『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』2015/12/11
ベネディクト・キャリー (著), 花塚 恵 (翻訳)

 脳をうまく働かせる効率的な記憶法・勉強法を教えてくれる本で、内容は次の通りです。
《Part1》脳はいかに学ぶか
第1章: 学習マシンとしての脳
──記憶という生命現象を解き明かす
第2章: なぜ脳は忘れるのか
──記憶のシステムを機能させる忘却の力
《Part2》記憶力を高める
第3章: 環境に変化をつける
──いつもの場所、静かな環境で勉強するのは非効率
第4章: 勉強時間を分散する
──一度に勉強するより分けたほうが効果的
第5章: 無知を味方にする
──最善のテスト対策は、自分で自分をテストすること
《Part3》解決力を高める
第6章: ひらめきを生む
──アイデアの「孵化」が問題解決のカギ
第7章: 創造性を飛躍させる
──無から有をつくりあげる「抽出」のプロセス
第8章: 反復学習の落とし穴
──別のことを差し挟む「インターリーブ」の威力
《Part4》無意識を活用する
第9章: 考えないで学ぶ
──五感の判別能力を学習に活用する
第10章: 眠りながら学ぶ
──記憶を整理・定着させる睡眠の力を利用する
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 勉強や読書は静かな場所で集中してやりたい方なので、思いがけぬ邪魔が入ることがあるとイラっとしがちでしたが、なんと! 勉強には「邪魔が入った方が」効率的なのだとか! そんな驚きの研究結果があることなど、参考になることをたくさん知ることが出来ました。
 また私は、残念ながら記憶力がよくないことを自他ともに認めていますが(涙)、実は「忘れること」も学習にとっては重要だそうです!! 「第2章: なぜ脳は忘れるのか」によると、「忘れることで学ぶ量が増え」て、「余計な情報を忘れるおかげで、脳は大事なことに集中し、求めている情報を思い浮かべることができるのだ。」そうです。
 ふふ……そうだったんだ(エッヘン)。
 この本では、脳科学的な「学習の科学」研究を基にした学習法をいろいろ知ることが出来ました。
 例えば、「一度に勉強するより、分けたほうが効果的」で、集中学習よりも分散学習の方が、実は学習効率が良いそうです。
「外国語の語彙や科学の定義など、事実に関する情報を習得して記憶にとどめたいなら、最初に勉強した1、2日後に復習し、その次は1週間後、その次は1カ月後に復習するのが最適だ。1カ月を過ぎると、復習する間隔はさらに長くなる。」と書いてありました。
 また、ツァイガルニクさんの研究によると、学習中の「邪魔」は、妨害どころか援助になるのもしれません。次のように書いてありました。
「(前略)邪魔が及ぼす効果は、相手が作業に没頭しているときを見計らって邪魔をすればさらに高まることを突き止めた。興味深いことに、「最悪」のタイミングで邪魔をされると、記憶にとどまる長さが最大になるらしい。」
 どうやら脳には、目標に関して次の二つのバイアスがあるようなのです。
1)割り当てられた作業に着手すると、たとえ意味のない作業でも、それを心理的に目標に感じるようになる
2)作業に没頭しているときに邪魔が入ると、その作業が記憶にとどまる期間が長くなる
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 ……へー、そうだったんだ。「集中的に仕事をしている人を見ると、邪魔すると悪いから声をかけないよう遠慮する」ように心がけてきたけど、むしろ邪魔した方がいいのかもしれませんね(笑)。まあ、私だったら、やっぱり邪魔されたくはないけど……。でもこれからは、邪魔されたときには、邪魔してもらって「良かった」のかもしれない、と思うようにしましょう……。
 また、もう一つ意外だったのが「第8章: 反復学習の落とし穴」の「別のことを差し挟む「インターリーブ」の威力」。実は、素振り百回みたいな「一つのことを何度も反復して練習する」よりも、変化をつけた方が効果的なのだとか。
「(前略)変化を取りいれた練習のほうが、一つのことを集中して行うよりも効果的だということだ。なぜそうなるかというと、動きを調節する基本を身につけざるをえなくなり、どんな位置の的にも適応できるようになるからだ。」
「一つのことを繰り返し練習させないようにすれば、人は絶えず調整せざるをえなくなる。それにより、変化全般に対応する器用さが身につき、ひいては個々の技術に磨きがかかる」
 なんと驚いたことに、「反復学習を重ねると向上のスピードは遅くなる」そうです。
それに対して「インターリーブ」を取り入れた練習をすると、軽い度合いの悪いことに備える力がつく、すなわち、ちょっとしたアクシデントにも強くなるのだとか……「インターリーブ」、飽きっぽい私には最適の学習法のようです(笑)。
 この他にも、「第7章: 創造性を飛躍させる」では……
「(前略)大きな仕事を抱えたときは、できるだけ早く着手し、行き詰ったら立ち止まる。投げ出すのではなく、抽出を始めるのだ、と自信をもって中断すればいい。」
 そして「第9章: 考えないで学ぶ」では……
「PLM(知覚学習モジュール)は瞬時の判断力(知覚力)を研ぎ澄ますことが目的。見た瞬間に、理屈抜きで自分が見ているものが何かを「理解」できるようになることが目的」
「練習問題で素早く解くことを繰り返すと、脳の感覚をつかさどる領域が残りの学習を引き受けてくれる。」
「私たちが持つ五感はすべて、視覚に限らず、自らその力を研ぎ澄ますことができる。」
 ……など、参考になる学習法がたくさん紹介されていました。
 自分の学習法を改善したい方はもちろん、教育に関係する仕事をしている方にとっても、とても参考になると思います。ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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