『地球にじいろ図鑑:鉱物×日本の伝統色』2023/7/13
茜 灯里 (著)

 色とりどりの美しい鉱物を、「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」と無彩色(白灰黒)に分類して紹介してくれる『地球にじいろ図鑑』。日本の伝統色をテーマカラーとして、その色をもつ鉱物を紹介してくれるので、鉱物について知ることが出来るだけでなく、日本の伝統色を見る(知る)ことも出来ます。主な内容は次の通りです。
01 赤の章
ルビー×茜色/レッド・スピネル×梅紫/ルベライト×浜茄子色 など
02 橙の章
スペサルティン・ガーネット×黄丹/サードニクス×柿色/サンストーン×洗朱 など
03 黄の章
アンバー×向日葵色/タイガーズアイ×支子色/フロゴパイト×黄櫨染 など
04 緑の章
ペリドット×若葉色/スフェーン×萌黄色/パイロモルファイト×鶸萌黄 など
05 青の章
パライバ・トルマリン×水浅葱/ターコイズ×浅葱/スミソナイト×薄浅葱 など
06 藍の章
ラピスラズリ×瑠璃色/インディゴライト×藍色/ボルダーオパール×紺碧 など
07 紫の章
タンザナイト×花色/アイオライト×菫色/チャロアイト×桔梗色 など
08 白灰黒の章
[白]ダイヤモンド×純白/ロッククリスタル×鉛白/ムーンストーン×月白 など
【色にまつわるコラム】①光と色の関係/②自色鉱物と他色鉱物/③他色鉱物のさまざまな着色原因/④構造色によるもの/⑤宝石の輝きに付随する色/⑥植物の色/⑦動物の色
【巻末資料】誕生石/カラーチャート/役に立つ基本用語集/登場鉱物の特性一覧/写真クレジット/参考文献/索引

 この本はとにかく色が美しくて、ぱらぱら眺めるだけで癒されます☆
 宝石などの石は原石っぽいものが多いのですが、発色が良いものに厳選されている感じ。その鉱石のカタカナ表記と和名、日本の伝統色の名前(その色がタイトルなどの色になっています)、鉱石の名前の由来などの解説、さらに似た色の植物および動物の写真で1ページになっている、という構成です。
 例えば先頭ページの「茜色」の「ルビー」の和名は「紅玉」。植物は「レッドカサブランカ」、鳥は「タカサゴマシコ」でした(なお植物と鳥は写真と名前のみで解説はありません)。……ルビーの和名は「紅玉」っていうんですね……知らなかった。日本人なのに鉱物の「和名」や「日本の伝統色の名前と色彩」を意外に知らなかったことを痛感させられました。読めない漢字もたくさんあったし……(涙)。でも、これらの名前にはちゃんと「読み仮名」もついているので、大丈夫です☆
 こんな感じで、全部で115の日本の伝統色が、その色の鉱物とともに紹介されています。
 ピンクの真珠があること(コンクパール)や、紫色の雲母があること、さらに紫色の翡翠があることを知りました。翡翠については、次のように書いてありました。
「日本や中国では緑色のイメージが強い本翡翠(ジェダイト、硬玉)ですが、欧米で最も人気がある色はラベンダー色です。」
 また、想像上のものと思っていた「賢者の石」も実在しているようです。それはシナバー(辰砂)で、次のように書いてありました。
「辰砂は水銀の重要な鉱石で、別名「賢者の石」ともいいます。水銀は金と混合物を作る性質があることから、中世ヨーロッパの錬金術師は「賢者の石は、鉛などの卑金属を金に変えるために必要な『触媒』であると考えました。中国では不老不死の薬「仙丹」の原料に使われました。」
 ……そうだったんだ。さすがにシナバー(辰砂)には「賢者の石」が持つはずの幻想的な性質はないんでしょうけど……。
 これらの鉱石はどれもとても美しい色彩の素敵なものなのですが……鼈甲と象牙だけは、ワシントン条約での商取引が禁止されているためなのか、原材料ではなく加工品(扇)の写真が使われていました。そのため残念ながら原材料がどのようなものかが分かりにくくなっています。過去の資料でもいいから、原材料が分かるようなものだと、もっと良かったのになーと思ってしまいました。
 それでも鼈甲と象牙も含め、全ページがとても美しくて、ずーっと眺めていたくなります☆
「色にまつわるコラム」もとても参考になるものでした。
 例えば「③他色鉱物のさまざまな着色原因」には、1)結晶構造の原子の欠損(格子欠陥)によるもの、2)自然界の放射性物質や人工の放射線によるもの、3)結晶構造の歪みに起因するもの、4)ほかの鉱物が微粒子として入るものがある、などの原因があるそうです。
 また「④構造色によるもの」によると、光の波長程度の微細構造によって光が分光した結果発色する現象の「構造色」には、1)遊色効果(オパールなど)、2)オリエント効果(真珠など)、3)シラー効果(ムーンストーンなど)、4)ラブラドル効果(ラブラドライトなど)があるそうです。
 さらに「⑦動物の色」によると、生物の色の原因には色素と構造色があり、色素は食べ物から取り込むケースが大半で、構造色は光の反射の仕方によるものですが、その中の次のカメレオンの話は知らなかったので、とても参考になりました。
「カメレオンは、かつては体表にある色素胞の働きで体色を変化させると考えられていました。けれど最近の研究で、色素胞のすぐ下にある虹色素胞で、透明なナノ結晶格子の密集状態を変えて反射する光を調整しているとわかりました。平静時には、ナノ結晶格子が密集して青の波長を反射し、体内の黄色色素と組み合わされて緑色になります。一方、興奮時には、格子が緩んで赤色や黄色などのほかの色が反射されるようになるといいます。」
 ……カメレオンはそんな方法で色を変えていたんですか! だから素早く色が変わるんですね。
 とても勉強になる美しい『地球にじいろ図鑑:鉱物×日本の伝統色』でした。
 ただ……「鉱物×日本の伝統色」というタイトルから、日本画によく使われる「岩絵具」の話なのかなと勝手に想像していたのですが、「岩絵具」についての説明はありませんでした。
 それでも115もの日本の伝統色の名前と色、その色の鉱物、植物、動物を知ることが出来る本だったので、創作の参考資料としても役に立つものだと思います。巻末の誕生石/カラーチャート/役に立つ基本用語集/登場鉱物の特性一覧/写真クレジット/参考文献/索引も役に立ちそう。
とても美しい本なので、みなさんも、ぜひ眺めてみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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