『結果から原因を推理する 「超」入門 ベイズ統計 (ブルーバックス)』2016/12/14
石村 貞夫 (著)
「原因の確率を結果から予測する」ための統計が「ベイズ統計」です。そしてこれは、なんと推理小説で「ベイズ統計」を学べる本なのです(笑)。
最近注目を集めるようになってきた「ベイズ統計」は、パターン認識、情報検索、医学的診断など多くの分野に応用されるようになっています。でも統計学というのは、その名前を聞くだけで、そっと離れていきたくなる方も多いのではないでしょうか(汗)。この本は、そんな方のために、「原因の確率を結果から予測する」というベイズ統計の特徴を活かして(?)、ある殺人事件の犯人を、「ベイズ統計」で探り当てようとする物語で「ベイズ統計」が学べるようになっています。
物語は、ロンドン郊外の美しい田舎町で、ストン氏の変死体が発見されたところから始まります。この殺人事件を担当するベイズ警部は、周辺の聞き込み捜査から3人の容疑者を見つけ出しました。そしてベイズ警部は、統計学の教授などの協力を得て、容疑者のデータと一般的な毒殺殺人事件のデータを利用して、容疑者たちの毒殺の予測確率を計算したり、原因の確率を計算したりするのですが、その過程で、クロス集計表、オッズ比、独立性検定、決定木、回帰分析など、さまざまな統計的手法を学んでいくのです。
具体的なデータを使って、あまり統計の得意でないベイズ警部が苦労しながら学んでいくので、「ベイズ統計」初心者の方にも分かりやすいのではないかと思います。
でもなあ……統計学なんかで犯人を決められるのはイヤだなあ……一般的には女性は毒殺を使うことが多いからといって、確率で犯人を決めるなんて間違っているよなあ……と思いつつ読んでいましたが……最終的には、「やっぱり」というオチになります(笑)。
「ベイズ統計」は、過去のデータや一般的なデータをもとに、対象の予測確率や原因確率を計算するものなので、ある意味「ベテラン刑事のカン」のような経験則を計算で求めるものと言ってもいいのかもしれません。時限爆弾が仕掛けられたなどの緊急場面で、数百人の容疑者から「犯人の確率の高い人」に絞り込む必要がある時には使っても仕方ないかもしれませんが、変化が激しい状況や特殊な状況では、その「先入観」がかえって障害になってしまうこともあるのではないかと思います。犯人探しに「ベイズ統計」を使う時には、この点をよく考慮して欲しいと思います!
さて、本は二部構成になっていて、〈第I部 推理編〉では、この殺人事件の物語で「ベイズの定理」に関連する手法を学び、〈第II部 数学編〉では、「第6章 ベイズの定理を理解する」として「確率の定義」「ベイズの定理」「モンティ・ホール問題」を、サイコロなど、もっと分かりやすい事例を使って学べるようになっています。つまり〈第II部 数学編〉で、ざっと復習が出来るので、「ベイズの定理」の理解が進むと思います。
とても面白い趣向の統計学の本でした。「ベイズ統計」初心者の方にお勧めします。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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