『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』2024/8/7
西崎 努 (著)
大手証券出身で金融機関の表と裏を知り尽くす西崎さんが、「大きく増やすより減らさず着実に運用したい」という60歳からの資産防衛術を教えてくれる本で、大手金融機関に勧められても「やってはいけない資産運用」についても具体的に教えてくれます。
「第2章 シニア世代がやってはいけない8つの資産運用」で紹介されるものの一部を紹介すると……
・EB債(他社株転換可能債):市場の急変で大損することが多い。
・新興国通貨建て債券:高い金利の裏に落とし穴がいっぱい
……などがあり、実際にこれらはトラブル相談が多いようです。
個人的に意外に思ったのは……
・テーマ型投資信託:「半導体」「AI」「DX」「ヘルスケア」など期待されるテーマのもの。
……今後の発展を期待したいテーマのものに投資したくなりますが、これらには関係ないものが混じっていたり、人気のテーマのものだけに、すでに最高値状態になっていたりするものが多いそうです。運用会社にその分野の専門知識を持つ人間がいないこともあるようで、「過去の実績がない投資信託は様子見するのが正解」なのだとか……なるほど。
また、次のような投資信託もあることにも驚かされました。
・毎月分配型投資信託:毎月分配金がもらえる投資信託。
……とても良い仕組みのもののように思いきや、実は、分配金の一部は、元本を取り崩して(=払ったお金が返ってきて)いるだけの「タコ足配当」になっているものが多い(結果的に当初の元本よりトータルでは減っていることも多い)ようです。……名前の良さに騙されてはいけませんね!
これらの「やってはいけない資産運用」は、どこが・どうしてダメなのかを具体的に詳しく教えてもらえるので、とても参考になりました。とにかく難しい仕組みのものには、シニア世代の方は手を出さないほうが良いようです。
またダメな話ばかりではなく、「第4章 シニア世代は投資とどう向き合えばいいのか?」では、「株式投資ではインデックス投資が無難」とか、「シニア世代の安定運用には個別銘柄の債券投資が適している」など、お勧めの投資方法も教えてもらえます(本書には詳しい解説があります)。
「金融商品を見分ける5つのポイント」は次の通りだそうです。
1)安全性:投資元本割れの可能性を考える(価格の変動幅を知る)
2)収益性:投資目的の目安(期待値)を考える
3)流動性:現金化して使うために必要な期間を考える
4)手数用:運用するために支払う手数料を調べる
5)実績:実際の値動きや類似商品とのパフォーマンスを比較する
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また「第5章 年齢とともにお金の断捨離を」では、年齢が進んだら株式の現金化を進めた方が良いという、次のようなアドバイスもありました。
「80歳を目処に、資産の管理をできるだけシンプルにしておくことが大切です。取引する金融機関など口座も減らし、資産運用も無理せず現金化して、いつでも使えるようにしておくことを心掛けるべきです。」
……これもとても大切なことですね! 老化とともに頭も身体も動かなくなっていくものですから……。
『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』……まさにタイトル通りの本で、とても参考になりました。「第3章 不要な金融商品・金融サービスの見分け方」では、見分け方のポイントなども教えてもらえます。シニア世代の方はもちろん、親がシニア世代の方や、シニア世代予備軍の方もぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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