『新しい歯の教科書 口内環境は、全身の健康につながる』2022/10/24
東京医科歯科大学 最先端口腔科学研究推進プロジェクト (監修)

 全身の健康から歯を見直すための教科書として、最新の研究に基づいた歯の知識を解説してくれる『新しい歯の教科書』です。
 口内環境は、全身の健康に影響するそうです。なぜなら「口はセキュリティ万全の免疫システム」だからです。
「口腔の5つのセキュリティ」
1)唾液(唾液には、シスタチンや免疫グロブリンといった抗菌や抗ウイルス作用のある成分が多数含まれている。)
2)歯肉溝滲出液(歯肉溝からリンパ液に似た成分の液体が絶えず分泌し、歯や歯肉の表面を防御している)
3)口腔粘膜上皮(口腔組織の表面を覆う粘膜細胞が外敵の侵入をブロックしている。)
4)免疫細胞(粘膜ブロックを外敵に突破されたら、すかさず免疫系の細胞やマクロファージが攻撃)
5)ワルダイエルの輪(口蓋や咽頭の付近にはリンパ組織の集合体である扁桃が輪のように配置。ワルダイエルの輪という生体防御の砦を形成。)
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 ……そうか。口が健康でないと、これらの免疫系がうまく働いてくれなくて、身体も健康でなくなってしまうんですね……。
 また「むし歯発生の4ステップ」は次の通りなのだとか。
1)プラーク形成(バイオフィルム)
2)プラーク内の細菌が酸をつくる
3)プラーク内のpHが低下し酸性になる
4)プラーク内の酸でエナメル質が溶ける
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 なるほど、酸が歯を溶かしてしまうんだ……。むし歯を予防するためには、「6歳以上の人は1500ppmの高濃度フッ素配合の歯磨き粉を選んで」ブラッシングするといいそうです。

 また「歯が抜けてしまう原因としては、歯周病が最も多い37.1%を占めています。むし歯は歯周病に次ぐ29.2%であり、破折が17.8%と続きます。」ということで、歯周病を予防することも、とても大事なようです。次のように書いてありました。
「健康な骨は、骨をつくる骨芽細胞と、骨を壊す破骨細胞の働きが均衡しています。しかし、歯周炎になると、免疫系の物質が骨芽細胞を抑制し、破骨細胞の働きを促進。結果、骨を壊す作用が活性化され、歯槽骨が溶けてしまいます。」
「歯周病を放置すると、その間も患部で細菌と免疫系の戦いが続き、細菌、毒素、炎症性サイトカインなどが血液を通じて全身に運ばれます。これらがさまざまな悪さをし、糖尿病や動脈硬化などを引き起こすのです。」
 ……うわー……「むし歯」も「歯周病」も両方とも予防したいです。
 嬉しいことに本書では、次のように、予防のためのブラッシングの仕方も教えてくれます(本書内では、もっと詳しい説明があります)。
「むし歯と歯周病それぞれの予防をするブラッシングの仕方」
・むし歯の予防:歯ブラシの毛先を歯面(表・裏・?合の3面それぞれ)にきちんと(ほぼ直角)に当てる
・歯周病の予防:ブラシの毛先を歯と歯肉の境目に45の角度で当てる(歯肉をブラシでマッサージする感覚)
 この時、ブラッシングは、力を入れずに弱圧で、1~2mm幅の細かい動きで磨き、水すすぎは軽くでOKなのだとか(歯磨き粉は、フッ素配合のものを使ってください)。
 私自身は、すでに数年前からこの「歯周病の予防」ブラッシングも行っていて、その効果を実感しています。「歯」磨きのついでに「歯肉」もマッサージするという感じで、境目に45の角度で当てることはなく、かなりテキトーにやっているのですが、歯肉の状態がどんどん改善してきて驚きでした(始めたときは歯周病気味だったので、少なくとも1~2週間は歯茎から血が出てきましたが、その後は見るからに「いい感じ」になっていき、現在もそれを維持しています。)お勧めです。
 また口を健康にするための「口腔力エクササイズ」もイラスト付きで紹介されていて、これもとても参考になると思います(ガムを噛むのもエクササイズになるようです)。
「歯」や全身の健康について分かりやすく教えてくれる本『新しい歯の教科書 口内環境は、全身の健康につながる』でした。とても参考になるので、みなさんも、ぜひ読んでみてください。
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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