『測る世界史 「世界の基準」となった7つの単位の物語』2023/6/20
ピエロ・マルティン (著), 川島 蓮 (翻訳)

 世界史は、測ることから始まった……人類の6000年にわたる試行錯誤、天才科学者たちによる世紀の大発見を、興味深いエピソードとともに解説してくれる本で、主な内容は次の通りです。
第1章 メートル 革命が生んだ「長さ」の定義
第2章 秒 太陽と音楽が育んだ「時間」の流れ
第3章 キログラム 水瓶から原爆に至る「重さ」の悲劇
第4章 ケルビン 冷熱のあいだで変化し続ける「温度」
第5章 アンペア 紀元前から人類を分かつ「電流」
第6章 モル 化学を扱いやすいものにした「束」
第7章 カンデラ 生命の「明るさ」を測ったろうそく
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「はじめに」には、次のように書いてありました。
・「測定とは、ある物理量や現象の性質に、あるいは私たちを取り巻く自然や世界の、客観的な値を与えることのできる面に、一つの数や一連の複数の数を当てて表す行為すべてのことを指している。つまり、適切な危機を使って、ある量を、基準となる測定単位という量と比較し数値化することである。」
・「人間は過去を知り、現在を理解し、将来を計画するために世界を測るのだ。」
・「測定することと、それを人民にとって共通のものと定め、同時に恐れを抱かせるものにする能力は、権力の象徴であり、神との絆であり、帰属意識と相互信頼を表すのだ。」
・「測定は権力であるが、相互信頼でもある。私たちが重さや長さによって何かを購入するとき、自身で測定器を持参する必要を感じないのは、信頼できる機関が参照基準を維持してくれているおかげである。」
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 そして「第1章 メートル」によると、国際的に通用するようになる長さの単位、メートルができたきっかけは、フランス革命だそうです。次のように書いてありました。
「フランス革命は、旧来の時間的権力や宗教的権力からの完全な解放を願い求めた。」
 商取引などをはじめ、生活する上で単位がバラバラなのは大変な障害になるので、人々は自ら、とても科学的な知見に基づく新しい単位を作りだしたようで、その経緯が詳しく書いてありました(紆余曲折もあったようです)。そしてついに……
「1875年5月20日、パリで17ヶ国がメートル条約に署名した。こうしてつくられた組織的な枠組みにより、測定単位に関連するすべての事項について、加盟国による共同合意で行動できるようになった。」
 ……フランス革命は、私たちにも大きな影響を与えていたんですね!
 ちなみに「測量」や「幾何学」は、氾濫するナイル流域での税収のために、それを必要としたエジプトが起源だそうですが、「キュビト(肘の先端から指の先端)」が単位だったようです。ところが、このキュビト、なんと身分によって二種類あったのだとか! (一般用は約45センチ、王族用は約52センチ。王族用のキュビトは高貴な身分の者の腕に由来)……なるほど、「測定は権力」なんですね……。
 こんな感じで、「長さ:メートル」、時間:秒」、「重さ:キログラム」、「温度:ケルビン」、「電流:アンペア」、「物質量:モル」、「明るさ:カンデラ」の7つの単位が生まれた経緯や、どのように国際標準が決められたか、さらにはそれに関連する興味深いエピソードなどが盛り込まれていて、読んでいくと、「測定」に人間の知恵がたくさん盛り込まれていることに、感謝と感動を覚えてしまいます。
 もちろん科学的な知識も得ることができます。例えば「第4章 ケルビン」では……
・「温度計は、別の系と熱的に接触し同じ温度を帯びるが、別の系の温度を変更せず、その系と熱平衡状態になる測定器である。」
・「温度は、熱力学の基本的な物理量である。熱力学は、系と系の間および系と環境の間のエネルギー交換、機械的仕事の熱への変換、およびその逆の熱の機械的仕事への変換を含む、巨視的プロセスを研究する物理学の分野である。」
・「巨視的な熱力学的量と物質の微視的な性質の間の関係は、気体分子運動論によって説明される。」
・「2018年に、普遍的な物理定数に基づきすべての基本単位を再定義するために、実に正確に定められるボルツマン定数を使ったケルビンの新定義が採択された。(中略)
 ケルビンは物理学で広く使われている温度の測定単位だが、日常生活や多くの実際の適用においては、摂氏単位が最高の地位にある。」
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 ……のように詳しい解説があり、科学の勉強にもなるのです(ここに紹介したのはほんの一部で、もちろん本書ではもっと詳しいです)。
なお、ここで温度に使われている「ケルビン」という単位に「?」と思った方もいるのではないかと思いますが、一般的には、凍結する水が0で沸騰する水が100という覚えやすい固定点、見やすい小さい数字で構成されている「摂氏」が、現在、世界中で使われています。……やっぱり単位は、一筋縄ではいかないようですね(苦笑)。
 そして「おわりに」には、次のように書いてありました。
「科学は、測定するということが理解の基本要素であることを認識し、実際に測定プロセスを体系化し、普遍化した。そして、その結果はいつでも共有および検証ができ、あらゆる理論の基礎となるだろう。」
 このことは、「はじめに」にあった、次の文章とともに、「測定」の最も重要な働きを示しているのだと思います。
「現代の科学的アプローチは、間違いなく、実験と観察、そしてその再現性に基礎を置いている。そして、実験し、観察したことを説明し、そこから新しい理論を生みだし、あるいは既存の理論を検証または反証するには、「測定単位」という共通言語が必要である。」
 ……「測る」ことは、まさに科学の基本ですね!
 とても面白くて勉強にもなる『測る世界史 「世界の基準」となった7つの単位の物語』でした。みなさんも、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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