『なぜ、その地形は生まれたのか? 自然地理で読み解く日本列島80の不思議』2022/9/9
松本 穂高 (著)

 日本各地の面白い地形や、平凡そうに見えても実は成り立ちが興味深い地形を取り上げて、自然地理の視点から「なぜ、その地形は生まれたのか?」を探っていく本。「山」「川」「海岸」「平地」「人とのかかわり」という切り口で章を分けて、それぞれについての特徴的な日本の地形を、見開き形式で合計80カ所、紹介してくれます。すべての都道府県につき、最低1つの地形は取り上げているので、身近な場所が必ず掲載されていると思います。
 1つの地形につき、見開きページという構成で、カラー写真や地図・地形図とともに解説を読むことが出来るので、とても分かりやすく楽しく読めます。
 そのいくつかを紹介すると、次のような感じです。(以下の紹介は、記事のごくごく一部分だけで、実際にはもっと詳しい解説があります。)
●中禅寺湖はなぜ滝に囲まれる?(栃木県・中禅寺湖)
「火山堰止湖:火山噴火に伴う噴出物が川を堰き止めてつくった湖のこと。」
「火山堰止湖である中禅寺湖は、男体山から南東側に流出した溶岩流が大谷川を堰き止めてつくったものです。その流出口に華厳の滝があります。」
 ……という感じで、「地形の疑問」に、まず「その地形の概要や出来かた」の概要があり、さらに「詳しい解説」があるという構成になっています。
 そして他にも……
●屋島の上面はなぜ平坦?(香川県・屋島)
「溶岩台地:溶岩流によってつくられたほぼ平坦な台地のこと。玄武岩質や安山岩質など、比較的粘性の小さい溶岩が面的に広がり、冷え固まってつくられる。」
●大台ケ原はなぜ平らな山?(奈良県・三重県・大台ケ原山)
「隆起準平原:浸食が極度に進んでできた平地である準平原が隆起して、山の上など比較的高いところに平坦な地形が見られるもの。」
●屋久島はなぜ洋上アルプスとよばれる?(鹿児島県・屋久島)
「トア:地面から突き出した岩のこと。岩盤に細かい節理が入っていないなど、風化に対する抵抗力の強い部分があると、そこだけ侵食から取り残されて形成される。」
「花崗岩が分布することが、屋久島の山が高くなった要因の一つです。花崗岩はふつう風化しやすく侵食が早く進む岩石ですが、岩石中に割れ目の少ない部分があると、そこだけ侵食から取り残されます。そこは、岩が突出した部分となります。こうした部分をトアとよびます。」
●濃尾地方ではなぜ川に沿って家が連なる?(愛知県・三重県・濃尾平野)
「自然堤防:川の流路に沿って見られる微高地のこと。高さはほとんどが5m以下なので等高線には現れにくい。洪水時に流路からあふれた水が土を堆積させることでできる。」
「自然堤防の上はその後の洪水時に浸水しにくく、また土地が乾燥しているため、居住に適しています。」
●松島はなぜたくさんの島がある?(宮城県・松島)
「多島海:限られた範囲に多くの島が存在する海域のこと。陸地の相対的な沈降によって山地が沈水してできる。リアス海岸よりさらに沈水が進んで、尾根の一部が海面上に頭を出すのみとなったもの。」
●御岳の鏡岩はなぜ磨かれている?(埼玉県・御岳の鏡岩)
「断層鏡肌:断層による地層のくい違いが地表に現れた断層露頭のうち、鏡のように光沢を持つ面のこと。地盤の動きで両側の岩石がこすれ合ってできる。」
●奥出雲の水田地帯になぜ小丘がある?(島根県・奥出雲)
「鉄穴残丘:砂鉄を採る鉄穴流しの跡地に人為的に残された小丘のこと。選鉱場の造成の際に、墓地や鎮守の森を残したためにできる。」
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 ……などなど。
 屋島や大台ケ原など、山の上が平になっている不思議な地形には、そういう理由があったんだーと興味津々でした。
 また御岳の鏡岩の出来かたには、そのダイナミックさに驚いてしまいました! 
 それにしても……まさに「日本の自然景観は世界一」ですね! こんな狭い国土に、こんな不思議で素敵な場所があちこちに点在しているなんて!
 全国各地の面白い地形の成り立ちを知ることが出来る本でした。住んでいるところに近い場所があったら、ぜひ確かめに行ってみてください。楽しくて勉強にもなる素敵な旅行になると思います。夏休みの絵日記にも、いいかも。NHKの人気番組「ブラタモリ」が好きな方には、特にお勧めです☆
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 なお社会や科学、IT関連の本は変化のスピードが速いので、購入する場合は、対象の本が最新版であることを確認してください。
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