『名医は虫歯を削らない 虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法』2016/11/8
小峰 一雄 (著)
人間が持つ「自然治癒力」を活かし、虫歯や歯周病の改善どころか、全身の健康寿命まで伸ばす画期的治療法を教えてくれる本です。
虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法だなんて、そんな嬉しいものが本当にあるの? と半信半疑で読み始めた本ですが、科学的な証拠や、実際にその治療を行っている歯科医院や実績もあるようで、すごく期待を感じさせてくれました。
その方法とは、「第5章 削らない! 痛くない! あっという間に治せる新時代の虫歯治療法」で紹介される「ドックベスト療法」。
「ドックベスト療法とは、アメリカで開発されたもので、ドックベストセメントという薬を使います。成分には、殺菌作用のある銅2%と鉄1%、そして複数のミネラルが含まれており、虫歯の穴に詰めることで、虫歯菌を死滅させ、歯の再石灰化を促してくれるのです。治療時間はわずか10分、フタで密閉して新たな菌の侵入を防げれば、徐々に痛みも消え、気づかないうちに虫歯も治っているという、まさに夢のような虫歯治療法です。」
「ドックベストセメントを虫歯の患部に塗布すると、虫歯菌に感染した部分を除菌しつつ、歯の主成分であるミネラル成分を補充し、再石灰化を促進します。これらの成分には、薬剤的要素はほとんどありませんので、まさに自然治癒力を活かした治療法と言っていいでしょう。」
なるほど……でも多分、虫歯の初期にだけ使える方法なんだろうなーと想像しながら読んでいたら、「ドックベスト療法の手順」に表示されていた治療対象の虫歯の写真に衝撃を受けました。なんと縦半分ぐらいが欠損しているほど重症の虫歯! 神経が露出しています。ところがそれにドックベストを充填して仮のセメントで封鎖し、約1年間経過を観察した後の写真をみたら、本当にきちんと歯が再生しているみたいなのです。……これは凄い! もっとも虫歯菌を除菌した後は「自然治癒」で再石灰化を促進するので、少なくとも治療中は、砂糖などの摂取を控えるシュガーコントロールを行うなど、食事には気をつけなければならないようですが。
残念ながら、このドックベスト療法を行っている歯科医院はまだあまり多くないようですが、本当にこんな素晴らしい歯科治療が出来るなら、もっともっと普及して欲しいと強く思いました(ちなみに巻末には、この治療を行っている歯科医院の一覧があります)。
さらに、この本には他にも「食後すぐには歯を磨かない」などの意外なススメがあって、驚かされました。実は、「食後すぐに歯を磨いてしまうと、(酸性の食べ物によって歯が柔らかくされたことで、)まだ柔らかいエナメル質が削り取られるばかりか、再石灰化も途中で妨げられることになります。」なのだとか! 歯磨きは、食後30分以上たってから行った方が良いようです。
また、虫歯や歯周病は、歯だけでなく身体に異常が発生していることのサインでもあるそうです。だから、今後は「医科歯科連携で、医療の質のさらなる向上を目指す」べきだと提唱していて、その意見にも、すごく納得させられました。
「日本の保険制度では「予防」は保険適用外ですが、これは非常に不可解な話です。」とも言っていますが、「虫歯を予防すると評価される外国(ヨーロッパ)」に対し、日本は「虫歯を削ると評価される」制度になっているのも問題だと感じました。この本の「あとがき」にあるように、「削らない虫歯治療は、全身の健康に寄与することができる」ならば、「削らない虫歯治療」を後押しする社会に変わっていくべきなのでしょう。
……とは言っても、歯科治療にはあまり詳しくないし、「ドックベスト療法」を受けた経験もないので、その善し悪しの判断は出来ません。が、少なくとも「砂糖をできるだけ摂らないようにする」、「ビタミンやミネラルを摂る」、「運動する」など、この本の中で推奨されている「歯に良い」生活習慣を始める(続ける)ようにしたいと痛感させられました。ぜひ読んでみてください☆