『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』2024/3/11
ジェームズ・グッドウィン (著), 森嶋 マリ (翻訳)

「運動」「食事」「睡眠」「腸」「栄養」「性欲」「知力」「孤独」「幸福」……科学によって証明された「自分史上最高の脳」になるための最新メソッドを、一冊にまとめた本です。
「1 脳を知る」には、次のように書いてありました。
「(前略)脳は体への負担が大きな臓器だ。重さは体重の2%なのに、心臓が送り出す血液の15%を独占している。(中略)酸素消費量に関しても脳は欲張りだ。基本的な機能を維持するだけで、全身の代謝に必要な酸素の20~25%を消費し、1日に約500キロカロリーを消費する。」
 脳は人体の中で、大きな比重を持っているんですね! そして……
「脳を健康に保つ最大の目的は、日常生活や仕事で自分の能力を充分に発揮するためだ。また、健康な脳とは、3つの核となる機能が正しく働いていることを指す。実行機能(意思決定、問題解決、論理的思考、学習、記憶)、他者との良好な交流(神経科学者が呼ぶところの“社会的認知”)、情動的バランス(幸福感)の3つだ。」
 そして脳をより良くするには……
「本書の主題のひとつは、“脳にチャレンジさせる”だ。新たな経験、新たな技術、さらには新たな脅威が、脳をシャープにしてくれる。」
 ……だそうです。
「2 運動と脳」には、運動が脳にとって、とても良い影響を与えることが書いてありました。次のようなことが分かってきているようです。
・「たとえば、2011年の米国科学アカデミーの報告書には、120人の高齢者を対象にした研究で、有酸素運動によって海馬が大きくなり、記憶力が向上したという結果が記されている。」
・「(前略)運動すると、脳内の成長因子である脳由来神経栄養因子(BDNF)という科学物質が増えることもわかった。BDNFは既存の脳細胞を維持し、新しい細胞を成長させて、細胞間のつながり(シナプス)を増やす。」
・「(前略)激しい運動中に脳のエネルギー需要が増えると、脳細胞のスイッチが切り替わる。通常のエネルギーはブドウ糖だが、代謝物質(普段の食事で摂取している乳酸など)を使うように切り替わるのだ。ゆえに、運動によって筋肉や肝臓の調子が整うだけでなく、脳の調子も整うことになる。
 さらに、これは双方向に効果がある。運動中に脳は体の組織に影響を及ぼし、組織のほうも脳に影響を及ぼす。たとえば運動をすると、筋細胞からイリシンという特殊なタンパク質が放出され、イリシンが循環すると、海馬でBDNFが生成される。
 また、運動をすると身体的なストレスに強くなる。運動中の筋肉から放出されるイリシンは、筋肉から脳への極めて重要なシグナルになり、ストレス耐性の作用を引きおこすと考えられる。」
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 ……運動には、すごい効果があるんですね! どれぐらい運動すればいいかというと……
「(前略)週に150分間の中強度の有酸素運動に加えて、週に2日以上の筋力トレーニングが理想だ。」そうです。
 ところが、これらの運動をしても、「長時間座り続けると帳消しに」なってしまうそうです! なんと座り続けると有害な化学変化が起き、記憶を司る脳の領域が縮むのだとか! うわ、私、毎日長時間座り続けているわ……気をつけないと……。
 この他にも、脳に良い生活についてのアドバイスがたくさんありました。例えば、適切な食事(いろんな種類のものをバランスよく)、腸内細菌を大事にする、他者と良好なコミュニケーションを取る、より良い睡眠をとるなどですが、すべて一般的に「健康に良い」と言われている生活で、要するに「健康に良い」生活は、「脳にも良い」んだなーと思って安心しました(すでに実行中の方法が多かったので)。
 そして「8 脳を明晰にする活動」には、次のことが書いてありました。
「脳の中では毎日、神経発生とよばれるプロセスで数百もの新たな細胞が作られている。動物実験では、作られる数に関係なく、新たな細胞の約半分が1~2週間以内に死ぬことがわかっている。そういった細胞は既存の脳細胞とつながる前に死んでしまう。だが、この細胞死は避けられないものではない。脳を鍛えれば食い止められるのだ。」
 へー! そうなんだ☆
 新しい脳細胞の生成と脳を守るためにすべきことは、厳しくて高い集中力を必要とするトレーニングなのだとか! そのために特に効果があるものとして、「ダンス」と「語学」があげられていましたが、この「ダンス」は脳の老化を防ぐような「難しいダンスプログラム(難しいステップのもの)」だそうです。また「新しい語学」を学ぶと、語学力が向上するだけでなく、注意力や集中力も向上するようです。その一方で、簡単な「脳トレ」などは役に立たないことが分かってきたとか……いくつになっても“チャレンジ”し続けないといけませんね……。
「運動」「食事」「睡眠」「良好な人間関係」が脳機能を高め、幸福感にも結びつく……健康な生活は、やっぱりすべてをより良い方向へ導いてくれるようです。
『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』……「脳にとっていいこと」を総合的に教えてくれる本でした。目新しい方法があったわけではありませんでしたが、科学的根拠などを知ることが出来て、とても有意義だったと思います。脳力を維持(向上)させたい方は、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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