『東京の名教会さんぽ』2017/12/23
鈴木 元彦 (著)
東京、神奈川、千葉、埼玉にある一度は訪れたい教会をエリア別に紹介してくれる本です。各教会とも、教会の歴史、建物の特徴を、写真(一部イラスト)を使って分かりやすく解説しています。写真は外観の写真が1枚と、内側の写真(祭壇などが見える代表的な場所と、特徴的な場所)1~数枚です。
また、冒頭に「教会のキホン」として、キリスト教の教派のながれ、教会建築の歴史、教会建築のココを見る、教会建築の偉人たちなどが説明されている(全6ページ)ので、教会の概要を学ぶことが出来ますし、巻末には「礼拝のキホン」として、教会見学のマナーなどが紹介されていて、その後ろには、教会のある地区の地図も掲載されています。
教会には素敵な西洋建築が多いので興味津々なのですが、信者でもない人間にとっては、ちょっと入りにくいですよね、「観光」とか「興味」だけで入るとバチがあたりそう(汗)。それで今まで入ったことのある教会は、本当に有名な観光地になっている数か所しかないのですが、そのうちの一か所がこの本の表紙にもなっている「カトリック 東京カテドラル関口教会(文京区)」。有名な建築家・丹下健三さんの設計で、外観も内装もすごく印象的な教会です。薄暗い十字架形の聖堂に、天井のスリットと四隅の垂直なスリットから光が差し込んで……本当に荘厳な雰囲気が漂っていました。目的が「観光」で本当に申し訳ないという感じがして、あまり周囲をじろじろ見ないまま外に出てしまったのですが……この本によると、ミケランジェロの有名なサン・ピエトロ大聖堂のピエタ像の原寸大レプリカがあったのだとか……これを見ないまま出てしまったようで、すごく残念でした。
その他、近くを通るたびに気になっていたお茶の水の「ニコライ堂(日本ハリストス正教会 東京復活大聖堂)・重要文化財」も、もちろん掲載されていました。拝観献金を支払って見学できるようです。内側の大きな写真もあって……中はこんな感じだったのですか。
そして一番驚いたのは、「カトリック 片瀬教会(神奈川県藤沢市)」。伝統的な和風意匠の聖堂ということで、外観は大きくて古風な日本のお屋敷にしか見えません(瓦屋根の下に十字架はありますが……)。内装も、格子天井とか障子窓とか、ほぼ和の様式で出来ています。これを創立したのは山本信次郎さんという方で、軍人として渡欧していたときに教皇から自宅に聖壇を置く特権があたえられ、帰国後に自宅の一室に仮聖堂を設けてミサを捧げたそうです。現在の教会は、その後の1939年に自宅の隣接地に建てられたものなのだとか。
また「日本福音ルーテル 本郷教会」は、将来を担う当時の若者たちに神の愛が必要だとして東京大学農学部のすぐ近くに建てられ、「日本基督教団 本郷中央教会」は、「インテリ層が唯物論や無神論を信奉する当時の風潮に対抗するため、帝国大学や第一高等学校(東京大学教養学部)など官立大学に近い本郷の地が選ばれた。」そうで、設置場所も戦略的に決められていたことが分かります。
こんな感じで、美しい教会の写真とともに、教会の歴史や特徴に関する解説もあって、とても興味深い本でした。住所や開門時間の他、地図もあるので、実際に訪れる時のガイドブックとしても活用できます。ただし「教会は、大切な祈りの場であり、観光施設ではない。訪れる時は、マナーをきちんと守ることが必要」ですし、事前連絡が必要な場所も多いようなので、教会を訪れる前にはHPなどで調べておいた方がいいようです。教会や西洋建築に興味がある方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。