『弦楽器のしくみとメンテナンス 楽器の性能篇: あなたの常識をくつがえす【マイスターのQ&A】』2024/4/4
佐々木 朗 (著)
ヴァイオリン製作マイスターの佐々木さんが、弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の演奏者に向けて、「弦楽器の性能は、どう考えるべきでしょうか?」、「ヴァイオリンはどのような材料で作られているのですか?」などの楽器にまつわる73の疑問に、科学的に分かりやすく答えてくれる本です。なお、1999年初版以来のロングセラー『弦楽器のしくみとメンテナンス』を、タイトルと表紙デザインを変更して再登場。『弦楽器のしくみとメンテナンス 使いこなし篇』の前編だそうです。
ヴァイオリン族の楽器について総合的にいろんなことを知ることが出来て、とても勉強になりました。
「ヴァイオリンの寿命が長いわけ」には、次のように書いてありました(ごく一部の抜粋紹介です)。
1)材質の性能向上
「全ての製品は何らかの材料で作られています。そして普通は、その材料の性質は徐々に下がることはあっても上がることはありません。
それに対して、良質木材は乾燥による内部含水率の減少やセルロースの結晶化が原因で、強度はより上がるのです。そしてさらに質量は軽くなるために、音響特性は上がります。」
2)修理の利く材料
「(前略)木材の場合には、木材の材質自体にむらがあるために、修理をした部分が「特異な箇所」とならないのです。従って、後日その部分に力が掛かってしまうということはありません。(中略)木材に繊維が通っているので、それに沿って木材同士を接着することによって、接着した部分が全く見えなくなります。」
3)ニカワ
「また木材の場合には、ニカワを使って接着するのですが、このニカワが実に優れています。乾いて固まる過程において、じっくりと木材の繊維に染み込み、木材の接着面を引き寄せて密着させるのです。」
4)擦弦楽器であることからくるメリット
「(前略)弓によって強制的に板を連続振動させます。このために板は平板でなくても音量が出るのです。このために湾曲した独特の板が用いられます。(中略)
ヴァイオンが湾曲した板であることのメリットは、弦の張力に対して板が歪まないということなのです。」
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また「ヴァイオリンに使われている材料」によると……
1)表板:軽くて丈夫な木材。「松」
2)裏板、ネック:「楓(ボスニア地方に生息する楓材)」
3)指板:「黒檀」
……だそうです。
とても参考になったのが「裏板の役割」。次のように書いてありました。
「(前略)表板は魂柱を介して裏板の助けを借りて、新しいモード特性に変化するのです。裏板を土台、魂柱を支点として表板を強制振動させる感じです。これによってとても高い倍音成分を発することができます。
このためには、表板の土台である裏板はしっかりとしていなければなりません。従って、裏板には比重の大きな広葉樹(楓など)が利用されるのです。もしも裏板も表板と同じ松材で作ったのなら、表板の強制振動に対して裏板まで振動してしまいます。これでは土台の役割は果たせず、表板の振動を矯正できなくなってしまうのです。」
……そうだったんだ。表板と裏板が同じ板でないのは、同時に振動しないようにするためだったんですね!
また弓で一番大切なのは「強い」ことで、正しい弓の毛の張り方は「つぶれない程度に緩く」だそうです。そして弓の毛のメンテナンスは……
1)演奏中は毛に触らない
2)演奏後の松脂のふき取りは竿の部分のみ
3)演奏後の毛の緩め方は、毛が板状からほぐれる直前で緩めるのを止める
4)毛が切れたら、毛を慎重にほぐして根本から切る(他の毛には絶対に触らない)
5)松脂の量は、演奏に支障がない程度に、できるだけ少な目のほうが良い
6)毛替えは、毛の量が少なくなったときと、弓と弦の摩擦が小さくなったと感じた時に。
……というようなことが解説されていました(本文中では、もっと詳しい説明があります)。
この他にも「毛替えの時期の判断」とか、「駒の正しい位置と立て方」とか、「楽器の熱対策」とか、参考になることが、たくさんありました。なお楽器の湿度対策としては、「普段の演奏(週に1、2回以上弾く)」と、演奏後の乾拭きが大切なようです。
また楽器ケースの選び方では、チェロなどのハードケースで、タイヤのついているものは危険だという注意がありました。むしろすごい振動を楽器に与えがちなのだとか……うーん、確かにそうですね!
『弦楽器のしくみとメンテナンス 楽器の性能篇』……ヴァイオリン関係の本もけっこう読んでいると思っていたのですが、それでも知らなかったことがたくさん書いてあって、とても勉強になりました。イラストや写真はあまり多くありませんでしたが、文章がとても充実していて、詳しい解説に説得力を感じました。ヴァイオリンを演奏する方は、ぜひ読んでみてください☆
なお次のサイトもあるようです。
・佐々木ヴァイオリン製作工房ホームページ:https://www.sasakivn.com/index.html
・佐々木ヴァイオリン製作工房ブログ:https://sasakivn.com/blog/
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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