『地球史マップ 誕生・進化・流転の全記録』2024/1/11
クリスティアン・グラタルー (著), 藤村 奈緒美 (翻訳), 瀧下 哉代 (翻訳), & 2 その他
プレートの過去と未来、火山の噴火、大気の循環、生命の歴史、サピエンスの拡散と交雑、都市化、戦争と環境破壊などのテーマを、地図や表に整理して教えてくれる百科事典的な『地球史マップ』で、内容は次の通りです。
- ビッグバンから地球の最期まで(138億年前~)
- 地球の構造(45億年前~)
- 生命の惑星(35億年前~)
- ヒトという動物(700万年前~)
- 栽培化と家畜化(1万2000年前~)
- 大農業時代(6000年前~)
- 資源のグローバリゼーション(15世紀以降)
- 化石燃料の時代(18世紀~)
- 飽和する地球(20世紀~)
「2. 地球の構造(45億年前~)」の「プレートの過去」というテーマでは、過去の大陸移動などの世界地図(ロディアニ大陸→大型生物の登場→パンゲア大陸→ゴンドワナ大陸の分裂)とともに、世界の気温の変動が書いてありました。かなり大きな気温の変動があったんですね……。
また「地震」のテーマでは、もちろん日本も大きく取り上げられていますが、詳細地図があったのは地中海で、「地中海地域の地震」が地図で詳しく描かれていました。それによると「南ヨーロッパと地中海盆地は、地震による被害がよく発生する場所である。また、古い記録が豊富に残っているおかげで、地震の歴史が最もよく分かる地域でもある。」そうです。
グラタルーさんはパリ・シテ大学の教授をしていた方なので、多くの地図がヨーロッパ中心になっていて、それがかなり新鮮に感じられました。日本は端っこで、変な形に引き延ばされていることも多いのです……(苦笑)。
「世界の海」というテーマでは、南極中心の海と北極中心の海があって、これも新鮮な感じでしたが、「気候を調整する海流」に両極が重要な役割を果たしているから、両極中心での「世界の海」を描いたようです。次のように書いてありました。
「地球の海は、実際には1つの大きな海である。海洋循環は、例えるなら巨大なベルトコンベアーのようなものだ。極点付近または極圏で表層水が沈み込む。表層水の塊はそこから深海底にたどり着き、その後緯度の低い地域に来ると再び海面に上昇し、暖められる。深層海流の平均速度は1秒につき1mm程度と非常に遅く、完全に1周するには1000年近くかかる。」
「3. 生命の惑星(35億年前~)」では、「大量絶滅」というテーマでまとめられた一覧表がすごく見ごたえがありました。「時代」「生物界の出来事」「大量絶滅によって影響を受けたグループ」「平均気温、造山運動」「大気中に含まれるCO2の量」「海面の高さ」「洪水玄武岩」「隕石の衝突」が一覧表になっていて、生物界の変化はもちろん、海面の高さが大きく変わっていることに驚かされます。
また「土壌:生命を支えるもの」というテーマでは、温暖気候の土壌と、熱帯気候、砂漠気候の土壌がまったく違っていることが、イラストで分かりやすく説明されていました。温暖気候の土壌は豊かですが、熱帯気候や砂漠には腐植土がほとんどないんですね……。
「偉大な旅行者たち」というテーマの、サケや蝶、ザトウクジラ、鳥など、季節の推移に伴って渡り・回遊する生物たちの移動経路も、とても興味津々でした。
そして「4. ヒトという動物(700万年前~)」では、「毛皮猟」という珍しいテーマの地図を見ることも出来ました。
「ヨーロッパ北部の地域は、富の証しである毛皮を、非常に早い時期から南の都市に供給していた。」そうです。ヨーロッパは昔から美しくて暖かい毛皮が大好きだったんですね……。
また「漁労:旧石器時代最後に習得した技能」によると、初期のホモ属は雑食、ネアンデルタール人は肉食だったのに対して、ホモ・サピエンスは狩猟採集の他に漁労も行っていたそうです。魚は意外に「新しい食べ物」だったんですね……(笑)。
「6. 大農業時代(6000年前~)」では、「紀元前5000年のメソポタミアには既に灌漑網が存在していた。」とありました。また「国家と言うシステムは、紀元前4000年紀の終わりにメソポタミアで生まれたようだ。」とも書いてあったので、メソポタミアは古代の超先進地域だったようです。
『地球史マップ 誕生・進化・流転の全記録』……プレートの過去と未来、火山の噴火、大気の循環、生命の歴史、サピエンスの拡散と交雑、都市化、戦争と環境破壊について、考古学者、天体物理学者、生物学者、気候学者、歴史学者、惑星学者など30人以上の専門家が協力して作り上げたマップで、300枚の地図で45億年にわたる地球のすべてを描いています(なお本書に掲載した地図(フランス語)は、オンラインでダウンロードできるそうです)。
知っている情報も多かったのですが、日本中心ではない地図など、新たな視点で眺めることが出来て新鮮な感じがしました。総合的に復習できて良かったと思います。「8. 化石燃料の時代(18世紀~)」では、「クジラによるCO2の吸収と固定」(クジラは生物界最大のCO2貯蔵庫で、生涯で平均33tものCO2を貯蔵し、死体は大気から遠く離れた海底に沈む)などの意外な情報を学ぶことも出来ました。
日本の科学雑誌ニュートンのビジュアル図鑑のようなフルカラーのイラストで、分かりやすく学べる百科事典のような本です。眺めて楽しく読んで勉強になるので、みなさんもぜひ眺めて(読んで)みてください☆
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