『1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始める「タバタトレーニング」』2022/9/15
田畑 泉 (著)
世界中で人気の「高強度、短時間、間欠的」のシンプルなタバタトレーニング。アスリートから高齢者まで、それぞれに合った「高強度、短時間、間欠的」な運動であれば、体力をつけパフォーマンスを出すことができる理由について、徹底解説してくれる「科学的トレーニング」本で、主な内容は次の通りです。
第1章 誰でもすぐできる! 世界が認める、タバタトレーニングとは
第2章 身体とトレーニングの科学
第3章 科学的視点で組み立てるトレーニング
第4章 分子生物学的タバタトレーニング
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「はじめに」では、タバタトレーニングが次のように説明されていました。
「タバタトレーニングは、10秒の休息を挟みながら20秒の高強度・短時間運動を繰り返す「高強度・短時間・間欠的トレーニング」です。原則として疲労困憊に至る高強度の運動を行い、休息を入れても合計4分間という短時間でできる、という特徴があります。そのため、スポーツ競技者が限られたトレーニング時間内に効率よく行うのに適しているのはもちろん、運動が苦手な人や運動が長続きしない人も含めた多くの一般の人が、日常的に取り入れて健康増進に役立てるのにも適していると思います。」
たった4分でいいとは! 時間のない人の運動トレーニングに最適では? と思ってしまいましたが……実は次のような理由で、全体で30分ぐらい必要なのでした。
「タバタトレーニングは、短時間とはいえ、強度が高いトレーニングなので、身体の準備をしっかり整えてから行わないとケガの原因となります。また、トレーニングを終えると疲労困憊に陥りますので、その後のケアもきちんと行うことが大切です。そのため、トレーニング前後にウォーミングアップとクーリングダウンを必ず行うようにしてください。」
……ということで、ウォーミングアップ10分+タバタトレーニング4分+クーリングダウン10分の合計約30分です。それでもアスリートの方なら、他のトレーニングのためにウォーミングアップやクーリングダウンを行っているでしょうから、追加時間としては4分だけなのかもしれません。
そのトレーニングの内容(方法)についても、タバタトレーニングとしては次の9種類が、ウォーミングアップとクールダウンも含めて、イラストで紹介されていました。
・スクワット&ジャンプ
・ジャンピングジャック&シザーズ
・その場かけ足
・サイドステップ&もも上げその場かけ足
・スケーターズランジ
・ギャロップ&フロアタッチ
・バービージャンプ
・スクワット&フロントキック
・マウンテンクライマー
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この本一冊で、タバタトレーニングがなぜ効果的なのかについての科学的解説から、実践法までを総合的に知ることが出来ました。もっとも本書はエクササイズ本というよりは運動科学の本なので、ほとんどは文章(一部イラストあり)による解説で占められています(本書はブルーバックスなのです)。
タバタトレーニングについて、次のようなことを知ることが出来ました(ごく一部を抜粋紹介します)。
・「20秒運動+10秒休息」を繰り返す運動は、有酸素性および無酸素性エネルギー供給機構のどちらにも最大の負荷をかけるトレーニングであることが明らかになった。
・「20秒運動+10秒休息」を6~8回繰り返す運動を週2回
・タバタトレーニングでいう高強度は、「最大酸素摂取量の170%の強度(休息を入れずに続けて運動した場合、50秒程度で疲労困憊に至る強度)」に当たる。
・ジョギングをする際、走り始めるときには無酸素性エネルギーを、ほぼ同じスピードで走り続けているときには有酸素性エネルギーを、誰かを追い抜こうとしてスピードを上げるときには無酸素性エネルギーを使う。
・(タバタトレーニングでは、)有酸素性エンジンを100%使い切ったことで、体はそのことに反応して心臓や筋肉に働きかけ、エンジンをもっと強くしようとする、つまり持久力などの向上につながる。
・(タバタトレーニングは、)有酸素性および無酸素性エネルギー供給機構に最大の負荷をかけ、その結果、最大酸素摂取量および最大酸素借を最大に増加させることができる。
・最大酸素摂取量は競技力に関係する体力であると同時に、健康に関連する体力でもある。スポーツ選手の場合、最大酸素摂取量は高ければ高いほど、競技力が向上する。
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この他、遅筋線維・速筋線維とか、酸素摂取量とか、グリコーゲンとか、血糖値とか、乳酸とか、ミトコンドリアとか……健康に関する科学的な知識を、たくさん知ることが出来ました。
また「第3章 科学的視点で組み立てるトレーニング」では、タバタトレーニングだけでなく、トレーニング全般についても学ぶことができます。
例えば、「トレーニングの原則」には、次のものがあるそうです。(ここでは項目のみ紹介しますが、本書ではもっと詳しく説明されています。
・全面性の原則:健康に関係の深い器官・臓器をまんべんなく向上させ、バランスのとれた身体を作るような身体活動・トレーニングが必要
・意識性の原則:目的を明確にし、自覚を持ってトレーニングする(トレーニング日記を書くなど)
・漸進性の原則:運動強度などの運動負荷を徐々に高めていく必要がある
・反復性の原則:運動を規則的に一定の期間繰り返し行う(体力向上のためには、少なくも週3回)
そして食事のことも……
「アスリートや本格的にスポーツに取り組む人はもちろん、健康のために運動している人は誰でも、健康的で平均的な日本人を対象とした「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)を基に、食生活を見直し、適切な食事を摂取するといいでしょう。」
……「タバタトレーニング」について科学的な根拠も含めて、総合的にみっちり解説してくれる科学的トレーニング本でした。短時間とはいえ、かなりの高強度の運動のようですが、持久力や体力を向上させたい方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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