『弦楽器のしくみとメンテナンス 使いこなし篇: あなたの好奇心を刺激する【マイスターのQ&A】』2024/4/4
佐々木 朗 (著)

 ヴァイオリン製作マイスターの佐々木さんが、弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)の演奏者に向けて、「ニカワとはどのような物ですか?」、「駒の運動=魂柱の役割について教えてください」などの楽器にまつわる55の疑問に、科学的に分かりやすく答えてくれる本です。なお、2000年初版以来のロングセラー『弦楽器のしくみとメンテナンス 2』を、タイトルと表紙デザインを変更して再登場。『弦楽器のしくみとメンテナンス 楽器の性能篇』の後編で、「弦の張力データ」や「音階と周波数の比較表」も収録されています。
 最初のQAは「楽器の選び方の具体的なポイントを教えてください」で、その答えは……
「(前略)極論としては、良い楽器を探すためには「楽器の目利きになるのではなく、楽器店(技術者)の目利きになる」こと」だそうです(苦笑)。その理由は、「製作や修理といった実技のバックグラウンド無しの知識は、音色の面は別として、しょせん表面的なことでしかないからです。そして、その中途半端な知識を逆手に取られ、良い楽器を選んだつもりで、全くその逆ということがよくあるのです。」と書いてありました。……なるほど、すごく現実的なアドバイスですね。
 それでも一応「楽器の選び方のポイント」として、次のことも書いてありました(本文にはもっと詳しい説明があります)。
1)製作の精度:線と面がビシッと作られている
2)響板の厚みを大まかに知る(fの穴に定規を入れて厚みを調べる。約3ミリが望ましい)
3)魂柱の当たる位置の響板の歪みはないか?
4)ネックは下がってないか?
5)響板の割れ修理具合は大丈夫か?
 ……だそうです。
 そして初心者が楽器を買うときには、楽器よりもまず「弓を購入した方が良い」というアドバイスがありました。最初に腰のないフニャフニャな弓を購入してしまうと、練習しても上達が遅くなってしまうだけでなく、間違った技術がついてしまうかもしれないから……なるほど! 楽器はすごく高価ですが、弓ならば数万円でも実用上問題ないクオリティのものを購入できるので、これもすごく現実的に役に立つアドバイスですね! ちなみに弓の基本は「腰のある強い弓」。次に「バランス」「重さ」「製作精度」なのだとか。
 また本場ヨーロッパの楽器は、日本での演奏に向かないことがあるそうです。なぜならヨーロッパと比べて日本は湿度が高めで夏も暑いので、ヨーロッパの楽器だと、ニスやニカワに問題が出がちなのだとか。
 とても参考になったのが、「駒の運動=魂柱の役割」。駒は「弦の横振動を、縦振動に変換する装置」で、その変換全体の仕組みは……
1)弓によって、弦は横(正確には斜め)方向に振動する
2)駒は回転往復運動をする
3)弦の横振動は、縦方向に変換されて表板を振動させる
4)バスバーによって、駒の振動を表板全体に伝える
 ……となっているようです。ここでは「魂柱をずらした時の音の変化」と「柱と駒の間隔をずらした時の音の変化」も書いてありましたが……両方とも「最初に立っている位置が正しい」ので、動かさない方が良いようです。
 もう一つ参考になったのが、「弦の袋にある「Mittel」「Stark」「Weich」」などの表記について。これは弦の強さ(「Mittel」「Stark(強)」「Weich(柔)」)を示しているそうですが、「性能」としても「Mittel」が最も良いので、基本的にはこれが一番良いようです。
 また弓の毛替えは、半年に一回程度が最善だそうですが、もしも年一回しか出来ない場合は、梅雨時などの湿度の高い時に行うと良いのだとか(毛の伸びを考慮して)。
『弦楽器のしくみとメンテナンス 使いこなし篇』……ヴァイオリン関係の本もけっこう読んでいると思っていたのですが、それでも知らなかったことが書いてあって、とても勉強になりました。ここで紹介した以外にも、「ヴァイオリンにフレットがついていない理由」や「コンポジションの使い方」など、参考になることが多数あります。前編と同じく文章がとても充実していて、詳しい解説に説得力を感じました。ヴァイオリンを演奏する方は、ぜひ読んでみてください☆
 なお次のサイトもあるようです。
・佐々木ヴァイオリン製作工房ホームページ:https://www.sasakivn.com/index.html
・佐々木ヴァイオリン製作工房ブログ:https://sasakivn.com/blog/
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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