『Web連動ビジュアル星空大全』2023/11/2
早水 勉 (著)

 春夏秋冬と南天のすべての星座を網羅し、詳しく解説した『Web連動ビジュアル星空大全』です。星座、星の名前の発祥と由来、星座の神話と文化などを、大判の美しい写真やグラフィックで紹介してくれます。またWebでは、本文と関連した全星座の星雲・星団や重星などの天体観測の見どころを取り上げ、本文の全ての星座にQRコードをつけてWebと緊密に連動しているので、パソコン、スマホ両対応で楽しむことができます。本書の内容は次の通りです。
はじめに
春の星座
(おおぐま座、こぐま座、うしかい座、りょうけん座、やまねこ座、かに座、しし座、こじし座、おとめ座、かみのけ座、ろくぶんぎ座、ポンプ座、うみへび座、コップ座、からす座、ケンタウルス座、おおかみ座)
夏の星座
(てんびん座、りゅう座、かんむり座、ヘルクレス座、さそり座、いて座、へびつかい座、へび座、たて座、こと座、わし座、はくちょう座、こぎつね座、や座、いるか座、みなみのかんむり座)
秋の星座
(やぎ座、みずがめ座、みなみのうお座、つる座、ケフェウス座、カシオペヤ座、けんびきょう座、ペガスス座、こうま座、アンドロメダ座、うお座、くじら座、ちょうこくしつ座、ほうおう座、とかげ座、さんかく座、おひつじ座、ペルセウス座)
冬の星座
(エリダヌス座、おうし座、きりん座、ぎょしゃ座、オリオン座、うさぎ座、はと座、ろ座、ふたご座、いっかくじゅう座、おおいぬ座、ちょうこくぐ座、こいぬ座、旧アルゴ座(とも座、りゅうこつ座、らしんばん座、ほ座))
南天の星座
(さいだん座、みなみじゅうじ座、みなみのさんかく座、くじゃく座、インディアン座、きょしちょう座、みずへび座、かじき座、とびうお座、カメレオン座、はえ座、ふうちょう座、ぼうえんきょう座、コンパス座、レチクル座、とけい座、がか座、テーブルさん座、はちぶんぎ座、じょうぎ座)

「全星座を網羅した大ボリュームの天文書」だけあって、凄い数の星座について知ることができました。都会に住んでいると、肉眼ではほとんど見ることが出来ない星座ばかりですが……(笑)。
 なおこの本はWebで本書に関連する情報を見ることもできます。「本書連動Webサイトについて」には次のように書いてありました。
「本書では、本文中で記載した各星座の「天体観測の見どころ」をWebサイトにて記載しております。小望遠鏡向きの星雲星団、二重星を網羅した内容となっています。」
 本文右下にはQRコードありますし、ブラウザからアクセスする場合は、次のアドレスから見ることが出来るようです。
https://gihyo.jp/book/rd/stars
 フルカラー上質紙の分厚くて少し高価な本ですが、内容もとても充実しています。
 さてトップバッターは、「春の星座」の「おおぐま座」。北斗七星を含む星で構成されている春の代表的な星座です。まず「探し方、観察のポイント」が、次のように書いてありました。
「おおぐま座は天の北極に近く、夏や冬の宵空でも観察することができます。しかしながら、宵空に空高く昇り観察の好機となるのは、やはり春です。(中略)
 まず、北斗七星をさがしましょう。北斗七星は、6つの2等星とひとつの3等星からなるひしゃくの形をした星座です。(後略)」
 ……もちろん本書にはもっと詳しい説明があります。次のような情報も書いてありました。
「北斗七星は、夜空の大時計の役割をします。ある日のある時刻に見える北斗七星は、時間と共に北極星を中心として反時計回りに動いていきます。そのスピードは、1時間に15°で、北斗七星の回転角度を測ることで、時間の経過を知ることができます。この動きは地球の自転に因るものですから、24時間を経過した翌日の同じ時刻にはほぼ同じ位置に戻ってきます。この動きのことを日周運動と呼びます。」
 さらに星座の神話についても、ギリシア神話(カリストとアルカスの話)や、アイヌの神話などが、イラストや関連する芸術作品の写真を使って解説されています。……星座にまつわる神話は、ちょっとわけがわからない感じのものが多かったですが……神話って、そんなもんですよね(苦笑)。
 本書では、星座だけでなく天体現象についても、ところどころで解説されています。「おおぐま座」のページでも、「歳差現象」によって、ローマ時代の天の北極が、現在の位置とは、ずれていることが書いてありました。紀元前8世紀頃には、北斗七星とこぐま座の間にあった天の北極が、現在では、こぐま座のポラリスとほぼ同じ位置にあるようです。
 この「歳差現象」については、「夏の星座」の「りゅう座」のところで、次のように、さらに詳しく説明されていました。
「(前略)天の北極は少しずつ移動しています。またそれに伴って春分点・夏至点・秋分点・冬至点も移動していきます。この運動のことを「歳差」と呼びます。歳差は身近なところでも見ることができます。回転している独楽で、その回転軸の方向がゆっくり円を描いて首を振る運動が歳差で、はるかに大規模な地球でも同じことが起こっているのです。地球の歳差を引き起こしている原因は、主に月の重力によるものです。
 地球の自転軸は黄道面(=公転軌道面)に対して23.4°傾いて(黄道傾斜角ε)います。この角度を保ちながら自転軸の方向がゆっくりと方向を変えます。この歳差の描く円を歳差円といい、この円を一周するにはおよそ26,000年もかかります。」
 ……へー、そうだったんだ……。
 また「見つけやすい」ので大好きな「冬の星座」の「オリオン座」については、次のような気になる情報がありました。ちょっと長いですが、以下に紹介します。
「オリオン座α星ベテルギウスは、ほとんどが青白い恒星で構成されるオリオン座の中にあって、独特の赤い色でひときわ目を引きます。さそり座のアンタレスと共に赤色超巨星の代表です。(中略)
 ベテルギウスは、様々な研究から終末期の不安定な状態が報告されていることから「もうすぐ爆発する」といわれる恒星です。明るさも0.0等~1.3等の間で不規則に変光しています。近年の観測成果で、ベテルギウスの表面は温度分布が偏っており、光球の一部がコブのように突き出ていることも分かりました。とはいえ、ベテルギウスの場合は1,000万年程度の寿命があるとされており、その1%でも10万年です。「もうすぐ爆発」は、「10万年後にも爆発」とほとんど同じ意味と考えて下さい。専門の研究者によると、「100万年以内にほぼ確実に爆発するでしょう。」とのことです。
 もし、ベテルギウスが超新星爆発を起こした場合、半月くらいの明るさまで増光し一カ月程輝き続けると推測されています。」
 ……オリオン座の素敵な赤い星、ベテルギウスがなくなっちゃうなんて、あまりにも悲しいです。天の星に輝く星も、やっぱり「永遠」ではないんですね……(泣)。
 ええと……本書では最後に「南天の星座」も紹介されています。
「北半球に住む私たちにとって、南半球の星座は観察が難しく、緯度の関係で見られない星域も広く存在します。(中略)南十字星やマゼラン銀河などは、その代表的な天体です。」
 北半球では見られない南天の夜空の星も、写真などでじっくり眺めることが出来ます。
 全星座について、総合的にじっくり学ぶことが出来る『Web連動ビジュアル星空大全』で、とても読み応えがありました。みなさんも、ぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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