『植物園へようこそ (岩波科学ライブラリー 326)』2024/5/17
国立科学博物館筑波実験植物園 (著)

 世界の植物が大集合している植物園のとっておきの楽しみ方を、国立科学博物館筑波実験植物園が教えてくれる本です。
 植物園の機能別分類には、次のようなものがあるそうです。
1)研究所型
2)大学付属型
3)都市公園型
4)系統保存施設(絶滅危惧種をはじめ資源植物の保存)
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 1983年に開園した筑波実験植物園には、次の2つのエリアがあります。
1)北側の「世界の生態区」:世界の植生を人工的に再現
2)南側の「生命を支える多様区」:資源植物や生活に関わる植物
 ……例えば、「世界の生態区」では、いろんなサボテンを見ることが出来るそうです。
「(前略)植物園は、世界中の植物をその類縁の情報とあわせて見ることができ、植物の進化のおもしろさを簡単に楽しめる稀有な場所なのです。」
 またサトイモ科に注目して見るのも勉強になりそうです。「熱帯雨林室」では、サトイモ科の植物が陸上はもちろん、湿地や水中、さらには樹上にまで、多様な環境へと進出した様子を、生きた植物を通して観察できるのだとか。
 サバンナ温室などの温室では世界旅行を楽しむことが出来る他、屋外の生態区では、日本の野生植物が植栽されているようです。
 ここで面白いと思ったのが、「砂礫地植物の砂漠は、バックホーを利用して砂浜の天地返しをすることで除草している」こと。かなりダイナミックな除草方法ですね(笑)! 実は、砂ばかりでも、いったん草が根付くと、しだいに森林へ変わっていくので、このようにして定期的に「遷移」をリセットする作業が必要なのだとか。
 また興味深かったのが、「3 植物を集める」で、外国から植物の寄贈を受けたときの話。
「日本へ輸入する植物には、土壌が微量でも付着していてはいけません。」ということで、土壌をきれいに水洗いして落とす必要があるそうです。でも……植物には「菌根菌」が必要な植物もあるはずで……そういう植物はうまく育たないのかもしれませんね……。
 本書では、他にも植物園の多くの仕事を知ることも出来ました。そのごく一部を紹介すると……
・植物園に導入された植物は、そのデータとともに管理されていることが重要。導入して最初に行うことは、データベースへの登録
・植えてある植物の開花や結実などの「みごろ」の時期を調べておくのも、管理上重要
・栽培の第一歩は、それぞれの植物の生育環境を知り、それにあわせた環境を作ること
・バックヤードでは主に鉢植えで植物を栽培している
(鉢植えの利点)容易に移動できる、鉢の中の環境をリセットできる
(鉢植えの欠点)成長に合わせて植え替えが必要
・水やり(甘やかして水を頻繁にあげると根が育たない。観察しつつ適度にあげる)
・ミズゴケ、バーク(樹皮)、ヘゴ材、軽石、腐葉土などを土に混ぜて、よりよい土づくり
・どんどん育つ植物との戦い(剪定した枝や枯れた枝葉は腐葉土にして再利用。廃材もウッドチップなどの資材化して再利用)
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 科学技術における植物園の強みには、次のものがあるそうです。
1)さまざまな植物を生きた状態で保有している(色や香り、細胞内部の構造など多くの情報を得られる)
2)栽培ノウハウを蓄積できる
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 そして「じつは日本の植物は、その約4分の1が絶滅危惧種とされ、植物園が担う役割は極めて大きくなっています。」ということで、例えば筑波実験植物園では、絶滅危惧植物について、植物園内で長期的に安定した域外保全を確立し、元の自生地へ野生復帰させる保全プロジェクトも行っているそうです。
 また日本植物園協会という植物園のネットワーク化も行われていて、植物の交換や、複数の植物園で栽培することによる「絶滅危惧種枯死のリスク分散」などの取り組みもなされているようです。
 さらに……
「(前略)筑波実験植物園では、植物を観察しながら、関連するさまざまな社会問題や環境問題を学び、SDGsについて考える学習支援プログラムを制作しはじめました。」
 ……いろんな活動をしているんですね!
『植物園へようこそ』……国立科学博物館筑波実験植物園で行われている仕事を、具体的に詳しく知ることができる本で興味津々でした。一部の花は、フルカラー写真で見ることも出来ます。薄くてサイズも小さく気軽に読める本なので、植物好きの方はぜひ読んで(眺めて)みてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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