『紙で作るリアル風景 紙技、その技術を紐解く』2020/10/30
太田隆司 (著)
紙だけで作られた半立体の世界「ペーパーアート」の魅力と秘密をたっぷり教えてくれる本で、内容は以下の通りです。
はじめに
ギャラリー
基本の工程と技法解説(紙、材料、道具)
PART1ペーパーアート 紙技リアル風景
PART2 <<東京TOKYO>>
PART3 <<鉄道REILEWAY>>
PART4 <<旅TRAVEL>>
PART5 <<昭和の情景>>
巻末作品ギャラリー
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この本の表紙の「原宿駅の風景」、よく見ると全部「紙」で再現されているんです。しかもこれ、2次元ではなく2.5次元というか、レリーフのような半立体を、何層も組み合わせて使っているのです。一つ一つの造形が、すごく細かく作り込まれていて、本当に凄いとしか言いようがありません。
こんな作品、どうやって作っているんだろう? とたちまち興味津々になってしまいますが、それに「基本の工程と技法解説(紙、材料、道具)」が答えてくれます(写真つきで説明されています)。
まず各種の紙(タントやマーメイド、レザック、里紙、ローマストーンなど9種類)。
そして材料(角材、スタイロホーム、スチレンペーパー、クリアシート、竹串と爪楊枝、地巻きワイヤー、糸などなど)。
さらに工具(各種カッターやはさみ、ペンチ、ピンセット、千枚通し、接着剤Gクリアー、スプレーのり、鉄定規、エアブラシなどなど)。
そして、いよいよ制作方法。表紙の作品(原宿駅)の事例を使って詳しく解説されています。
まず作品イメージ作り(写真撮影など)、次にラフスケッチ(人物、クルマすべて単体で描く。資料写真からトレーシングペーパーで線を拾いながら描き足しアレンジを加える。方眼紙で建物を資料写真から図案化する)、そして実際のメイキング(駅、人物、車、信号機、緑の木々などなど)……このメイキングが、すごく細かくて手抜きのない仕事で、よくここまで丁寧に作り込めるなあ、と本当に感心させられました。
表紙の写真では二次元の平面にも見えますが、実際には、木々、建物、その手前にクルマ、手前の歩道に電信柱や人々というように、全体では六層以上はある「半立体」になっているのです。映画の張りぼてみたいな感じです。
これらのクルマや人は単体で出来ているので、並び替えて情景を変えることもできます。
さらに、なんと光の演出で、「昼の風景」「夜景」「夕景」など、何通りもの表現が出来るのです。これは「光の演出」の項目で、やり方を教えてもらえます。後方の「空」は、作品の下に設置したプロジェクターから投影しているそうです。また、ライティングで「昼・夕・夜」の情景を演出しているのだとか。実際に表紙の原宿駅の風景を使って、昼と夜の変化を見ることが出来ますが、まったく違った風景に見えて、とても驚きました。全部のパーツが細かく半立体で作られているので、陰の出方がすごく自然なんです……。
細かいところを見れば見るほど、うわー、こんなとこまで……と感心させられる作品ですが……工作好きのわりに面倒くさがりでもある私としては……写真を画像ソフトで風景画風に加工したものを、縮小・拡大コピーしたものを利用して、レリーフ状に作った方が簡単じゃないのかなー、なんて思ってしまいました(汗)。別の作家の本ですが、『フォトモの街角』の方が、気楽に作れそう……。
細かい「紙技」が好きな方は、ぜひ眺めてみてください。きっと自分でも作りたくなってしまうことでしょう☆
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