『地球温暖化はなぜ起こるのか 気候モデルで探る 過去・現在・未来の地球 (ブルーバックス)』2022/6/16
真鍋 淑郎 (著), アンソニー・J・ブロッコリー (著), 阿部 彩子 (翻訳, 監修), & 2 その他
地球温暖化、そして「気候変動」は、どうすれば解明することができるのか……それを解き明かすのに貢献する「気候システム」の研究で、2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士。この本はプリンストン大学での真鍋博士の講義(大学院課程)をもとに構成されていて、内容は次の通りです。
第1章 はじめに
第2章 初期の研究
第3章 1次元モデル
第4章 大循環モデル
第5章 初期の数値実験
第6章 気候感度
第7章 氷期・間氷期の比較
第8章 気候変化における海洋の役割
第9章 寒冷な気候と海洋深層水の形成
第10章 地球の水循環はどう変わるか?
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真鍋先生の「気候システム」への遠大な謎への挑戦が、詳しく語られています。初期の研究で用いた「1次元の鉛直モデル(大気層を18層に区分、その放射・対流を計算する)」から始まり、成層圏までを、さらに雲による太陽放射の反射率の変化、陸上と海上の違い、極域での氷の面積の変化、緯度・経度による変動や季節要因による変化などを組み込んだモデルへと進み、そして2万年前の古気候を再現するというプロジェクトから始まった気候システム解明への挑戦など……それらの研究の積み重ねによって精緻なシミュレーションを可能としました。
「あとがき」には、「大気循環モデル」が次のように解説されていました。
「(前略)大気循環モデルを構成するのは風、温度、比湿、地表面気圧などの状態変数の予測方程式だ。各方程式は一般的に2つの要素からなる。1つ目は運動方程式、熱力学方程式、放射エネルギー伝達に関するキルヒホッフの法則、黒体放射のスペクトルに関するプランク関数、飽和水蒸気圧に関するクラウジウス・クラペイロンの式といった物理法則に従う要素だ。2つ目はサブグリッドスケールの多様なプロセスをパラメータ化した要素だ。そのプロセスとは、湿潤対流、乾燥対流、大気中での雲の形成と消失、陸面での積雪や土壌水分の収支、海面での海氷の形成と消失など、多岐にわたる。」
……そして「数値モデル」による気候システムの研究には、観測されたデータはもちろんのこと、過去の気温などの推定値には「プランクトンの生物相」、「花粉の分類学的構成」、「氷床コアに含まれた気泡の空気の分析」、「樹木年輪やアイスコア、珊瑚年輪、堆積物」など、さまざまなデータが用いられていることを知りました。
……正直に言って、この本はかなり専門的な記述(と数式)が多くて、あまりよく理解できてはいませんが、このようなシミュレーションや現実の気候(と変動)データの分析が、地球気象の仕組みを明らかにしていくのに役に立っていくのだと思います。
またこの研究の成果は、非常に高い精度で「地球温暖化」の予測を可能にしていることも知られています。(CO2の濃度を変化させていったときのシミュレーションで、どのような結果が表れるのかについても、カラー図版や解説があります)。
「序文」には、気候モデルで予測されている今後の気温変化(地球温暖化)について、次のように書いてありました。
「(前略)エネルギーを作るための活動を大幅に変えなければ、こうした気温の変化が止まる見込みはない。地球の平均気温は21世紀のうちにさらに2~3℃上昇し、温暖化は海上よりも陸上で、熱帯よりも北極域で、より大きく、著しく進むと予測されている。
大陸上で利用な水も変化するだろう。水に恵まれている地域では、おそらく水の供給がさらに多くなり、河川の流量が増して洪水が多発するだろう。一方で、亜熱帯域など現状でも比較的乾燥して水の乏しい地域では水不足によって生じる問題がますます深刻化し、干ばつが頻発するだろう。観測によれば、すでに洪水も干ばつも頻度が高まっている。温室効果ガスの排出を大幅に減らせなければ、地球温暖化が進み、人間社会や地球の生態系は今世紀以降も長期にわたって多大な影響を受けるだろう。」
……うーん、何とかしないといけませんね……私たちの地球が、今後どのような気候になっていくのか、何をすれば快適さを維持できるのか、それを知る上で重要な研究だと感じました。
ちょっと難しいですが、とても参考になるので、地球環境や気象に興味のある方は、ぜひ一度読んでみてください。
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