『知らなきゃよかった 予測不能時代の新・情報術 (文春新書)』2018/8/20
池上 彰 (著), 佐藤 優 (著)
社会や政治に関することを分かりやすく語ってくれる池上彰さんと佐藤優さんの対談をまとめた本です。主な内容は次の通りです。
第1章 北朝鮮が勝ったあとの世界
(米朝会談が示す「拉致問題」の暗い先行き、カジノで読み解く日米朝)
第2章 劣化する日本人と日本社会
(「ハレンチ学園」と「暴力教室」、この人たちはまともな大人なのか?)
第3章 トランプは、どこへ行くのか
(拡大する貿易戦争、トランプを理解する鍵)
第4章 独裁化する世界
(独裁が世界のトレンド、鬱と排外主義の増加は人間の本性)
第5章 本当は恐ろしい「新しい常識」
(究極の殺人兵器をAIで作った国が勝つ、Jアラートで露呈した問題)
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最初の「第1章 北朝鮮が勝ったあとの世界」から、知らなかった(マスコミであまり報道されていない)話がいっぱい。例えば、日本にもカジノを作ろうという統合型リゾートが話題になったことがありますが、実はカジノは「賄賂を渡すのに便利な場所」なのだとか! 政治家や官僚に直接賄賂として現金を渡すと法律違反となって大きな問題になりますが、カジノの入場料としてチップを渡すと現金ではないので受け取りやすいそうです。しかもカジノで勝てば、「あなたの運がよかったから、あなたのものだ」ということになり、問題なく受け取れる。「一回、受け取れば、本当のお友達になれます(笑)」だそうです……うーん、恐ろしいですね……。
こんな感じで、「知らなかった(知らなきゃよかった)ような話」がどんどん語られていきます。すごく興味津々で読んでしまいました……が、個人的に、このような政治や社会の話は、誰の話であっても、完全に鵜呑みにはしないことにしています。だから知的評価が高い(と思われる)池上さんと佐藤さんの話であっても、「そういう視点もあるのか」、「そんな噂があるの(事実かどうかは不明だけど)」というスタンスで受け止めることにしました。
「第2章 劣化する日本人と日本社会」では、池上さんの「(前略)日本の大学で危機管理学部があるのはたった三校で、それが加計学園の倉敷芸術科学大学と千葉科学大学、そして日大なのです。」という話に驚かされました。加計学園も日大も、政治家との癒着や悪質タックル指示で大問題を起こしていますが……どうやら教える側の危機管理能力に問題があったようです(汗)。でも考え方によっては、まさにこの事件を「危機管理能力を高めるためのケーススタディ」として存分に活かせるのではないでしょうか。自分の事件ならば、遠慮なく事情の掘り下げも出来るでしょうし、本来はどうすべきだったのかを突き詰めて考えることで、今後の危機管理能力を高められるかもしれません。
さらに「第4章 独裁化する世界」では、佐藤さんの「(前略)国際情勢がきわめて流動的になって変化が激しくなったから、民主主義的な手続きによる時間のコストに政治が耐えられなくなっているということなんです。だから、独裁的な傾向がどんどん高まっている。」という話と、池上さんの「先進技術によってあらゆるもののスピードが上がっているのに、政治はそれに追いつけていない。結局、それに追いつけるのは、すぐれたリーダー、英明な指導者ということになって、独裁者が求められる。」という話に、ハッとさせられました。……確かに、そうなのかもしれません。「誰かがうまくやってくれる」と思って、能天気に政治に無関心でいると……いつの間にか「英明な(ふりをしている)独裁者」が社会を牛耳ってしまうのかも……気をつけたいですね……。
「自国ファースト」と「自国ファースト」がぶつかり合い、フェイクニュースと資料改竄がまかり通る現代の世界。知れば知るほど「知らなきゃよかった」と思えることもある……マスコミ報道とは違う視点で、社会を見つめ直すことを、教えてもらえたような気がしました。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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