『人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』2024/6/12
レス・ジョンソン (著), 吉田 三知世 (翻訳)

 未来の「星間旅行」はどのようなものとなるのか? 光子ロケットや静電セイル、反物質駆動、ワープ航法など、NASAテクノロジストの物理学者のジョンソンさんが本気で考えた宇宙トラベルガイドで、主な内容は次の通りです。
序文
はじめに
第1章 宇宙はどんなところで、何があるのか?
第2章 宇宙探査の試みと課題
第3章 星間旅行の難しさと、それでも挑戦すべき理由
第4章 旅行するのは、ロボット? 人間? その両方?
第5章 ロケットで行く
第6章 光で行く
第7章 星間宇宙船の設計
第8章 科学についての無茶な憶測とSF
エピローグ
謝辞
図版一覧
略語一覧
用語解説
原注
参考文献
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「はじめに」によると、最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリは約4.2光年も離れていて、ボイジャーが正しい方向に進んでいたら到着まで約7万年かかると推定されているそうです。
「第3章 星間旅行の難しさと、それでも挑戦すべき理由」には、次のように書いてありました。
「(前略)私たちが本気で太陽以外の恒星まで旅したいなら、大きく考えなければならない。(越えるべき)大きな距離、(宇宙船の高速飛行のための)大きなエネルギー、(宇宙船の開発、製造、そしておそらく推進のための)大きなインフラ、(宇宙飛行士と地上の支持者たちが目標に専念すべき、人の一生よりはるかに長い)大きな時間尺度、(この種の事業に必要な)大きなコスト、そして(自分たちのことのみらならず、未来についても考える)大志が不可欠なのだから。」
 ……本書では、ロケットを高速化する方法もたくさん書いてありましたが、それでも到着までに何世代もかかるほどの時間が必要になるようです。
 そして「第4章 旅行するのは、ロボット? 人間? その両方?」には……
「人間(意識がはっきりした状態で旅をする)を太陽以外の恒星まで運ぶ宇宙船には、必ず備えているべき特性や、備えているのが望ましい特性がたくさんある。たとえば、地球と同じ重力、呼吸できる空気、飲料に適した水、生活・仕事・食事・仲間との付き合い・遊びのそれぞれに適した場所、さらに旅のあいだ乗組員が生き続けるために必要なすべてのシステムなどだ。これらの必要事項を総合すると、並外れた大きさの宇宙船を製造しなければならないことがわかる。」
 ……他の星への移住を成功させるためには、本当に「並外れた大きさの宇宙船」が必要なようです。なにしろ生物多様性を守るために、多くの研究が、1回の移住ミッションで移住する人間は1万人が妥当だとしているそうなので(!)1万人も生活できる宇宙船って……凄すぎる。
 もっとも、もう少し少なくする次のような方法も書いてありました。
「(前略)生物科学が進歩したおかげで、最近では、遺伝的多様性を向上させる方法がいくつか提案されている。たとえば、数千体の凍結した人間の胎児を貨物として搭載し、目的地に到着してから懐胎期間を再開して誕生させるという操作を何世代にもわたって繰り返して遺伝的多様性を高めるという方法などがある。」
 ……なるほど。でもこれ、胎児である必要はあるんでしょうか? もしかしたら未来にはDNAと人間を作る材料さえあれば、目的地で人間を製造するってことが出来るんじゃないかなーと思ってしまいました。多様性を守るため1万人以上のDNAと材料だけを搭載して、必要最小限の人数で移動し、目的地でも少人数ずつ製造していく……そのほうが現実的(?)なのではないでしょうか……。
 そんな妄想はともかく、この本は、「星間旅行」の実現方法について、さまざまな技術を解説してくれるので、とても興味津々でした。
 例えば太陽電池が使えるのは木星までなので、木星以遠へのミッションでは、放射性同位体熱電気転換器(RTG)と呼ばれるプルトニウム電池を使うと良いかもしれないなどの方法を、具体的に知ることができます。
 他にも、「星間探査機の推進法として最も有望視されているのは、スペース・ローンチ・システム(SLS)を使って、探査機を太陽近傍に向けて打ち上げ、太陽フライバイを行うことによって加速する方法」だとか、電力をビームとしてワイヤレスで送る方法とか、太陽帆とか、さまざまな方法が考え出されているようです。(さらに、電磁エネルギー、光子エネルギー、反物質ロケット、小型核爆弾なんていう方法もあるようでした)。
「第7章 星間宇宙船の設計」では、地球との通信の方法や、ナビゲーション方法なども具体的に解説されていました。
 そして最終章の「第8章 科学についての無茶な憶測とSF」では、「光より速く移動する」方法や「人工冬眠」など、SFで使われている技術への解説やコメントがあり、これも面白かったです。
『人類は宇宙のどこまで旅できるのか: これからの「遠い恒星への旅」の科学とテクノロジー』……まさにタイトル通りの内容の本で、とても面白くて勉強にもなる本でした。……宇宙(他の星)はやっぱり途方もなく遠いことを再確認(痛感)させられました……。宇宙や科学に興味がある方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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