『GEOペディア 最新 知って備える防災の科学技術』2023/7/25
臼田裕一郎 (監修)

 南海トラフ地震、首都圏直下型地震、富士山噴火、凶暴化する台風・降雨・洪水……災害から命・社会・国土を守るための「防災」「減災」「縮災」の最新科学と技術を総合的に紹介してくれる本で、主な内容は次の通りです。
Chapter 1 災害・防災とは何か?
1 災害とは? 防災とは?
2 近年の災害
3 「リスク」で防災を考える
4 「レジリエンス」で防災を考える
5 わが国における防災対策
6 予測・予防・対応とは?
Chapter 2 予測のための科学
7 地震の観測網
8 海域での地震津波観測網
9 地震の予測とは
10 地震動、津波予測情報の活用
11 火山噴火のメカニズムを知る
12 火山防災と観測・警戒
13 積乱雲がもたらす気象現象
14 線状降水帯とは何か?
15 洪水・浸水の被害を防ぐ
16 土砂災害に備える
17 雪の被害を防ぐ
18 複合災害
Chapter 3 予防のための科学
19 耐震・制震・免震とは何か?
20 耐震工学の実験と技術開発
21 自然災害の怖さを体験する
22 地図で災害リスクを知る
23 自助・共助・公助とは?
24 地区防災計画の重要性
25 マイ・タイムライン作成で災害に備える
26 流域治水という防災の視点
27 BCPとは何か ?
28 災害時要配慮者への備えと対応
Chapter 4 対応のための科学
29 気象庁の防災気象情報
30 自治体が発信する避難情報
31 災害時の医療援助体制
32 情報共有の技術
33 上空からの被害把握
34 SNSの活用
35 デジタルツインの活用
36 個人でできる防災
37 避難生活・復旧までを耐え抜く
38 復興とは

 災害や防災について総合的に紹介してくれるので、とても参考になりました。例えば「5 わが国における防災対策」によると、「危機管理のサイクル」は次の通りだそうです。
1)準備
(早期警戒システム、ハザードマップ、地域防災計画、地域防災力の向上、防災教育・研修)
2)緊急対応
(危機管理、救急活動、救出・救助)
3)復旧・復興
(災害特性・原因・誘因の評価、防災施設の復旧・改良、心と体のケア・リハビリ、生活圏・環境の復旧・改良)
4)予防策・軽減策
(法整備、土地利用管理、防災施設整備、技術開発、災害監視・予測)
   *
 そして「個人が高める予測力・予防力・対応力のリテラシー」は……
・予測のリテラシー
 →科学的根拠のある情報に基づいて将来を予測
 →予想される大災害に対して、自分たちが何をしなければならないかを考える
・予防のリテラシー
 →予防力を高めるためにコストや労力をかけてハード面やソフト面の対策を施す
 →リスクに応じて「回避」「低減」「移転」を判断し、コストのかけ方を選ぶ
・対応のリテラシー
 →現場でやること
1)命を守ること
2)毎日の生活を取り戻すこと
3)「より良い復興」を考える。以前と同水準ではなく、より良い生活にする
 →自助・共助・公助。
1)自分で自分を助ける「自助」
2)周囲と助け合う「共助」(または互助)
3)国や自治体などの「公助」)
   *
 そして「Chapter 2 予測のための科学」では、地震の観測網はもちろん、海域での地震津波観測網があることも知ることができました。例えば、次のようなS-net(日本海溝海底地震津波観測網)があるそうです。
「海域の地震像の解明のためにも海底における観測データは不可欠。地震計と水圧計が一体となった観測装置を海底ケーブルで接続した観測システムを、日本海溝から千島海溝海域に至る東日本太平洋沖の海底に設置し、24時間連続でリアルタイム観測データを取得する。」
 この観測網は、地震や津波の監視、緊急地震速報などの迅速化、海域の地震像や地殻構造解明の基礎データとして活用されるそうで、この他に2024年末完成予定のN-net(南海トラフ海底地震津波観測網)もあるのだとか。
 また「21 自然災害の怖さを体験する」では、疑似体験などができる施設10選が紹介されていました(札幌市民防災センター、KIBOTCHA、本所防災館、そなエリア東京、名古屋市港防災センター、四季防災館、京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリー、あべのタスカル、広島市総合防災センター、福岡市民防災センター)。施設の近くに住んでいる方は、ぜひ一度疑似体験してみてください。
 そして最近は、被害状況を上空から把握するために人工衛星、ヘリコプター、ドローンなどが活用されるとともに、個人の発信情報から被害を把握するために SNSも活用されているそうです。次のように書いてありました。
「SNSを活用した情報分析が有効だとしてNICT(情報通信研究機構)が開発したのがDISAANA(ディサーナ:対災害SNS情報分析システム)やD-SUMM(ディーサム:災害状況要約システム)。Twitterで発信される情報を、AIを用いて自然言語解析し、どこでどんな災害が起こっているのか、誰がどこでどんな支援を必要としているのかを分析する技術である。」
 ……ただし両方とも2023年12月28日で終了予定だそうですが、さらに詳細な状況把握を目的とした「防災チャットボット」(SOCDA)があるのだとか。
 そして「防災お役立ちサイト」も多数紹介されていました。そのごく一部を以下に紹介します。
(内閣府)
・内閣府防災情報トップページ:https://www.bousai.go.jp
・防災白書:https:// www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/
・一日前プロジェクト:https:// www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/ichinitimae/
(気象庁)
・トップページ:https://www.jma.go.jp
・気象キキクル:https:// www.jma.go.jp/bosai/risk/
(国土交通省・国土地理院)
・ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ・わがまちハザードマップ):
https://disaportal.go.jp
・マイ・タイムライン(国土交通省):
https://www.milt.go.jp/river/bousai/main/saigai/tisiki/syozaiti/mytimeline/index.html
(地震調査研究推進本部)
・トップページ:https://www.jishin.go.jp
(防災科学技術研究所(防災科研))
・トップページ:https://www.bosai.go.jp
・防災クロスビュー:https://xview.bosai.go.jp
・地震ハザードステーション「J-SHIS」:https://www.j-shis.bosai.go.jp
・津波ハザードステーション「J-THIS」:https:// www.j-this.bosai.go.jp
(東京都)
・東京都防災:https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp
・東京マイ・タイムライン:https:// bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline
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 また参考になったのが、「【COLUMN】映画や小説で「防災」を考える」。楽しく防災を学べる映画や小説として、次のようなものが紹介されていました(ここでは名前のみ紹介しますが、本書ではもっと詳しく紹介されています)。
・『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締り』(新海誠/監督)
・『シン・ゴジラ』(庵野秀明/監督)
・『想像ラジオ』(いとうせいこう/河出文庫)
・『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹/新潮文庫)
・『泥流地帯』(三浦綾子/新潮文庫)
・『日本沈没』(小松左京/角川文庫など)
・『三陸海岸大津波』『関東大震災』(吉村昭/文春文庫)
・『芥川龍之介随筆集』(石割透・編/岩波文庫)
・『方丈記』(鴨長明、梁瀬一雄・訳注/角川ソフィア文庫)
 ……視聴していないものもあるので、機会があったら視聴したいと思います。
 フルカラーの写真やイラストで学べる『GEOペディア 最新 知って備える防災の科学技術』でした。防災について総合的に学べる本ですので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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