『カラー図解 脳の教科書 はじめての「脳科学」入門 (ブルーバックス)』2022/10/20
三上 章允 (著)
脳の複雑で不思議なしくみを、豊富なカラー図版と共に、わかりやすく徹底的に解説してくれる本で、内容は次の通りです。
第1章 脳の全体像
第2章 脳の細胞
第3章 外の世界を知る
第4章 体の中の世界、体の外の世界にはたらきかける
第5章 記憶・思考・言語など 脳の高次の機能
第6章 脳の発達
第7章 脳の病気
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脳の構造や仕組みをフルカラーの図版で詳しく教えてもらえる、まさしく『カラー図解 脳の教科書 はじめての「脳科学」入門』というタイトルにふさわしい本でした。脳に関する最新情報を読めたし、総合的な復習も出来ました。
例えば「第2章 脳の細胞」では、役割が不明だったグリア細胞についての新しい知見を知ることが出来ました。
「(前略)グリア細胞には複数の役割のあることが明らかになってきました。神経組織の構造の維持のほか、血液脳関門、神経絶縁、神経系に必要な物質の合成、過剰なイオンの取りこみ、神経伝達物質の回収、細胞間隙にある不要物質の処理などの役割を担っています。」
そして個人的に興味津々だったのは、第4章以降。
「第4章 体の中の世界、体の外の世界にはたらきかける」によると、「脳障害の症例を参考にすると、個別の意識が大脳皮質に分散すると考えてもよさそうです。」なのだとか。
そして「第5章 記憶・思考・言語など 脳の高次の機能」では、記憶について、次のようなことを知ることができました。
・「短期記憶を保持しているのは大脳皮質の神経細胞です。短期記憶を保持する大脳皮質の神経細胞は、短期記憶を保持しているあいだ、活動電位を出し続けます。記憶が必要なくなれば活動電位は止まり、記憶は失われます。(中略)単純な短期記憶は側頭葉や頭頂葉の神経細胞によって維持されますが、複雑な作業記憶の保持は前頭葉の神経細胞のはたらきによります。」
・「海馬は長期記憶の固定化にかかわりますが、長期記憶を保持する場所ではありません。」
・「短期記憶も長期記憶も大脳皮質のあちこちに分散しています。」
・「記憶は、シナプスの可塑的変化(回路のつながり方の変化)によってたくわえられると考えられています。そして記憶の内容は、どこのシナプスがどれだけ伝達効率を変え、神経回路の特性がどのように変えられたかによっています。」
……海馬では新しい神経細胞が作られるので、長期記憶の一部はここに保存されるのかと思っていましたが、実は保存自体はしていないんですね……。
また「第6章 脳の発達」では、「レム睡眠中に長期記憶は形成される」ことが書いてありました。
「睡眠不足のときはノンレム睡眠を優先し、レム睡眠を減少させます。(中略)つまり、長期記憶の形成には、まとまった良質の睡眠が必要ということです。」
……なるほど。受験勉強などの時は、長時間勉強して夜更かしするより、眠った方がむしろ学習効率があがるのかもしれません。
そして「第7章 脳の病気」では、「認知症では大脳新皮質の神経細胞が減少する」という恐ろしい話とともに、予防法についても紹介されていました。
「認知症で神経細胞の減少が進む重要な要因の一つは、脳の血液循環の障害です。」
「生活習慣病にならないように日常生活をコントロールすることによって、認知症の発症を遅らせたり、発症後の進行を遅らせることができるという報告があります。(中略)血圧、血糖値、血中脂肪、体重などを日常の生活習慣の中でコントロールすることが必要です。
もう一つ重要なことは、脳を使い続けることです。脳は使うことによって新しいネットワークを構成し、そのネットワークの効率を上げていきます。使わないと効率は落ちていき、はたらきは鈍っていきます。」
……これからも「脳を使い続ける」よう努力したいと思います。
脳について総合的に解説してくれる『カラー図解 脳の教科書 はじめての「脳科学」入門』で、とても勉強になりました。興味のある方は、ぜひ読んでみてください。お勧めです☆
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