の樹々の間を飛ぶ鳥(箱型舞台しかけ)
・9~10ページ目:暗闇にひっそり浮かぶ小さい赤い花(箱型舞台しかけ)このページだけ箱型舞台の上まで葉っぱの一部が飛び出していて、赤い花をつけた植物の生命力が感じられます。
・11~12ページ目:ランタンで照らす夜の庭で見つけた赤い犬(箱型舞台しかけ)
・13~14ページ目:夜の庭越しに見える青い家(箱型舞台しかけ)