『図解でよくわかる 土壌診断のきほん: 土の成り立ちから、診断の進め方、診断に基づく施肥事例まで (すぐわかるすごくわかる!)』2020/9/3
日本土壌協会 (監修)

 土の知識や、自分でできる簡易な土壌診断の方法、土壌診断の結果をどう活かせばよいかを教えてくれる本です。
 地学が好きだったので、「石」の本は読んだことがあるのですが、「土」の本はなかったな……この本を見かけた時、そんなことが頭に浮かんで、早速手に取ってみました。
 この本は、地学の本というよりは、農業の本でした……考えてみれば、「土」は農業の基本をなすものなので、当たり前のことですね(汗)。「土」について、いろんな知識を得ることができました。
 広辞苑第七版によると、「土壌」とは次のようなものだそうです。
「陸地の表面にあって、光・温度・降水など外囲の条件が整えば植物の生育を支えることができるもの。岩石の風化物や堆積物を母材として生成される。生態系の要をなし、植物を初めとする陸上生物を養うとともに、落葉や動物の遺体などを分解して元素の正常な生物地球科学的循環を司る。」
 なるほど。さすが広辞苑、明快で分かりやすいですね!

 よい作物を育てるためには、個々の圃場に合わせた土づくりが欠かせません。そして土づくりを始めるには、その圃場が今どんな状態にあるのかということを正確に知る必要があります。その手がかりになるのが土壌診断で、この本は「土」と「土壌診断」について、写真とイラストを活用しながら分かりやすく総合的に解説してくれるのです。
「第2章 作物生育と土壌の役割」には「根の成長に適した土壌」として次のことが書いてありました。
1)通気性・排水性・保水性がよく、やわらかいこと
2)肥料成分のバランスがよく、pHが適正であること
3)有用微生物の栄養となる有機物が豊富で、微生物相が多用であること
4)養分の欠乏・過剰、重金属汚染、過湿・過乾、土のかたさ、れき層の存在など生育を阻害する要因がないこと
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 そして「根の発達を助ける土づくりのために、最も必要となるのが土壌の団粒化である。(中略)土壌粒子は腐植などの有機物が粘土粒子を結合させ、そこにさらにほかの粒子が結びつくことで団粒化される。」そうです。この団粒化を促すためには、「堆肥する」とか「稲わらや緑肥作物などの粗大有機物をすき込む」などの方法があるのだとか。
 また「第8章 物理性診断の進め方」には、「土の色でわかる圃場の特性」として、次の説明がありました。
1)黒いほど有機物が多い(土がやわらかい、水はけ・水持ちがいい、肥もちがいい)
2)赤いほど鉄を多く含んでる(有機物が少ない、土が乾いている、水はけがいい)
3)白いほど有機物は少ない(鉄も少ない、水はけがいい、肥もちが悪い)
4)青いほど湿っている(有機物が少ない、水はけが悪い)
5)灰色は上記の中間的条件で見られる(有機物、鉄を含んでいる、水はけがやや悪い、肥もちはふつう)
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 作物が青々と良く育っている畑の土は、確かに「黒い」色をしていて、触ってみると湿り気があって、ほろほろした団粒になっていることが多いような気がします。
 この本では、他にも「土壌診断の具体的方法」や、土壌の改善の方法などを詳しく教えてくれます。「第10章 土壌診断に基づく施肥・土壌改良事例」では、実際の作物の問題と、その改善方法を事例で解説してくれるので、特に農業関係者には、とても参考になるのではないでしょうか。
 家庭菜園レベルではなく、プロ向けの内容だと思いますが、興味のある方はぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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