『ベストセラーの値段 お金を払って出版する経営者たち』2020/1/24
水野 俊哉 (著)
「ベストセラーはお金をかければ作ることができる」ことを教えてくれる本です。
「はじめに」には、「ベストセラーはお金をかければ作ることができる。」ことだけでなく、出版をうまく使うことで、出版とは関係のないビジネスを伸ばすことができることが書いてありました。実は私たちは、本は高尚であり、著者は立派な人物であると刷り込まれているので、本を出すことで、自分自身のブランド価値を高めることができるそうです……なるほど、確かにそうですね(苦笑)。
そして「第1章 出版業界に未来はあるのか」では、書籍1点あたりの売り上げが下がり続けていて、出版業界は苦境に陥っているとありました。
その一方で、書籍全体の部数がどんどん落ちていることは、ベストセラーと呼ばれる基準も下がってきていることを意味してもいて、「ベストセラーは3000万円あれば作れる」そうです。なんと最近では、このお金を著者自身がが払うのが、出版業界では一般的なのだとか!
ええー、そうなんだ……。実はこのようなことをする著者の方は「本を売るため」ではなく、「自社や自社製品のマーケティングのため」に「テレビCMを作ったり、商品の広告を出すつもりで」3000万円(お金)を支払っているそうです。
「第2章 投資としての出版ビジネス」では、出版することでのビジネス上のメリットについて、次のように書いてありました。
1)ブランディング(著者はその道の専門家として「信用」を得る)
2)ターゲットを絞った広告(これほど情報量の多い広告は他にない)
3)求人効果(あなたのビジネスモデルに惹かれた人が来る)
4)広告宣伝費は節税になる(出版費用も経費に)
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……なるほど。そういうことなんですね。
出版マーケティングを行うべきビジネスには、次のようなものがあるそうです。
1)不動産業
2)コンサルタント
3)セミナー
4)ウェブビジネス(「ウェブビジネス=怪しい」に対処できる)
5)クリニック
……内容の充実した本を書くと、その会社(病院)の信用があがって集客できそうなビジネスばかりです。
「第3章 作られたベストセラーたち」では、その事例として……
「著者がお金をかけてベストセラーを作り本業でその費用を回収する、という出版マーケティングの原型を作ったのが2005年に出版された『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田真哉さんです。」
……えっ、私も読んだあのベストセラーは、出版マーケティングで作られたベストセラーだったんですか?
……なんか、ちょっと残念な気もしてしまいましたが……本も商品である以上、やっぱり、こういうマーケティングは重要ですよね……書店に本が溢れていて、どれが良い本なのか選ぶのにも困る時代なので、とりあえずお金を払ってでも書名や著者名を知ってもらわないと、戦いに参加することすらできないまま、書店からすぐに消えてしまうのかも……。また、次のようなことも……。
・「基本的に世の中は「売れているものがさらに売れる」ようにできています。」
・「一流経営者である著者の広告費、インフルエンサーである編集者の影響力と読者からの信用、これらすべてを総動員したマーケティングによって、安定してベストセラーを量産することができるのです。」
……うーん、確かにその通りです……。
「第4章 ベストセラーの作り方」では、会社のブランディングや広告のために、コンサル出版やライター、編集者などのプロを活用するのもアリ(自分は本業を優先できる)とも書いてありました。
さらに「第5章 ベストセラーの作り方」では、チェーン系の書店の旗艦店で、自分の本を買うなどの裏技も紹介されていました(笑)。POP付で平置きされ、返本されずに長く書店に置かれるためには、本の売り上げは初速が大事なのです。
『ベストセラーの値段 お金を払って出版する経営者たち』……文学賞を獲得するようなベストセラーは無理かもしれませんが、ビジネス書などのベストセラーはお金で買えるし、それには抜群の広告効果があることを教えてくれる本でした。集客のために「信用が大事」な業界の経営者の方は、ぜひ読んでみてください。
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なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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