『ミクロの世界のコケ図鑑』2024/6/19
左木山 祝一 (著)

 平地、山地、岩・コンクリート、木、水辺に生えるコケ全363種類を、美しく詳細な写真で解説してくれるコケ図鑑で、主な内容は次の通りです。
知っておきたいコケのこと
コケ用語辞典
1 章 平地の土の世界
2 章 山地の土の世界・
3 章 岩やコンクリート壁の世界
4 章 木の幹や朽木の世界
5 章 水辺の世界
コラム1 コケとほかの陸上植物、何が違う?
コラム2 神出鬼没なコケの驚くべき環境適応能力
コラム3 光を得るためのさまざまな知恵
コラム4 コケは有性生殖も無性生殖も行っている
平地の土の世界で楽しむテラリウム
山地の土の世界で楽しむテラリウム
岩やコンクリート壁の世界で楽しむテラリウム
木の幹の世界で楽しむテラリウム
水辺の世界で楽しむテラリウム

 北海道から屋久島まで、身近に見られるコケ・高山で見られるコケなど、日本全国のコケを、顕微鏡、ルーペで覗いているような美しく詳細な写真で見せてくれます(解説もあります)。
「知っておきたいコケのこと」によると、コケはかなり変わった増え方をしているようで……
「コケ植物は胞子で増える。胞子が発芽して私たちが見るコケになるのだが、この胞子は胞子体のサクという部位でつくられる。では、胞子体はどのようにしてつくられるのか。実は胞子体は卵細胞と精子が融合して作られる。卵細胞や精子をつくる体を配偶体と言うが、この配偶体が私たちのふつうに見るコケだ。(中略)
 コケ植物は、生殖用の単細胞である胞子をつくって無性生殖をする胞子体と、卵細胞や精子をつくって有性生殖を行う配偶体の2種類の“大人”の姿を持っている。(中略)
 コケ植物は、配偶体が有性生殖で胞子体をつくり、胞子体は無性生殖で配偶体をつくり……と、違う生殖方法で違う体を交互につくっている。このように有性世代と無性世代を交互に繰り返すことを世代交代という。(中略)
 しかしコケ植物は、もっと簡単な方法で仲間を増やすこともできる。多くのコケ植物は葉1枚など体の一部から新しい個体をつくることができる。」
 ……コケはいろんなやり方で仲間を増やしているんですね……。
 なお、「コケ植物または蘚苔類とは、蘚類、苔類、ツノゴケ類をまとめた名称だ。」そうです。
 このような基礎知識の後は、いよいよ「平地」「山地」などの地形ごとによく生息しているコケの図鑑が始まります。
「1 章 平地の土の世界」では、ギンゴケ(葉先の細胞は葉緑体がなく、この部分が光を乱反射して銀白色に見える)とかハイゴケ(別名カバー・モス)など色々なコケを見ることが出来ました。
「2 章 山地の土の世界」では、スギゴケ、とかオオカサゴケ、ヒノキゴケなど、テラリウムやコケ庭でよく見かけるコケたちのことを詳しく知ることが出来ました……が、いつも見ているのとはちょっと違う? この本では「胞子体」という長い茎が出ている状態のコケを見せてくれるので、テラリウムなどで見るものとは少し違って見えるのかもしれません。
 面白かったのが「3 章 岩やコンクリート壁の世界」。……確かに、コンクリート壁でも、ところどころにコケが生えていること、ありますよね。ここでは、エゾスナゴケ(夏の高温多湿にも強く、色も美しいので、屋上緑化によく用いられる)、ハマキゴケ(乾燥すると葉の側面のフチが巻き込み、さらに背面を外側にして縦にまるく巻く)などを見ることが出来ました。
 さらに各章の間には、コラムやテラリウム紹介があり、例えば「コラム1 コケとほかの陸上植物、何が違う?」では……
「(前略)コケには維管束組織がない。根・茎・葉があるように見えても維管束植物のそれとは働きがまったく異なる。(中略)
 維管束組織がないコケは、それぞれの細胞は単独で生きていかねばならず、水は植物全体で直接外界から得る必要がある。多層の細胞からなる厚い葉を持ったコケが見当たらないのも、多くの細胞が直接外界に接する面積を増やすためだろう。
 水を得やすいということは、水が逃げやすいということでもある。多くのコケは水が不足すると、葉が縮れたり巻いたりと休眠状態になり、水を得ると素早く活動を開始する特性を持つ。」
 ……など、勉強になる情報がたくさんありました。
 またテラリウムのページも、「平地」や「山地」などの世界を再現していて素敵なものばかり。「さびやすい金属フレーム部分は、シリコーンで防水する必要がある」とか、「木の幹に生えるコケは本来通気を好むものが多いため、カビに注意しつつ育てるのがコツ」とか、「オアシス(池)には本物の水を使わず、鏡で水面を表現。ミニチュアのスケールでは実際の水以上に水辺らしく見える」などの作成のコツも教えてもらえます。
『ミクロの世界のコケ図鑑』……コケについて総合的に紹介してくれる本格的な図鑑(フルカラー)です。コケや植物が好きな方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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