『植物はすごい 七不思議篇 (中公新書)』2015/7/24
田中 修 (著)

 7つの身近な植物に秘められた「すごさ」から、植物の生き方の工夫と知恵を教えてくれる本(『植物はすごい』の続編)で、内容は次の通りです。
第1話 サクラの“七ふしぎ”
第2話 アサガオの“七ふしぎ”
第3話 ゴーヤの“七ふしぎ”
第4話 トマトの“七ふしぎ”
第5話 トウモロコシの“七ふしぎ”
第6話 イチゴの“七ふしぎ”
第7話 チューリップの“七ふしぎ”
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 サクラが春に咲くためには、春の暖かさだけでなく冬の寒さも必要だとか、サクラが「秋を知る」のは、夜の長さに応じて葉がアブシシン酸をつくるからとか、とても興味深い話が満載でした☆
 九州や四国より東京のサクラの開花宣言が早いのは、なんと九州や四国より東京の冬が「寒い」からで、「サクラは冬の寒さが厳しいほど、春の目覚めが良い」そうです。
また季節外れの秋にサクラが咲くことがあるのは、夏に嵐や虫害で葉がなくなってしまったことが原因のことが多いようです(葉がないとアブシシン酸を作れないから)。
 そしてソメイヨシノは、実がならない品種なのかと思っていましたが、実は、タネを作る能力はあり、実もなるそうです。ソメイヨシノは、他の品種が植えられていない場所にまとまって植えられていることが多いので、タネがめったに出来ないだけなのだとか……そうだったんだ……。
 この本は、こんな感じに身近な植物のいろんな謎について教えてくれるので、とても楽しく学ぶことができました。しかも謎に関連している「植物の基礎知識」も教えてくれるので、とても参考になりました。
 例えば「第3話 ゴーヤの“七ふしぎ”」の「ふしぎの一」は、「なぜ、ゴーヤの株に、カボチャが実るのか」という謎ですが、それは「ゴーヤの接ぎ木の台木がカボチャだから」で、台木のカボチャから芽が出て実がなることがある(!)のだとか。ゴーヤのような連作障害を起こす植物は、連作障害を起こさないカボチャを台木にすることがあるそうです。植物には「分化全能性」があるので、台木からも実がなることがあるのだとか。
 ここでは、「接ぎ木」や「挿し木」について、次のような解説がありました。
・「接ぎ木という技術は、台木になる植物がもっている性質を利用して、台木に接ぎ木される植物を育てる場合に有効です。台木には「病気に強い」とか、「連作ができる」などという性質をもつ植物や品種が用いられます。その上に、ナスやトマト、スイカなど、ほんとうに育てたい品種が接ぎ木されます。」
・「「接ぎ木」では、台木の切り口と穂木の切り口が癒着します。台木と穂木の切り口の細胞にも、分化全能性があります。これらの細胞が、再び、茎をつくろうとする力でつながりあうのが接ぎ木なのです。」
・「「挿し木」は、植物の枝や茎を切り取り、砂や土に挿しておくだけです。やがて、根が生え、芽が伸びて、一本の植物が育ちます。「分化全能性」という性質が、挿し木を可能にしているのです。キク、バラ、ツツジ、アジサイ、イチジクなどが、挿し木で増やしやすい代表的な植物として知られています。」
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 この他にも、「朝に咲いた青いアサガオが、夕方に赤紫に変わっている」のは、花びらの中のアントシアニンには、「酸性の液に反応して濃い赤紫色になり、アルカリ性が強くなるにつれて、青色から緑色、黄色へと変色する性質」があり、アサガオの花は、朝に花が開いたときには、花びらの中がアルカリ性の状態で、花がしおれるころには、花びらの中が酸性になっているから……など、植物に関して、いろんな不思議な情報を知ることが出来ました。
 身近な植物の謎とその理由をいろいろ知ることができて、楽しく植物のことを学べる本でした。植物のエッセイ集みたいな感じなので、暇つぶしみたいな感じで気軽に読んでいるうちに、植物に詳しくなっていけるような気がします。植物好きのかたは、ぜひ読んでみてください☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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