『難しいことはわかりませんが、日本の未来が明るくなるニュースを教えてください 地学・資源・エネルギーのすごい話』2023/3/30
ひつじさん (著)
ニュースを見ると日本の暗い話題が多いけれど、実際には、日本の未来が明るくなるような話題もたくさんある……そうした話題の中から「地学」「資源」「エネルギー」の3つの分野に分けて紹介してくれる本です。
例えば「Chapter1 日本の国土を拡大する島「西之島」の話」。元々は海面上の面積が東京ドーム2個分にも満たないほどだった島(西之島)が、1973年と2013年の2回の噴火で東京ドーム85個分の大きさにまで成長しているそうです。これだけでも、なんだかわくわくさせられますが、この島は、次のようなとても珍しい特徴があるので、地学的にも生物学的にも注目されているのです。
・西之島は「大陸の始まり」。大陸は「安山岩」から、海洋は「玄武岩」から形成されているが、西之島は海洋島なのに、噴出した溶岩に大陸の元である安山岩が含まれていることが判明した。
・西之島は本州から850キロも離れ、他の島からも離れているので、生物の影響が届きにくく、「地球が一から誕生した様子」を観察できる(生物がどうやって島に到達するか、など)。
……この本では、西之島が変化していく様子を、多くのカラー写真で眺めることもできます☆
この西之島の話はとても有名なので、TVの科学番組などで何度も見たことがありましたが、次の「硫黄島」のことは知らなかったので、日本には、他にも拡大を続けている島があることに驚いてしまいました。
「Chapter2 世界最速で国土を拡大する「硫黄島」の話」によると、硫黄島は10年で10m(1年に1m)も隆起しているそうです! これも写真でその変遷を見ることができますが、本当に凄い変化です……。
そして何といっても驚かされたのが、日本は小さくなんかない! という事実。「Chapter4 日本は世界6位の海洋大国。さらに広がる海の話」によると……
「(前略)実際には国の面積順位では世界196カ国中61位ですし、ヨーロッパの大国ドイツより大きな面積を誇ります。」
……えええ! なんか勝手に、ドイツよりずっと小さいんだろうと勘違いしてしまっていました。実際には、日本はドイツより大きかったんだ……。しかもなんと「排他的経済水域はインドの約1.4倍」もあるそうで、堂々たる「海洋大国」だったんですね! しかもさらに……
「2012年、日本政府が申請した大陸棚の延長が認められ、日本の海洋権益がさらに大きくなりました。」
……ということで、四国海盆海域・沖大東海嶺南方海域・南硫黄島海域・小笠原海台海域の四つが認められたようです。
この章を読んで、「日本は小さい国」というのが思い込みに過ぎないことを知り、本当に目からウロコでした☆ 日本は国土が小さくないどころか、「大きな海洋国家」だったんだ……。
そして「Chapter5 沖ノ鳥島が陸地化する!「サンゴ礁プロジェクト」の話」では……
「地球温暖化の進行により、21世紀中には海面は最大82cm上昇するとされています。そのため、満潮時には海面上に十数cmしか顔を出していない沖ノ鳥島はこのまま何もしなければ水没してしまいます。沖ノ鳥島が水没した場合の損失は計り知れません。
沖ノ鳥島はたった1島で40万km2の排他的経済水域を維持しています。これは日本の国土面積(33万7900 km2)よりも広い範囲です。」
……これはなんとしても、他の国からできるだけ「狡い!」と言われないやり方で島を守っていかなければならないですね! 日本はそのためにサンゴの成長を人工的に促す「サンゴ礁プロジェクト」を進めていて、今後、数十年で陸地化することが可能だそうです。
さらに「Chapter6 日本近海に眠る巨大油田「第7鉱区」の話」では、日本近海には、サウジアラビアの10倍の天然ガスがある巨大油田「第7鉱区」があることを知り、「Chapter7 日本どころか世界を変える「南鳥島レアアース泥」の話」では、日本最東端の南鳥島で、超高濃度レアアース泥(ジスプロシウム、テルビウム、ユウロピウム、イットリウムなど)が発見されたこと、さらに「Chapter7 深海に集中する黄金資源「海底熱水鉱床」の話」では、日本の近海には200カ所以上の海底熱水鉱床があり、経済価値は80兆円以上などなど、日本の海に多くの資源があることを知りました。
この他にも、「メタンハイドレート」とか、「地熱発電」とか、「宇宙太陽光発電」とか、未来の日本がエネルギーを完全に自給できるようになる可能性がある資源や技術について、たくさん知ることが出来ました。
まさにタイトル通りの『難しいことはわかりませんが、日本の未来が明るくなるニュースを教えてください 地学・資源・エネルギーのすごい話』でした! 日本の未来が明るくなる地学・資源・エネルギーに関する情報を、写真やイラストを多用して分かりやすく教えてくれます。著者のひつじさんは、YouTubeで地学・資源・エネルギーを中心とした明るいニュースを発信しているそうで、だからこんな科学的な話題を、とても面白く分かりやすく解説してくれるんですね。
気軽に雑誌を読むような感覚で、意外に知られていない日本の地学や資源のことを学べる本でした。とても楽しくてわくわくさせられるので、みなさんもぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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