『ビジュアル 地球を観測するしくみ: 気象・海洋・地震・火山』2023/10/18
古川 武彦 (著), 加納 裕二 (著), 浜田 信生 (著), 藤井 郁子 (著)

 地球の観測・監視では、地上、洋上から宇宙まで、種々のシステムが展開・整備されています。その主だった観測について、観測機器、システムや目的、原理、作動手法、データの記録・伝送などを、実際の写真や設置・観測風景・図を使って分かりやすく解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
序章 概説
第1章 気象観測
1.1 地上における観測
(地上気象観測網/地上気象観測装置/アメダス/気象レーダー/雷監視システム/二酸化炭素の観測/オゾン観測)
1.2 上層・宇宙での観測
(ラジオゾンデ/ウインドプロファイラ/気象衛星/衛星による地球環境の観測)
1.3 航空気象観測
第2章 海洋観測
2.1 沿岸での観測
(波浪計/潮位計)
2.2 外洋を漂流・浮遊する自動観測
(漂流ブイと係留ブイ/アルゴフロート)
2.3 観測船による海洋観測
(海洋観測船/電気伝導度水温水深計と多筒採水器/海洋二酸化炭素観測装置/海水成分分析装置/その他の観測装置)
2.4 海洋観測における衛星・リモートセンシングの利用
第3章 地震・火山・その他の地球物理観測
3.1 地震の観測
3.2 津波の観測
3.3 地殻変動の観測
3.4 火山の観測
3.5 地磁気観測
エピソード(コラム):気象庁の創立/「アメダス」/「富士山レーダー」の建設/ブライトバンド/「オゾンホール」の発見者は日本人/「ひまわり」の命名/気圧高度計とQNH/英国で潮位・高潮計算機を開発した日本の科学者/各機関が持つ潮位データの共有化/ミレニアムプロジェクト/ナンセン採水器/定点観測/衛星による海洋業務の高度化/地球は狭くなった/地震の名前/2011年東北地方太平洋沖地震/観測機器と電子回路/地磁気観測所/磁気圏/電離圏
文献
索引
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 フルカラーで実際の観測機器の写真や気象の図やイラストが豊富に掲載されているので、科学博物館の気象コーナーの展示をじっくり見ているみたいな感じで、とても興味津々でした。
 解説文もとても具体的で、観測機器の構造などがよく分かりました。
 例えば「温度計」については……
「(前略)気温(温度)を測定する測器としては、温度によって液体・金属が膨張・収縮することを利用したものと、電気抵抗が変化することを利用したものがある。前者の原理を用いたものには、ガラス製温度計、金属製自記温度計(いわゆるバイメタル式温度計)があり、後者の原理を用いたものには電気式温度計(白金抵抗温度計など)がある。これらはいずれも測定しようとするものと温度計を熱平衡状態にして温度を測定する方法である。このほかに物体が出す赤外線が温度によって決まることを利用して温度を測定する放射温度計もあり、これは後述の気象衛星により雲頂温度や海面温度の測定などで使われている。」
 ……なるほど(ここで紹介したのは、温度計の説明のごく一部で、本書ではもっと詳しい説明があります。)。
 また雷の観測については……
「現在の雷の観測技術は、雷により発生する電波を多数のアンテナ(以下、「検知局」)で受信し、雷の位置と発生時刻、落雷か雲放電かを検知するシステムとして完全に自動化されている。」
 ……雷が光ると、ラジオに雑音が入ることがありますが、それを利用しているんですね。
 そして約10km上空までの風の分布を観測するシステムの「ウインドプロファイラ」については……
「ウインドプロファイラは、地上から上空に向けて電波をパルスとして発射し、降水粒子や、大気中の風の乱れ、微細なチリなどによって散乱され戻ってくる電波を受信・処理することで、上空の風向・風速を観測している。すなわち、粒子などは上空の風によって流されているので、上空に向けて発射された電波は散乱を起こして、地上に戻ってくる。その際、上空の流れに応じて、発射した電波の周波数と受信した電波の周波数の違いから大気の動きが分かる。」
 ……という感じ。
気象(地上や海上)や地震・火山の観測では、たくさんの機器や衛星が使われているんですね! とても興味津々でした。
 また「エピソード(コラム)」も面白くて、NHKのプロジェクトXでも取り上げられた「「富士山レーダー」の建設」はもちろん、「地磁気観測所」の次の記述も。
「気象業務法の気象・地象・水象には地球磁気・地球電気が含まれており、気象庁は1913年から茨城県の地磁気観測所で地磁気の精密観測を行っている。1950年代には国鉄常磐線の茨城県内部分の電化構想が持ち上がり、地磁気精密観測に与える影響をめぐって産官学の話し合いや調査研究が行われた。その結果、観測所から35km以内の電車路線が直流ではなく交流であれば磁場観測への影響は許容範囲内とされ、常磐線の取手以北は交流電化された。その後、1964~65年に制定された電気事業法により地磁気観測に影響を与えることは禁じられ、2005年に開通したつくばエクスプレスも観測所から35km以内の区間は交流を採用している。(後略)」
 ……電車路線にも影響していたんですね!
 まさに『ビジュアル 地球を観測するしくみ: 気象・海洋・地震・火山』。気象博物館をじっくり見学しているような気分になれる本でした。気象が好きな方は、ぜひ読んでみてください☆
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