『ニッポン47都道府県正直観光案内』2019/1/22
宮田 珠己 (著)
思う存分旅行がしたい!と言ってサラリーマンをやめた宮田さんが、日本全国47都道府県のおすすめ観光スポットを正直に紹介してくれる本です。
観光ガイドブックではありますが……カラー写真や詳細地図があるわけではなく、都道府県ごとの観光エッセイ集という感じです。
これまでかなり個性的な場所を選んで観光エッセイを書いてきた宮田さんなので、その集大成的な本なのかなーと期待してしまいましたが、選ばれているのには意外に普通の観光地も多かったので驚きました(ちょっとガッカリかも?)。しかも1冊に全47都道府県が詰め込まれているので、1県あたりの情報が少なく、割とあっさりした観光エッセイ集でした。
それでも内容はなかなか面白かったです。各県とも、トビラのページは、その県のお勧めのモデルコースと、県の写真に描き込まれた宮田さんの印象(?)メモ。このメモがまた、なんか分かるような分からないような……何とも言えない苦笑がこみあげてくるものばかりです。
例えば、トップバッターとして登場してくるのが和歌山県。トビラには、「和歌山県をひとことで言い表すとすれば、それは「遠い」です。遠いも遠い、ありえないほど遠いです。関西に住んだことのない人間には理解しにくいかもしれませんが、本当に遠いのです。」なんてことが書いてあるのです!
…………まさしく。和歌山県には一度行ったことがありますが、本当に「遠い」という印象でした。なぜこんなに……ここは関西なの? という……。だから次の一文を読んで、ああ! だからだったんだ、と心の底から納得できました。
「疑うのであれば、紀勢本線に乗って紀伊半島を一周してみてください。どこまで行っても同じ景色が続き、無限時間のループに落ち込んだのかと思います。」
……紀勢本線の途中までしか乗らなくても、この感じを味わうことが出来ました(汗)。関西の広さを痛感させられましたが、和歌山の誇る観光スポット、熊野古道、アドベンチャーワールドにはまだ行っていないので、今後はぜひ行ってみたいと思っています。また那智勝浦のホテル浦島という名前も怪しげなホテルには、サンダーバード秘密基地感があることをこの本で知ったので、それにもがぜん興味がわきました(笑)。
また宮崎県の紹介で驚いたのが、「高千穂」が二つあるということ! 北の高千穂しか知らなかったのですが、南にも高千穂があったんですか。初心者向けのトラップだそうですが……この手の地理トラップには、たいがい、まんまと引っかかってきた私ですが、無知が幸いして引っかからずに済んで良かったと思いました(笑)。素晴らしい景観の高千穂峡では、大勢の人が貸しボートを楽しんでいるのを上から眺めただけでしたが、あの貸しボートでは「本格冒険感」が楽しめたのだとか! 機会があったら、ぜひ挑戦しようと思います。
ところで「冒険」というと、個人的には福岡県の平尾台の洞窟を思い出します。この本でも千仏鍾乳洞として紹介されていますが、まさに「洞窟の中に川が流れ、そこをバシャバシャ歩いて奥へ進める冒険気分たっぷりの洞窟」なのです! 事前知識もないまま行ったので、本当にビックリしました! インディ・ジョーンズの考古学教授になった気分でしたが、行くのは断然、夏がお勧めです。ハンパなく足が濡れます(もちろん川に入らずに、途中で引き返すことも出来ますが)。とても楽しかったです☆
ということで、個人的にはとても楽しめた『ニッポン47都道府県正直観光案内』でしたが、最初の頃の県の紹介がすごく面白かったのに対し、最後の方の県はだんだん尻すぼみ感があったように思えて、ちょっと残念でした(汗)。もっとも日本は狭いようで広いので、全都道府県に同じぐらいの情熱を注ぎこめるはずもないのでしょう。(なお、この本で紹介される都道府県の順番は、何順なのか分からない出鱈目な順番になっています)。
読んでいくうちに、この県では、ここをもう少し「推して」欲しかったなーと感じたことがいくつかありました。
例えば、鹿児島県では「桜島」。桜島に渡るフェリーに自動車で乗るときの気軽さには、すっかり驚かされました。ドライブ好きの方は、一度は乗ってみるべきだと思います。桜島もとても素敵でした。
また群馬県で推したいのが、群馬県庁の31階にある展望レストラン。なんと窓から、群馬の山並みと前橋の街を流れる利根川が、非現実的なジオラマ感がするほどの素晴らしい眺望で楽しめるのです。しかも、こんな絶景を、庶民にもお手軽な県庁レストラン価格で楽しめるという……まさに、「本当は教えたくない」レストランなのでした。
一方、断然抗議したくなったのが、岡山県の桃太郎情報。なぜ、ここには「愛知」の桃太郎ゆかりの神社情報があるだけで、岡山の三備(備前、備中、備後の三国)の一宮・吉備津神社情報がないのでしょうか。吉備津神社には、桃太郎のモデルとなった吉備津彦命が祀られている上、鳴釜神事という謎めいた儀式もあるのですよ!(注:鳴釜神事とは、下に退治した鬼の首が埋まっていると伝えられている竃で湯を沸かし、その音を聞き、願い事が叶うかどうかを占う神事)。吉備津神社に関しては、この本の中でも、一応、「吉備路の神社の一つ」として紹介はされていますが……桃太郎情報としては最重要なのではないでしょうか(プンプン)。
おそらくこの本を読むと、みなさんも「他にもっといい場所あるよ!」と言いたくなるのではないかと思います。「あとがき」で宮田さんも「他にもっと面白い場所があったら教えてください。」とおっしゃっているので、いい情報があったら、教えてあげてください。