『「紙の温度」が出会った 世界の紙と日本の和紙』2022/11/9
紙の温度株式会社 (著)
「手漉き和紙と世界の紙」及び紙製品を約20,000アイテムも品揃える紙の専門店「紙の温度」が、日本の和紙産地や世界の紙漉き現場に足を運び、その中で出会ったすばらしい紙の数々をフルカラー写真で紹介してくれる本です。キラキラ輝く華やかなドイツのホイルペーパーのサンプルも1枚、綴じ込まれています。
表紙をめくると、ごく薄い半透明の紙があり、それをめくるとキラキラ輝く華やかなドイツのホイルペーパーが! 色鮮やかなこの紙には、とても細かい線が刻み込まれていて、この線がさまざまな角度からの光を反射して模様となり、浮かび上がっているそうです……目を凝らすと、まさにその通り☆ 豪華な布地のようにも見えますが……紙なんですね……高価そうです。
この紙は「紙の温度」が取り扱っている紙のようですが、「紙の温度」とは、「日本各地の和紙と世界の紙を扱う紙の専門店。名古屋の有名な神社、熱田神宮のすぐそばにあるお店」で、「紙の温度」という名前には、「紙のぬくもりを伝えたい」という気持ちが込められているそうです。
そしてこの後は、世界や日本の紙が、フルカラー写真付きでどんどん紹介されていきます(一部は作っている現場の写真や作り方の写真もあります)。紙や和紙には詳しいつもりでしたが……世界には、こんなにいろんな種類の紙があったんだ! と圧倒される思いでした。
例えば、本書で紹介されている紙の材料をひろってみると……
コウゾ(カジノキなども)、ミツマタ、雁皮、トロロアオイ、こんにゃく糊、ソーダ灰、消石灰、柿渋、ロクタ、ヤシの実の繊維、マンゴーの皮、花や草、葉(押し花が多いが生花のこともある)、樹皮、コーヒー豆の外皮、金の繭、コットン(古布)、紙幣のかけら、樹脂、とうもろこしの葉、バナナの皮、バナナの木、ココナツ、クラア、麻、ヤマブドウ、筍の皮、紅花、糸、杉皮、マコモ、竹、藤、チガヤ、オニバシリ、ミョウガの茎、米粉、土、ヤマモモ、クチナシ、藍、スオウ、雲母、胡粉、石粉、玉ねぎの皮、イグサ、芭蕉、月桃、リサイクル紙……などなど。
そして紙に施される加工の数々は……
落水(乾く前の紙に水をかけて模様をつける)、漉き込み、エンボス加工(擬革加工もこの一種)、葉や花の押し模様、刺繍、箔、起毛加工、スクリーン印刷、加熱発砲、ラメ加工、草木染、絞り、揉み(ちりめん揉みなども)、手染めマーブル、寒ぐれ・雪晒し(紫外線で白くなる)、絞り染め、透かし(レース模様なども)、型染め、有松絞り、うつし染(生の葉や花を小づちで和紙にたたきつけて色形を写し取った後、花や葉は取り去る)、二枚合わせ、泥染め、楮を編む、こより糸を編む……などなど。
水たまりで漉くというワイルドな手法や、樹皮のすぐ下の部分をそのまま紙のように使う樹皮紙なんていう原始的なものがある一方で、7ミクロンの薄さの越前和紙(雁皮紙 無塩素7ミクロン)なんていうもの凄い紙も!
もちろん華やかな模様・エンボスの紙、革にしか見えないような紙、衣服につかうための紙なども多数あり、世界にはこんな素敵な紙が存在しているんだ……と驚きの紙がどんどん紹介されていて、とても参考になりました。
しかも、さまざまな紙のカタログとして役に立つだけでなく、紙に関する情報もあちこちにちりばめられています。その一例を紹介すると……
「日本に製紙の技術が伝わったのは610年、朝鮮半島からだったと『日本書紀』に記録が残っています。日本の紙を和紙というように、韓国の紙は韓紙と言います。」
「パピルスはカヤツリグサ科の一種で、スライスして粘り気が出るまで叩いてシートにします。繊維を一度分散させ、絡み合わせてつくるものを「紙」と定義するので、パピルスは厳密に言えば紙ではありません。」
「たとえば料紙(文書など文字を書くときに使う紙)にしても、中国は漢字だけだから筆の運びが遅いため、紙に強度がなくても大丈夫。対する日本は漢字と仮名文字があるから運筆が速く、そのため紙が強くないといけない。紙を漉くときに繊維の分散を助けるトロロアオイなどのネリを用いるのは和紙特有で、ネリによって、長い繊維のまま美しくて強い紙が漉けるのだとか。」
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本当にいろんな種類の素晴らしい・珍しい「世界の紙と日本の和紙」をフルカラー写真で紹介してくれる本で、とても読み応えがありました(ただし本書で紹介されている紙は手作りのものも多く、すでに手に入らないものもあるようで、「紙の温度」のお店で必ず買えるものとは限らないようですが……)。
紙に興味のある方は、ぜひ読んで(眺めて)みてください。お勧めです☆
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