『絵本で実践! アニマシオン: 子どもの力を引き出す26のプログラム』2024/1/26
木村 美幸 (著), 由美村嬉々 (その他)
読書を通して、対話する力・自ら考える力・自分を表現する力など、子どもの様々な力を引き出す「アニマシオン」という読書指導法を具体的に教えてくれる本で、主な内容は次の通りです。
プロローグ 本書の特徴と利用方法
序 「読書へのアニマシオン」を始める前に
初級
初級1 集中して聞く力を育む/初級2 視覚による記憶力を発達させる/
初級3 物語に夢中になり,集中力・想像力を高める,豊かにする/
初級4 知力を働かせ,注意力を高める/初級5 観察力を伸ばす/
初級6 注意力を引き出す/初級7 感受性を高める/
初級8 聞く力・表現力を高める/初級9 自分の言葉で表現する
中級
中級1 集中して見る力/中級2 表現力を高める,メッセージを掘り下げる/
中級3 耳で聞き,理解・表現する/中級4 注意力を喚起し,表現力を高める/
中級5 詩の音読,連帯感・仲間意識をもつ/中級6 絵を楽しみ,想像力を働かせる/
中級7 注意力・観察力を育てる/中級8 感情を引き出す,観察力を発達させる/
中級9 ストーリーの核心に入り込み,批判力を高める/
上級
上級1 問題を発見する,自分の意見が言える/上級2 論理的に主題を理解する/
上級3 論理的に構成する/上級4 批判力を引き出す/
上級5 想像力を発達させる(創造力を発揮する)/上級6 詩への興味/
上級7 詩を構成する力を!/上級8 詩的な表現方法に触れる/
エピローグ
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また次の10の絵本教室もあります。
絵本教室1 絵本とは何か
絵本教室2 絵本の構造と絵本の扱い方の基本
絵本教室3 読み聞かせのポイント
絵本教室4 絵本との出合いを語る
絵本教室5 絵本の歴史
絵本教室6 絵本のジャンル
絵本教室7 ミリオンセラーの絵本たち
絵本教室8 発達段階別・絵本の選び方
絵本教室9 「ブックトーク」をやってみよう!
絵本教室10 絵本の作り方
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さて「アニマシオン」とは、スペイン語で「魂を活性化し、生き生きさせる」という意味で、本書のもとになっているのは『読者へのアニマシオン――75の作戦』(マリア・モンセラット・サルト)という本。これには、大人が子どもの読む力を励まし、楽しい読書へといざなっていくための75の「作戦」があるそうです。本書はそれから厳選し、アレンジして実践してきた26種類のプログラムについて紹介しているのだとか。
そして「アニマシオンの基本」として、「アニマドール(アニマシオンを実践するときのリーダーとして子どもたちの力を引き出す案内役を果たす人)」や、「事前準備(子どもたちの状態を理解し、レベルに合うプログラムとその実践に使う絵本を決める。絵本を読み込む。)」、「カードのサイズ(B5版の1/4)」などが解説されていました。
続く「初級」からは、いよいよ実際の「作戦(プログラム)」の紹介が始まります。
例えば、最初の「初級1 集中して聞く力を育む」の〈作戦1:読みちがえた読み聞かせ〉では、『森の中』(マリー・ホール・エッツ)という絵本が選ばれて、「何度も読み聞かせた絵本をわざと間違えて読み、子どもたちに「違和感」を持ってもらうことで、「集中して聞く力」を養う」という方法(作戦)が、具体的に紹介されていました。
このように、どのプログラムでも、プログラムの概要だけでなく、絵本の選書のポイント(選んだ本の名前も)、事前準備、実践の手順、配慮事項などが詳しく紹介されているので、実際に「アニマシオン」を行う時の参考になります。
意外だったのは、同じ本を何度か読み聞かせした後で、子どもたちとのやり取りが始まることが多かったこと。この「初級1」でも、わざと間違える前に、何度か読んでいて、子どもたちが絵本を覚えていることが前提になっています。その前に、飽きてしまう子どもはいないのかなーとちょっと心配になってしまいました(笑)。でも、どのプログラムも本をただ読むのではなく、子どもたちに考えさせたり答えさせたりしているので、確かに注意力や想像力・思考力が養われそうです。
また、これら26の「アニマシオン」プログラムの間に挟まれている10の絵本教室も、とても参考になりました。
例えば「絵本教室3 読み聞かせのポイント」には、次の「読み聞かせ」の極意10か条が書いてあります(本書では、もっと詳しい説明があります)。
1)絵本の開きグセをつけておく
2)表情を豊かに
3)相手が要求したら、時間の許す限り何度でも読む
4)最初から最後まできちんと読む
5)読み終わっても感想を強要しない
6)リラックス時間に読む習慣をつける
7)本と実体験の両方が必要(書かれていたことを実際の現場で確かめるなど)
8)時には、いつもと違う人が読む
9)自分が良いと思う本を押しつけない
10)相手の理解度・発達に応じて絵本を選ぶ
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さらに「絵本教室8 発達段階別・絵本の選び方」では、「0~2カ月」から「6歳~」までの細かい発達段階別に、絵本の選び方だけでなく、お勧めの絵本も書いてあるので、これもとても参考になると思います。
『絵本で実践! アニマシオン: 子どもの力を引き出す26のプログラム』……図書館や保育園・幼稚園で働いている方にはもちろん、子どものいる方にも参考になる情報がたくさんあると思います。ぜひ読んでみてください☆
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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